新たなる旅路へ―【勇者】について
お久しぶりです、さいばーです。
9月に入り、いよいよ秋の訪れをほのかに感じられる時期となりました。この時期も何かと身体に障りやすいものですから、昨今の情勢も鑑みていっそう気をつけていきたいものです。
前回の【機巧】の記事からかなり間が空いてしまいましたね。当時の記事にも書いているのですが、大体8月下旬までひたすら就職試験に打ち込んでおりました。そんな勉強も一段落したので、ここからまた徐々にペースを上げていきたいと思います、よろしくお願いいたします。
今回はデッキビルドパック『グランド・クリエイターズ』で登場した新規カテゴリ【勇者トークン】(この記事では便宜上、【勇者】と呼ぶことにします)についての考察、及びデッキ構築例の紹介記事になります。
(あれ?【デスピア】は?【アメイズメント】は?と感じた方。忘れましょう。)
なお、ここでは純構築を前提として考察していきます。出張ギミックとしての考察は数多くの方々が紹介してくださっているので、大丈夫でしょう。それでは、さっそく参りたいと思います。
1.【勇者】の強みと弱み
毎度のことですが、まずは【勇者】の強みと弱みから考えていきましょう。
強み
1.一枚初動である
2.誘発が痛手になりにくい
3.EXに依存しない
4.空きスロットが多い
etc...
…この【勇者】というテーマ、あまりにも強いと感じる部分が多いんですよね。出張セットとして【プランキッズ】などに採用され、結果報告が上がっていることなど、皆さんも周知の事実だと思います。ですが改めて、その強さについて考察していきましょう。
1.一枚初動である
現代遊戯王の象徴、一枚初動。たった一枚のカードから、盤面を構築することができる一枚初動というのは、その存在だけで高い評価を得られるほどです。そして【勇者】もまた、その一枚初動となるカードが存在します。
それが、《アラメシアの儀》というカードです。このカードのテキストはご存知の方も多いでしょうが、改めて紹介しておきます。
アラメシアの儀
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分は特殊召喚されたモンスター以外のフィールドのモンスターの効果を発動できない。
①:自分フィールドに「勇者トークン」が存在しない場合に発動できる。自分フィールドに「勇者トークン」(天使族・地・星4・攻/守2000)1体を特殊召喚する。自分フィールドに「運命の旅路」が存在しない場合、さらにデッキから「運命の旅路」1枚を選んで自分の魔法&罠ゾーンに表側表示で置くことができる。
このカード1枚で《勇者トークン》と《運命の旅路》という2枚のカードを準備することができます。まあ、現代遊戯王において、1枚のカードが2枚以上になることは珍しくありませんが…問題はここから。この《運命の旅路》というカードについても見ていきましょう。
運命の旅路
永続魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分メインフェイズに発動できる。デッキから「勇者トークン」のトークン名が記されたモンスター1体を手札に加え、その後手札を1枚選んで墓地へ送る。
②:モンスターが召喚・特殊召喚された場合に発動できる。デッキから「勇者トークン」のトークン名が記された装備魔法カード1枚を選び、手札に加えるか、自分フィールドの「勇者トークン」1体に装備する。
③:1ターンに1度だけ、装備カードを装備している自分のモンスターは戦闘では破壊されない。
いやどうなってんのこの効果。①がモンスターサーチ、②が装備魔法サーチと、これも1枚で2枚のカードにアクセスできる上に、なぜか③で耐性付与までついてきます。いくら【勇者】に限定しているからといって、流石に盛り込み過ぎではないかと思ってしまいますね。しかも①は起動効果、②は誘発効果ときたものですからもうすごいです。さらにさらに、厄介なのがこの①の効果で持ってくることができるモンスターに《流離のグリフォンライダー》というカードが存在することです。
流離のグリフォンライダー
効果モンスター
星7/風属性/鳥獣族/攻2000/守2800
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに、モンスターが存在しない場合、または「勇者トークン」が存在する場合、自分・相手のメインフェイズに発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
