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美味しい匂いをかいでから…。#シロクマ文芸部#秋が好き


秋が好き

古いアパートの駐車場と砂利道で遊ぶ子ども達
遠くで知らせる17時のチャイム、みんな「またあした」と帰る時刻。
ミチルちゃんはひとり家に帰らず、アパートの外、ちょうどシンちゃん家の窓枠の下で隠れるように座っている。お腹を空かせて座っている。

古いアパートの薄い壁から聞こえてる楽しそうなお喋りと美味しい匂い。

「今日はハンバーグか〜♪」ミチルちゃんは目をつぶって家族5人の食卓を思い浮かべる。ハンバーグの付け合わせは甘いにんじんとみかんの缶詰が入ったポテトサラダ。サラダはお父さんが作ってくれたもの。白いご飯を山盛りによそうとちゃぶ台はお皿で一杯になって並べきれないほど。ケチャップで食べるミチルちゃんと弟くん、醤油をかけるお父さんとお母さん、マヨネーズはお姉ちゃん。
美味しい匂いとたくましい想像でお腹いっぱいになったミチルちゃんは自分の家に帰っていく。

まだ誰も帰って来てない、ミチルちゃんはコップでガブガブとお水を飲んでお腹を膨らませておく、夕飯までにお腹が空かないように。

お姉ちゃんが帰ってきた。お姉ちゃんは帰るとすぐに台所にたまった今朝の汚れ物を洗いはじめる、ミチルちゃんも一緒に手伝いをする。弟は田舎に預けられて家には居ない。お母さんも居ない。
お姉ちゃんは洗い物が終わるとお米をといでお釜にセットした。
ふたりで一緒につくる甘い卵焼き、もうすぐ帰ってくるお父さんを待ちながら。

お父さんが工場から帰ってきた。「ただいま」と言った後にすぐに夕飯を作り始める。レトルトカレーの時もあれば、缶詰や袋麺の時もある、お刺身が並ぶ日はご馳走だけどお父さんが疲れてしまた時。

「今度おばあちゃんがくるから」とお父さんの一言。

ミチルちゃんとお姉ちゃんで夜の内に洗濯機を回しておいた。
軒下に干していると夕飯の片付けをしていたお父さんも手伝いに来てくれた。機械油に汚れたブルーのシャツは土曜日にまとめてお父さんがゴシゴシと手で洗っている。

おばあちゃんが家に来てくれたら、田舎に預けられている弟も帰って来るかもしれない、元気にしているかな、淋しい思いをしてないかな。

ミチルちゃんは涙をそっとしまっています。
お母さんを思って泣いてしまうとお父さんに悪いから。

ミチルちゃんは秋が好き。
なぜってね。美味しい匂いが流れてくるからなんだよ♪










春は短く、
夏はサッパリした味のものが多く。
冬はきっちりと窓が締まっておりますから
秋はおかずの味付けも濃厚で食欲をそそる美味しい匂いが家々から流れて来ます。窓も薄く開けてあります様で、賑わう家族の団欒も楽しげで、こちらもたまらなく嬉しくなります♪

昭和生まれの私物語でした。
最後までお読みいただきありがとうございます。

こんな『ど貧困』は昭和だけの話しなのでしょうか?
今は、『フードシェア』『フード分け合い会』『子ども食堂』などの支援活動をなさっている団体もあります。
どうが必要な方に必要な支援が届きますように、支援活動なさっている方と繋がりますようにと願いつつ…。

こちらの作品は、
小牧幸助 様 のサイト
シロクマ文芸部の今週のお題に参加させていただきました。
素敵な企画、素敵な出会いをありがとうございます。

タイトルの写真は
ハタモト 様 のお写真を使わせていただきました。
ハタモト 様 ありがとうございました。















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