コーナリングにおけるミニ四駆の力学的解析と新ローラー配置の提案
Abstract
ミニ四駆において重要なセッティング項目の1つにローラーセッティングがある。本稿では現在広く用いられているセッティングの問題点を指摘し、それを踏まえた新たなセッティングを検討することでマシンの高速化を企図する。
1.理論
速度vで定常旋回している質量mの車両のローラーにかかる力はFig1においてコース外壁は半径Rの円弧とし、pf、prをそれぞれ前後ローラーとコース外壁の接点を通る平面、Lf、Lrを車両重心から前後ローラーまでの全長に平行な距離、Lf+Lr=Lとすると、旋回半径とヨーレイトが一定であることからローラーとコース外壁の接点からコース外壁の曲率半径中心に向かって前後それぞれ
Ff=((Lfmv^2)/RL)cos(Φf)
Fr=((Lrmv^2)/RL)cos(Φr)
となる。
ただし、0≦Φf,Φr<90[deg]とするが、これは直感的にも違和感のない範囲であろう。
ここで、FfLf/cos(Φf)+FrLr/cos(Φr)はマシンの重心周りのモーメントである。また、Ffsin(Φf)およびFrsin(Φr)は車両の前後方向にかかる力であり、それぞれ車両を減速/加速させる。
なお、Fig1よりLf=RsinΦf、Lr=RsinΦrであることを利用し、時計回りのモーメントを正とすると、Ffローラーベースに垂直な成分は
(Rmv^2)tan(Φf)
であるから図より、
Ffsin(Φf)=(Rmv^2)(tanΦf)^2=(Rmv^2)(1-(cosΦf)^-2)
となり、Φf増大でFfのローラーベースに平行な成分が増加することが分かる。Frsin(Φr)についても同様である。
2.課題
従来のローラーセッティングでは以上で議論した通りΦf過大によりコーナリング時に車両を減速させる力が大きく働き、車両を減速させることでコーナー通過タイムを増大させていたと考えられる。
3.提案手法
以上の課題に対し、提案手法のレイアウトをFig2に示す。
提案手法において、左右前ローラーを結んだ線を車両重心点に近づけることでΦfを小さくし、ローラーによる減速量を減少させるとともにリアローラーをより後方に配置することでΦrを大きく取り、遠心力を利用した加速を狙った。
なお、フロントバンパーをカットした結果デジタルカーブにおいて車輪およびボディーがコース外壁に接触することが判明したため前輪の前方かつ通常のコーナーでコース外壁に触れない位置にローラーを追加した。
4.結びに
以上により、旋回時にミニ四駆がローラーから受ける力の同定とコーナリング速度を最大化するローラーセッティング理論の提案を行った。今回はリソースの都合で実地での比較検討ができなかったことを今後の課題とし、今後のミニ四駆シーンの高速化および理論的な成熟を願って筆を置くことにする。