見出し画像

現地関係者に事業のインパクトについてインタビュー|アフガニスタン×防災力向上支援

こんにちは、インターン生の村上です。今回は先日アフガニスタンの現地関係者に行ったインタビューの内容をお届けしつつ、防災事業におけるインパクトとは何かについて考えていきたいと思います!

▼アフガニスタン防災力向上事業の詳細についてはこちらから

中臺なかだいさんによる前回のインタビュー記事はこちらから


防災事業におけるインパクトとは

みなさんは、何かの事業におけるインパクトとは?と聞かれたら、どのように答えますか?実はわたしはこの事業に携わるまで、インパクトについてよく理解していませんでした。防災事業におけるインパクトとは、中長期的に支援を行うなかで、「防災インフラを建設した。キャッシュを配布した。」といったアウトプットのさらに先にある、そこに住む人の意識や行動が変化した、災害に対するレジリエンスが向上したなどの効果や波及を指します。災害時に優先されるのは復旧・復興ですが、次に同じような災害が起きたときに被害を最小限にするためには、防災能力自体を向上させる必要があります。支援を行なっている国やコミュニティが、いずれは他者の力を借りることなく災害を乗り越えることができるようになることを、防災という文脈における持続可能性だとわたしは捉えています。

地域住民の意識や姿勢の変化

地域の住民やコミュニティの意識の変化について、以下の2つを聞いてみました。

1.CWS Japanの支援開始後、住民の災害リスクに対する意識や態度に変化はあったか?
2.地域住民の意識の変化をどのように定量化するのか?

実際に現場でインフラ建設などに当たっていた方は、コミュニティの人々の防災意識の高まりを感じているそうですが、住民の行動の変化や活動の波及の例として、アフガニスタン・バーミヤン県のサイゴン地区の山で鉄砲水の流れを固定化するプロジェクトの話を教えていただきました。現在この地点は地域の人により管理され、さらにその周辺の山に住む、別のコミュニティの住民も同じ管理方法を実施していることが分かったそうです。また、このような意識を定量的に測る方法として、防災に関するセッションを実施し、その前後で住民の知識や今後の行動について問うアンケートを実施したそうです。セッション終了後、住民は災害が起きた時に安全な場所や避難する場所について理解するようになったと言い、可視化の難しいインパクトですが、この地域の活動を評価することができそうだと感じました。

事業を進める過程での地域住民や女性の関わり

CWS Japanはたびたび、「地域住民主体の防災」について強調してきましたが、実際に活動をする過程で、どのように地域の住民や女性は関わったのかについても聞いてみました。質問は2つです。

1.ダムや防護壁を建設する過程で、地元住民や女性はどのように関与したか?
2.コミュニティにおける女性の社会的・経済的地位はどのように評価されたか?

バーミヤン県では過去に、洪水や鉄砲水のリスクが高い河川に沿って防護壁を設置するプロジェクトが実施されました。このプロジェクトでは、男女問わず、多くの住民が防護壁の建設に直接関わっていたそうです。参加者296人のうち女性は76人。防護壁は、鉄線で作った蛇籠じゃかごに石を詰めたものを積んで造りますが、女性は自宅で蛇籠を作るという形で参加しました。

防護壁を造る様子 @CWSA

このようなプロジェクトには女性も多く参加することが可能ですが、政権の崩壊後、女性の社会的・経済的地位は以前より悪化しているそうです。女性は夫や兄など男性の保護者の同伴なしに一人で外出することが難しいため、適切な教育が受けられないほか、仕事も親族が携わっている職場のみなど、かなり行動が制限されているのが現実だそうです。このような状況について現地の方の生の声を聞くことは、普段当たり前のように大学に通っている女性のわたしにとって、衝撃的でした。

建設した防災インフラが災害リスクの軽減につながった証拠

防災インフラが、実際に災害のリスクを軽減したといえるエビデンスがあるのかについても聞いてみました。
第2フェーズの2022年11月から2023年9月の間、サイゴン地区のゴラフ村では、洪水の際に水路の氾濫を防止するために砂防ダムを建設するプロジェクトがありました。

完成した砂防ダム @CWSA

各水路で砂防ダムが建設されて以降、コミュニティは家やモスクの再建に乗り出し、現在は農地を復旧するにまで至ったそうです。そして今年の6月と7月にこの地域で洪水がありましたが、この水路では洪水が起こらなかったそうです。コミュニティの人々はこのことをとても喜び、その後も砂防ダムの建設を進めているといいます。

このような成功体験は、現地コミュニティにとってとても大切だと感じました。その一方で、わたしたちは議論の中で、このようなインフラの建設が災害のリスクを減らすことはできでも、ゼロにすることはできないのだということを改めて認識しました。

現地コミュニティは今後どんな支援を求めているのか

CWS Japanが支援にあたることができるコミュニティの数や災害の種類は限られており、全てをカバーすることは叶いません。まだ取り組んでいない地震の対策や農業用水路の再建、人員確保など、多くの面で足りない部分があることを知りました。それでも、インタビューを通して、CWS Japanが現地関係者やコミュニティの方から信頼され、歓迎され、感謝されているということを感じ、この支援の意味や価値を以前よりも理解することができたように思います。インタビューを引き受けてくださった現地の方や、サポートしてくださった小美野事務局長にも心からお礼申し上げます。
                                                                              (文・インターン生 村上 琴美)

いいなと思ったら応援しよう!