②:自分フィールドに「勇者トークン」が存在し、魔法・罠・モンスターの効果が発動したときに発動できる。このカードを持ち主のデッキに戻し、その発動を無効にし破壊する。
安心と信頼のなんでも無効破壊ですね。特殊召喚条件も緩く、【勇者】であれば息をするようにこいつを出すことができます。そして何かを無効にして、デッキに帰っていく、と…。この「デッキに帰る」という部分もまた厄介で、《運命の旅路》の①の効果が起動効果であるがゆえに、《勇者トークン》が存在する限り、毎ターンこいつを特殊召喚するというサイクルが容易に完成してしまいます、これは恐ろしい。
さて、もうご存知の方がほとんどかと思いますが、先に紹介した《アラメシアの儀》1枚を発動するだけで、以下のような盤面が構築できてしまいます。たった1枚のカードから、継続的なアドバンテージを確保する《運命の旅路》と、なんでも無効の《流離のグリフォンライダー》を準備でき、なおかつ返しのターンの《騎竜ドラコバック》を準備できる…これは誰がどう見ても強いと言わざるを得ないでしょう。
「いやいや、流石にそう簡単に《アラメシアの儀》にアクセスできないでしょ」と私は当初思っていたのですが、そこにさらなる問題児が登場します。それがこちら。
聖殿の水使い
効果モンスター
星3/水属性/魔法使い族/攻1500/守1200
このカード名の①②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに「勇者トークン」が存在する場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
②:手札・墓地のこのカードを除外して発動できる。自分のデッキ・墓地から「アラメシアの儀」1枚を選んで手札に加える。
③:自分フィールドに「勇者トークン」が存在する場合に発動できる。デッキから「勇者トークン」のトークン名が記されたフィールド魔法カード1枚を選んで自分フィールドゾーンに表側表示で置く。
はい、強いですね。実質4枚目以降の《アラメシアの儀》です。この手のカードは、サーチ先と一緒に引いてしまった場合に、半分腐ってしまうことが多いのですが、こいつは①と③の効果のおかげで《アラメシアの儀》と一緒に引いても活躍できます。何気に②の効果は墓地からも発動できるので《おろかな埋葬》等で墓地送りにしてもいいのがまた…。
2.誘発が痛手になりにくい
今の遊戯王において、ほぼ必ずといっていいほど採用されている、《灰流うらら》や《増殖するG》といった『手札誘発』といわれるカード。後攻から相手の展開を阻害できるという点で非常に優秀なこれらの誘発ですが…実は【勇者】においては、打たれてもあまり痛手にはなりません。今回は採用率の高い手札誘発として、《灰流うらら》《増殖するG》《無限泡影》《PSYフレームギア・γ》を例に挙げて説明していきます。
〇《灰流うらら》
打たれるとするならば《聖殿の水使い》の①の効果、もしくは《運命の旅路》の①か②の効果でしょう。大きいのは、《アラメシアの儀》に対して打たれることがないということです。《アラメシアの儀》にアクセスする《聖殿の水使い》に対して打たれるのは少し苦しいですが、それは他のデッキにおいても同じこと。むしろ相手の立場に立つと、すでに《アラメシアの儀》を引き込んでいる可能性や、《PSYフレームギア・γ》によるカウンターの可能性など、裏目を考慮しなければなりません。《運命の旅路》に打たれる場合でも、すでにもう《アラメシアの儀》が通っているので、相手は枚数上のアドバンテージが取れません。
〇《増殖するG》
これは《アラメシアの儀》に打たれます…が、せいぜい相手が引けるのは《勇者トークン》と《流離のグリフォンライダー》の計2枚。さらに言えば、《流離のグリフォンライダー》の特殊召喚は相手のメインフェイズでも可能なため、極論《勇者トークン》の1枚だけに抑えることができます。相手が《PSYフレームギア・γ》を恐れて、《流離のグリフォンライダー》に対して打ってきた場合も1枚です。このように、相手は思うように枚数を稼げず、こちらは1妨害を簡単に用意できます。同じ理由で《原子生命態ニビル》も効きませんね。
〇《無限泡影》
打ちどころはこちらの《流離のグリフォンライダー》くらいです。また、これに関しても相手がカードをプレイしたタイミングで《流離のグリフォンライダー》を特殊召喚することで実質無効化することができます。
〇《PSYフレームギア・γ》
