少し笑った

 頼まれていた幾つかのことが一段落して、「キングオブコント2021」を観ました。

 これから観る方もいらっしゃると思うので詳しくは書きませんが、今年はどれもかなり面白くて(毎年途中で飽きてきて何本か見きれないのです)、そんな中で残った3組のコントに共通するのは、ちょっと変わっているけど愛すべき人とか、なんとなく残る優しい余韻。特に気に入ったコンビは、放送後にほかの舞台動画も観てみて、やはり同じような印象を受けました。

 エッジのきいた起承転結で抜群に面白かったコンビは、しょっぱなから下着姿で最初はどうなることかと思いました。しかし、これがなかなかどうして。他人には打ち明けにくい性癖をもった同士が出会い、一転して大活躍するという痛快な展開。ここしばらく続いていた、いじりとか容姿に関する笑いから、上手い具合にシフトチェンジしているのでは…。

 この夏起きたオリンピック・パラリンピックに関する一連の騒動で、お笑いに関しても「誰のことも傷つけない」ものって何だろう、と、作り手側が慎重になった部分もあるのではと考えるのは、穿ちすぎでしょうか。今回のこの番組で上位に残った内容は、正しさを前面に出し過ぎることなく、ほどよくコミカルなものでした。審査員のコメントも的確だったと思います。

 今回のファイナリストの芸人さんの中には、子ども時代にいじめを受けていたという方がいます。ほかにもそうした過去の辛い経験から、自らが他人を笑わせることに興味を抱いたと語る方も、お笑いの世界には目立ちます。勝手な解釈かもしれませんが、今年のコントの中に、登場人物の肯定など救いとなる流れを入れた作品が幾つかあったのは、何か大事なメッセージのようにも感じたのです。

 自分たちは内側にい(ると思っ)て、安全な場所から、そこに居られない誰かを笑うよりも、自分と違う個性を理解しようとしたり魅力をみつけたり、交流が生まれたりするほうがいい。この番組で、例年より柔らかに練り上げられたコントに触れて、今年はなんとなく、ようやくちょっとだけ笑う時間を持てた気がした秋の夜でした。

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