人間

ある曲を聴くと、何も入らなくなる。
その人の歌に全て支配されて、世界から遮断される。

電車の中でその曲が流れた瞬間
携帯を閉じてぼーっとする。
緑が見える。こんな都会にも緑が見える。
深く寂しそうな冬の景色。

ぼーっとしている時の目は
前じゃなくて引っ込んでしまって
私の脳内を覗き込む。
嗚呼、この感情を今すぐ文字にしたい、と思うが
多分できないだろうし、しようとしたら終わってしまうから。
だからもう少しこのままで。

一本のギターと下手くそな心地のいい声。
コードチェンジの音が聞こえる。
もう涙もうまく流すことができないのかな。

この暮らしは多分私の望んでいるものではない。

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