これも《灰流うらら》同様、《アラメシアの儀》自体を止めることができません。止められる範囲は非常に広いですが、《アラメシアの儀》が通る以上、致命傷にはなりにくいです。また、現在のリミットレギュレーションでは準制限なので、それも追い風ですね。
このように、採用率の高い手札誘発に関して、もらっても痛手にならないことがほとんどです。また、後述する空きスロットの多さも相まって、誘発の打ちどころをこちらが豊富に用意することで、さらにダメージを軽減することができます。
3.EXに依存しない
【勇者】はEXデッキのカードが存在せず、それに関連する効果も持ちません。つまり、全くEXデッキに依存しないデッキであると言えます。この恩恵は非常に大きく、《影依融合》等のEXモンスターを参照するカードを弱体化できます。しかも自分は《強欲で金満な壺》や《金満で謙虚な壺》といった強力なドローソースを無理なく採用することができます。今の遊戯王においてこれらのカードを採用できるか否かは、デッキパワーに大きく関わってくる部分でもあるので、その点でも非常に【勇者】は優れていると言えます。
4.空きスロットが多い
デッキの空きスロット、すなわち「自由枠」と言われるものですが、この枠が多ければ多いほど、デッキの柔軟性が高まり、様々なデッキに対応できるようになります。そして、以下に勇者を純構築する場合に個人的に必要と思うカードを示しました。
たったの13枚です。本当に最低限の枚数だけを示しているので、実際はもう少し多いほうがよいと思いますが、それでも17~18枚程度。つまり、デッキの半分以上が自由枠ということになります。これだけの自由枠があれば、手札誘発をガンガンに詰め込むこともできますし、他のギミックを採用して制圧力を高めることもできます。この自由度の高さも、【勇者】の強みですね。
弱み
1.先攻盤面が比較的弱い
2.《アラメシアの儀》への依存度が高い
弱みはこれくらいです。1つ目については、テーマ内での妨害が《流離のグリフォンライダー》と《サンダー・ディスチャージ》の2種類しかなく、先攻で確実に構えられるのは《流離のグリフォンライダー》のみです。もちろん、一枚初動から用意できるので全然弱くはないのですが、追加の妨害を用意するのがテーマ内では難しいというのが【勇者】の明確な弱みだと思います。
次に2つ目。とにもかくにも《アラメシアの儀》を通さないと話が始まりません。なので、ここを徹底して潰されるとデッキとして全く機能しなくなります。幸い、これを止められる手札誘発は多くないので、先攻ではほとんど通すことができますが、後攻で盤面を返すには、何か別の手段を用意しておく必要があります。
以上、【勇者】の強みと弱みを考察してみました。いやもう書いていても強いところが多すぎて驚いてます…。
2.その他の【勇者】カード紹介
先に紹介したカードは、【勇者】の中でも特に有名なカードですのでご存知の方も多いと思いますが、【勇者】を純構築する場合には、他のテーマカードも採用されてきます。ここでは、後に紹介するデッキのコンセプトをよりわかりやすく理解していただくために、先ほど紹介できなかった【勇者】カードを紹介します。
〇《遺跡の魔鉱戦士》
効果モンスター
星4/炎属性/戦士族/攻2300/守1000
このカード名の①③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに「勇者トークン」が存在する場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
②:自分フィールドに「勇者トークン」が存在しない場合、このカードは攻撃できない。
③:「勇者トークン」のトークン名が記された自分のモンスターが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時に発動できる。デッキから「勇者トークン」のトークン名が記された罠カード1枚を選んで自分の魔法&罠ゾーンにセットする。
自己特殊召喚能力、高い攻撃力、罠へのアクセスという、一見優秀な効果を持つモンスターに思えます。しかし効果の性質上、先攻1ターン目ではほとんど機能できないカードであることに注意が必要です。
〇装備魔法3種(《光の聖剣ダンネル》《星空蝶》《騎竜ドラコバック》)
共通テキスト
自分フィールドのモンスターにのみ装備可能。
このカード名の③の効果は1ターンに一度しか使用できない。
①:「(同名カード)」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存在できない。
