マンハッタン

マンハッタン

冬も近づく晩秋、音ちゃんは、ラ・カンパネラを物憂げに弾いていた。

「ん~、最近寒くにゃってきて人肌恋しくなってきたにゃんね。」冬毛に変わってモコモコした看板猫のねねがそう呟くと、

「何言ってんの、ねねは毎晩私が抱っこして寝てあげてるでしょ。」とマスターのみつがいうとねねは、

「だってアンタ、寝返りするじゃにゃい、そん時アタシ、アンタに潰されそうににゃって恐いにょよ。」

「そっか、だから朝になるとねねは猫ベッドで休んでるのね、ごめんなさい。」

「納得してないでマタタビ酒でもちょうだい、酔ってないとやってれにゃいわ!」

「ま~ま~、そんなに怒んないでよ、お酒は楽しく飲も。」

そんなやり取りをしていると、チリンチリン♪来客の様だ。

「いらっしゃいませ、何に致しましょうか?」そうみつが注文を取ると、愁いを帯びた雰囲気の,白いふんわりとしたブラウスに黒のロングスカート姿のノリコは、

「強いの下さい…酔いたいんです…。」

あらあら、ねねと同じ反応ですね。

「何をそんなにヤケクソにゃのさ?お酒を出すのはかまわないけどさ。」
ねねがそう言うと…、ノリコは、

「ふふ…、私、失恋しそうなんです。」

「にゃんですって!?」

びっくりしたねねは、尻尾をぽんぽんに膨らませた。

更にノリコは続ける。

「まぁ…そうなって当然ではあるんですが、不倫の恋で…。」

「!?!?!?」
騒然となるBAR MITSU一同

「あの人には、奥さんも子供もいて…。でも、見つからないように遠い場所まで出かけてあの人と会っていたんです。だから、私を愛してくれていると信じて疑わなかったんですが、ある日突然あの人のスマホから私のSNSに、『私のダンナに一生付きまとわないで!!』って返事が来たんです。それで驚いた私は、諦めてそれからは一度もこちらからはあの人には連絡してなくて、そして、当然ですが、あの人とは会えなくなって…。」

「でも、その方がいいにゃんね、恋は、穏やかな気持ちでした方がいいにゃんよ。」とねねが言うと音ちゃんは、

「恋愛は障害があった方が燃えるとは言うけどよ、ノリコさんのはワナだらけだぜ!!命がいくつあっても足らんよ!!」と言った。

「皆さん、ありがとうございます、目が覚めました。」とノリコが言うと、みつは、

「それでは、切ない恋心という意味のマンハッタンをお作りしましょう。」と言い、カクテルを作る準備をした。

材料…バーボンウイスキー…45㎖
   スイートベルモット…15㎖
   アンゴスチュラビターズ…1dash
   マラスキーノチェリー…1つ
   レモンピール…1片

作り方…材料をミキシング・グラスでステアして、カクテルグラスに注ぎ、
    カクテルピンに刺したマラスキーノチェリーを飾りレモンピールを
    しぼりかける

マンハッタン、32度中口の出来上がり

「どうぞ」

スイートベルモットの甘味で口当たりが良い。

報われない恋をするよりは、心から幸せになるような恋をしましようね。

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