賢者の贈り物

高校生の頃に読んでいた雑誌「宝島」の中で好きなページがありました。中森明夫さんが連載していた『東京トンガリキッズ』。当時の自分と同年代、十代くらいの若者を主人公にした掌編小説でした。ときどき、あれはとても面白かったと話が出ることもあり、ツイッターでちょっと似た雰囲気のことが書けないかなあと試してみました。ツイッターでは5回に分けてツイートしました。もしよろしかったら、ご笑覧ください。

#トンガリキッズみたいなつぶやき  2-1

子供の頃から読書は私の不得意分野。でも図書館に通い始めたのは、2組のオータの影響だ。オータはほかの男子と違う一種独特の雰囲気があって、毎日何かしら本を読んでいる。これ見よがしに分厚い単行本を持つのではなく、だいたいいつも文庫版なのがいい。

#トンガリキッズみたいなつぶやき  2-2

こないだついに、オータが読んでいる本のタイトルを盗み見た。「O.ヘンリ短編集」とあった。これなら知っている。「最後の一葉」とか有名だし。それで私は数日後、図書館で同じ本を探して読んだ。オータがこれをつい先日手にしていたんだと思うとドキドキする。

#トンガリキッズみたいなつぶやき  2-3

バレンタインデーに思い切って私はオータに手紙を出した。重く感じられると嫌なのでブラックサンダーをひとつだけ同封した。返事は来なかった。それ以来目も合わせてくれない。家に帰り、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「アフターアワーズ」を聴いて泣いた。

#トンガリキッズみたいなつぶやき  2-4

ホワイトデーの朝、自分で髪をばっさり切った。男になんか媚びたくないし、もうオータなんて知らない。つんつん頭で登校した私を見て、クラスの子たちは目を丸くした。でもかまうもんか。―下校時間までがひどく長く感じた。正面玄関を出ると、誰かが立っていた。

#トンガリキッズみたいなつぶやき  2-5

それはオータだった。小さな包みを私に手渡し「開けてみ?」笑いをこらえるように言った。中にはチロルチョコと白いリボンが入っていた。「似合うと思ったんだけど、髪切っちゃうし…」

―これって賢者の贈り物、みたいじゃない?

 嬉し涙でオータの姿が滲んだ。

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