②:(固有効果)
③:このカードが墓地へ送られた場合、自分フィールドの「勇者トークン」1体を対象として発動できる。その自分のモンスターにこのカードを装備する。
※②の固有効果については以下の通り
・《光の聖剣ダンネル》→装備モンスターの攻撃力を、自分フィールドの「勇者トークン」のトークン名が記されたモンスターの種類×500アップ
・《星空蝶》→相手フィールドのモンスターの攻撃力を、自分フィールドの「勇者トークン」のトークン名が記されたモンスターの種類×500ダウン
・《騎竜ドラコバック》→1ターンに1度、相手フィールドのカード1枚を対象として発動。そのカードを持ち主の手札に戻す
《騎竜ドラコバック》はなかなかに優秀な除去効果を持っていますが…他2種はバフ/デバフ値は大きいものの、正直11期のカードとは思えないほど原始的な装備効果です。しかし、これらの装備魔法の特徴として、『墓地へ送られれば』再装備できるという点があります。
〇フィールド魔法2種(《迷い花の森》《暗黒神殿ザララーム》)
共通テキスト
③:このカードが②の効果を発動したターンの自分メインフェイズに1度、発動できる。自分のデッキ・墓地から「(同名カード)」以外の「勇者トークン」のトークン名が記されたフィールド魔法カード1枚を選んで手札に加える。
※①②の効果については以下の通り
・《迷い花の森》
①:《星空蝶》を装備したモンスターは相手が発動した効果を受けない。
②:自分の「勇者トークン」が相手モンスターを戦闘破壊した場合、1ドロー
・《暗黒神殿ザララーム》
①:《光の聖剣ダンネル》を装備したモンスターが存在する限り、相手はバトルフェイズに効果を発動できない。
②:自分の「勇者トークン」が相手モンスターを戦闘破壊した時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
どちらも効果に一癖ありますが、適切に運用できればまあまあ強いです。互いに墓地からサルベージしあえるのも面白いですね。
〇《サンダー・ディスチャージ》
通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
①:自分フィールドに「勇者トークン」が存在する場合、「勇者トークン」のトークン名が記された装備カードを装備した自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ相手フィールドのモンスターを全て破壊する。その後、自分の手札・墓地から「勇者トークン」のトークン名が記された装備魔法カード1枚を選んで自分フィールドの装備可能なモンスターに装備できる。
発動条件が難しいように見えますが、《アラメシアの儀》1枚で満たせます。1枚で複数枚の除去が狙えるカードであり、《勇者トークン》の攻撃力が素で2000あることを考えると、非常に強力な除去カードです。
〇《リザレクション・ブレス》
通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
①:自分フィールドに「勇者トークン」が存在する場合に発動できる。自分の手札・墓地からモンスターを2体まで選んで特殊召喚する(同名カードは1枚まで)。その後、自分の手札・墓地から「勇者トークン」のトークン名が記された装備魔法カード1枚を選んで自分フィールドの装備可能なモンスターに装備できる。この効果で特殊召喚したモンスターは、フィールドから離れた場合に除外される。
こちらは1枚で好きなモンスター2体を特殊召喚できるカードです。効果はなかなか強力ですが、罠カード故の遅さが気になるところです。また、【勇者】では墓地にモンスターがたまりにくいため、意外と発動機会がないカードでもあります。
3.デッキ紹介
さて、一通りのカード/ギミック紹介が終わったところで、デッキ構築例を紹介させていただきたいと思います。今回の構築の指針は、一言で言うと『グッドスタッフ』です。『グッドスタッフ』とはコンボやシナジーを前提とせず、カード1枚1枚の強さを押し付けて戦っていくデッキタイプになります。今回の構築はそれに近い構築で、【勇者】の強みを押し付けながら汎用性の高いカードでサポートしていくというコンセプトになっております。では、参りましょう。
メインデッキ(40枚)
・1《流離のグリフォンライダー》
優秀な妨害札。その強さは先に述べた通り。基本的に1枚採用すればサイクルが完成する。除去されることを考えると2枚あってもよいかと思うが、それよりもスロットの確保が重要と感じたため1枚。
・1《遺跡の魔鉱戦士》
先攻だと機能しないが、後攻で強さを発揮するカード。打点が【勇者】の中で最も高く、戦闘破壊能力・ライフカット能力が比較的高い。③の効果で罠にアクセスできるのも強力で、相手によっては《流離のグリフォンライダー》で1妨害を構えるよりも、こいつで《サンダー・ディスチャージ》を用意した方が確実に勝ちにつながる場面もある。《運命の旅路》で持ってくる第2の選択肢として1枚採用。
・3《聖殿の水使い》
このデッキの一枚初動。全ての効果が【勇者】において優秀過ぎて、かつ2枚引きや《アラメシアの儀》と一緒に引いていても腐らないため、3積み以外の選択肢がない。
・2《天威竜―ヴィシュダ》
後攻での捲り札として採用。この1枚で確実に1妨害を踏みにいけるのが強く、また通れば《天威の拳僧》というバニラリンクモンスターを用意できるのも《騎竜ドラコバック》との噛み合いがある。《ダイナレスラー・パンクラトプス》や《獣王アルファ》ではなくこいつを採用した理由として、「先攻で引いても《運命の旅路》の効果処理で切って実質の損失がない」「盤面が整っていても手札から効果を起動できるため腐りにくい」という点を評価した。特に先攻で墓地にこのカードの存在を見せておくことで、相手に無理な展開を強要させることができ、リソースを吐かせた上で、こちらの妨害を決め込みやすくなる点が強い。
・3《灰流うらら》
言わずと知れた強手札誘発。基本的にどんなデッキに対しても打てるため、文句なしの3枚採用。
・3《増殖するG》
こちらも有名な手札誘発。このカードの効果で《増殖するG》を引いてしまう弱さがあり、私はあまり3積みすることはないが、【勇者】においてはスロットが非常に多いことと、先攻盤面の弱さ、後攻での相手展開の抑止を考慮してフル投入。
・2《PSYフレームギア・γ》
モンスター効果の発動に対して投げることができる手札誘発。止められる範囲が非常に広く、このデッキでは《聖殿の水使い》の①に対する《灰流うらら》や《アラメシアの儀》に対する《増殖するG》等に打ちたい。単純に後攻の場合でも強いのが高評価。《PSYフレーム・ドライバー》は最悪《運命の旅路》の効果処理で捨ててしまえばよい。
・1《エフェクト・ヴェーラー》
用途は2つあり、一つは単純に相手モンスターの効果無効としての手札誘発。もう一つは、《PSYフレームギア・γ》や余った召喚権を利用して《灰流うらら》等を召喚し、そのまま《水晶機巧―ハリファイバー》→《神聖魔皇后セレーネ》→《アクセスコード・トーカー》とつなげるためのパーツ。ライフカットが少し苦手なデッキであるので、使えればいいな、感覚でこのギミックを実現するために採用。
・1《PSYフレーム・ドライバー》
《PSYフレームギア・γ》の効果処理として必要なため採用せざるを得ない。
・3《アラメシアの儀》
【勇者】において3積み以外ありえないカード。このカードがないと始まらない。一度盤面が整ってしまうと、2枚目以降は腐ってしまうが、何よりも引く可能性を高めることが重要なのでフル投入。
・3《強欲で金満な壺》
自分のEXデッキのカードをランダムに6枚除外してしまうが、2ドローという絶大なアドバンテージを得ることができる強カード。ここに対して相手の《灰流うらら》を誘いやすく、《聖殿の水使い》に《灰流うらら》を打たれる可能性を散らすことができるのも高評価。強みで述べた通り、【勇者】は基本的にEXデッキに依存せず戦えるため、無理なく採用できる。後攻1ターン目で《天威の拳僧》が全飛びしてしまうことが若干苦しいくらいで、基本的に何も心配せず打っていい。
・2《金満で謙虚な壺》
こちらは《強欲で金満な壺》とは違い、除外するEXデッキのカードはこちらが選べる。その割に効果は強く、枚数のアドバンテージこそ取れないが、狙ったカードにアクセスできる能力はこちらの方が高い。ただ、個人的には《強欲で金満な壺》で枚数上のアドバンテージを獲得する方が強いと感じる点、《金満で謙虚な壺》に対して《灰流うらら》を打たれても《強欲で金満な壺》は発動できないが、《強欲で金満な壺》に対して《灰流うらら》を打たれた場合は《金満で謙虚な壺》を発動できる点などから、《強欲で金満な壺》をより引き込みたいということでこちらを2枚にしている。
・2《運命の旅路》
【勇者】をそのてんこ盛り効果でサポートしてくれるアドバンテージマシーン。特に②の効果は相手のモンスターにも反応するので、簡単に手札に【勇者】装備魔法を準備できる。基本的に1枚で十分で、複数枚採用すると素引きしたときの弱さが気になるが、【勇者】においてはこのカードを除去されると一気にパフォーマンスが落ちるため、リカバリーとして2枚採用。このカードの①の効果で《聖殿の水使い》を持ってくれば、実質このカードも初動になるのだが、その場合《流離のグリフォンライダー》を持ってくることができないため、初動として弱いと感じフル投入は避けた。
・1【勇者】装備魔法3種
このカード群の真価は③の効果にあり、どこからでも墓地へ送られればフィールドの《勇者トークン》に装備することができる。したがって、《運命の旅路》の①の効果処理で墓地へ送ったり、後述する《バージェストマ・ディノミスクス》の効果処理で墓地へ送れば、それらのカードによる損失を実質的に踏み倒すことができる。効果は《騎竜ドラコバック》が優秀であるが、3種計3枚採用している理由は、場に1種しか存在できないことと、後述する【勇者】フィールド魔法との兼ね合いから。
・1【勇者】フィールド魔法2種
特に必須というわけではないが、《聖殿の水使い》の効果を最大限に活かすために採用。決して効果が弱いわけではなく、《迷い花の森》は《星空蝶》とコンボでほぼ完全耐性付与とドロー効果、《暗黒神殿ザララーム》は《光の聖剣ダンネル》とコンボで相手の行動制限とバーン効果を持ち、意外と役に立ってくれたりする。また、互いに互いをサルベージしあえるので、枚数は1枚で十分。
・1《おろかな埋葬》
基本的には《聖殿の水使い》を墓地に送り、7枚目の《アラメシアの儀》として利用する。当初は《聖殿の水使い》のためだけにこのカードを採用するのを悩んだが、《天威竜―ヴィシュダ》を採用することにより、展開後に引いても1枚除去に変えることができるようになったので無理なく採用できた。
・3《バージェストマ・ディノミスクス》
こちらも優秀な除去罠。ターン1がなく、フリーチェーンで1枚除外は罠としては破格の性能で、先攻・後攻問わず強い。唯一のネックは手札を一枚要求するところであるが、【勇者】装備魔法を用いることで踏み倒すことができるので非常に相性が良い。また、墓地から通常モンスター扱いで特殊召喚される効果も、《騎竜ドラコバック》の装備対象になれたり、ライフカットに貢献してくれたりと、【勇者】と非常に噛み合っているため3枚採用。
・2《サンダー・ディスチャージ》
【勇者】専用除去罠。条件は《アラメシアの儀》1枚で満たすことができる。このカード一枚で相手の場を壊滅させることができるほどの除去能力を持ち、【勇者】の先攻盤面の弱さを補完してくれる良カード。ただ、ターン1がついていることと、後攻で素引きしても打ちづらいことを考慮して2枚。
・2《無限泡影》
手札誘発にもなれる罠。このデッキに除去カードはまあまあ採用されているが、効果無効が《流離のグリフォンライダー》と手札誘発くらいしかないため、先攻でも伏せて機能できる無効系カードとして採用。《神の通告》と悩んだが、後攻での強さを重視してこちらを採用した。
以上がメインデッキ紹介になります。ひたすら【勇者】カードによるビートダウンを行っていく形です。そのためのサポートカードとして
〇先攻盤面の補助:各種罠・(手札誘発)
〇後攻での抑止・捲り:手札誘発・《天威竜―ヴィシュダ》
というバランスでメインデッキを構築しています。【勇者】の自由枠の多さゆえにできる構築ですね。
EXデッキ
・1《クリムゾン・ブレーダー》
モンスターを戦闘破壊すると次ターン、相手の星5以上の特殊召喚を封じることができるので、【相剣】に対するメタカードとして再評価されている。このデッキでは《PSYフレームギア・γ》からの選択肢として採用。
・1《PSYフレームロード・Ω》
先攻で《PSYフレームギア・γ》を発動できればこいつを出しておくと無難。マストカウンターを決めていくことが要求される【勇者】にとって、相手の手札を1枚一時的に奪え、かつデッキタイプを知れる可能性があるこのカードは非常に強い。
・1《アクセスコード・トーカー》
言わずと知れた最強フィニッシャー。このデッキでは《強欲で金満な壺》を打たなかったゲームにおいて、出せれば強いカードとして採用。
・1《トロイメア・ユニコーン》
汎用リンク3と言えばこのカード。【トロイメア】共通の手札コストも、【勇者】装備魔法で踏み倒すことができる。
・1《神聖魔皇后セレーネ》
《水晶機巧―ハリファイバー》+《エフェクト・ヴェーラー》や各種リンク霊使いから出し、そのまま《アクセスコード・トーカー》につなげるためのカード。
・1《トロイメア・フェニックス》
汎用リンク2と言えばこのカード。【トロイメア】共通の手札コストも、【勇者】装備魔法で踏み倒すことができる。
・1各種リンク体霊使い(火・水・地)
この属性にした理由として、それぞれ《遺跡の魔鉱戦士》《聖殿の水使い》《天威の拳僧》から出せることがある。また、火と地は《灰流うらら》《増殖するG》の存在から効果を発動しやすい点は高評価。水に関しても《相剣師―莫邪》を狙える…かも。
・《PSYフレームロード・Λ》
手札に《PSYフレームギア・γ》を握っている状態で出せば、単純に妨害数が一枚増える。非常に出しやすいリンク体であることもグッド。
・1《水晶機巧―ハリファイバー》
ほんとに悪さしかしないカード。後攻で適当に《灰流うらら》などを出し、そのままこいつにつなげて《アクセスコード・トーカー》まで持っていく流れはシンプルかつ強力。
・1《I:Pマスカレーナ》
非常に出しやすいリンク2で、相手ターンに《トロイメア・ユニコーン》を出す戦術は昔から非常に強力。
・3《天威の拳僧》
《天威竜―ヴィシュダ》を特殊召喚し、そのままこいつをリンク召喚すれば、《天威竜―ヴィシュダ》の効果で相手の場を1枚バウンスできる。相手の妨害を踏みに行く手段として非常に強力かつ【勇者】と噛み合っている点があることから、《強欲で金満な壺》で飛ぶ可能性を考慮して3枚。
EXデッキはほぼ使うことはありませんが、《強欲で金満な壺》を打たない試合のことを考慮して、柔軟に対応できるように組んでいます。
4.不採用カード・相性の良いカード
ここでは簡単に【勇者】と相性の良いカードや、今回の構築で採用しなかったカードについて紹介したいと思います。
〇《クリッター》
《アラメシアの儀》を発動すると、特殊召喚されたモンスター以外のフィールドのモンスターの効果は発動できませんが、《クリッター》は墓地効果ゆえ、その誓約をすり抜けることができます。古いカードですが、このカード1枚から《真竜皇V.F.D》《アクセスコード・トーカー》等の強力なカードにアクセスできることを考えると、十分強いカードです。しかし今回はギミックでデッキを圧迫すること、《強欲で金満な壺》を採用しにくくなってしまうことなどから不採用としました。【勇者】は通常召喚権を余らせがちなので、色々検討してみても面白いと思います。
〇《墓穴の指名者》
今では手札誘発のケアや、単純に墓地リソースを奪うカードとして非常に採用率の高いこのカード。もちろん【勇者】に採用しても強いですが、強みの項目で述べた通り、手札誘発自体が痛手になりにくく、打ちたい場面が《灰流うらら》くらいしかなかったため、今回は後攻からより広く対応できる《PSYフレームギア・γ》に役割を任せることにしました。また、こちらの妨害手段としても手札誘発が大きな役割を担っているので、《墓穴の指名者》との噛み合いが少し悪いというのも理由です。
〇《フュージョン・デステニー》
今や大流行の出張ギミックです。カード1枚から《D-HERO デストロイフェニックスガイ》という強力な妨害札を生み出すことができ、おまけに《D-HERO ディバインガイ》の効果による2ドローまで可能と、もうなんでもござれの状態。しかもその《フュージョン・デステニー》というカードも、効果モンスター2体を並べることで《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》からアクセスできてしまうという始末。めちゃくちゃ強いので採用するかどうかは好みの問題かと思います。私は融合素材を引いてしまうことが嫌だったのと、《強欲で金満な壺》を採用しづらくなってしまうことから採用を見送りました。
5.おわりに
いかがでしたでしょうか。【勇者】はまさしく王道RPGをモチーフにしたような世界観で、幼き頃からテレビゲームに囲まれて育った私としては非常に興味をそそられるテーマです。今の環境では《トークンコレクター》等の存在もあり、なかなか純構築でトーナメントに臨むのは難しいですが、一枚初動をはじめ、難しいコンボを必要としない単純なパワーの高さや、空きスロットの多さに伴う構築の自由度の高さ等、使っていてとても楽しいと感じられる良いテーマだと思います。
では、また長くなってしまいましたが、これにて【勇者】についての考察を終わりたいと思います。ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございました。
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