第195回新沖縄放射線カンファレンス

2023年9月27日に第195回新沖縄放射線カンファレンス(以下、沖放)が琉大病院読影室+オンラインにて開催されました。沖放は琉球大学病院を中心として県内の放射線科医が集まり、経験した教育的な症例や稀な症例を共有するカンファレンスです。今回は2つの症例報告があったのでここに共有します。

【肝硬化性血管腫】出題:琉大病院 知念 解答:浦添総合病院 中村
1例目は痔瘻癌に対してオキサリプラチンで治療歴のある70歳台男性。フォローの造影CTで肝臓に2箇所の遷延性リング状濃染結節を認め、経過で増大を認めました。腫瘍マーカーの上昇はなかったものの、肝被膜の陥凹を伴いPET-CTでFDG集積を認めたため、転移性肝腫瘍を否定できないということで肝部分切除術が施行されました。病理所見で線維性結合組織を中心に出血、炎症細胞浸潤の像を認め、悪性を疑う所見はありませんでした。肝硬化性血管腫の診断となりましたが、多発病変でFDG集積を伴うことが典型例と合致せず、術前診断が難しい一例でした。今回MRIは施行されませんでしたが、T2WIであまり高信号を示さない点やADC高値となる点が悪性腫瘍との鑑別ポイントとなるため、悩ましい症例はMRIが考慮されます。

【慢性再発性多発性骨髄炎】出題:那覇市立病院 川上 解答:琉球大学病院 佐東
2例目は運動後より腰痛が2週間持続する10歳台男児。夜間に微熱があり、血液検査で軽度炎症反応上昇を認めました。MRIでL2椎体と仙骨右側にSTIR高信号、T1WI低信号域を認め、明らかな拡散制限や腫瘤性病変はなく、骨髄炎が疑われました。経過で腰痛の改善とともに肩の痛みがありMRIを撮像したところ、鎖骨骨幹端にも同様の所見を認めました。下腹部痛が出現し、下部消化管内視鏡を施行しましたが、炎症性腸疾患などを疑う所見はありませんでした。骨生検を施行され、感染症、悪性腫瘍を疑う所見は認めず、異時性の多発骨髄炎がみられることから慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO:Chronic Recurrent Multifocal Osteomyelitis)の診断となりました。
CRMOは10歳前後の女児に好発する再発性・多発性の無菌性骨髄炎で、主に長管骨に発生します。画像上、骨融解像や骨髄浮腫像を呈し、生検などで感染症や悪性腫瘍を除外した上で診断されます。治療はNSAIDsです。SAPHO症候群の類縁疾患と考えられていますが、治療法が異なるため鑑別が必要です。

大変貴重な症例を提示していただいた先生方、画像所見や鑑別診断を回答していただいた先生方、ありがとうございました。今後も沖縄県の画像診断の発展のため励んでまいりましょう。
文責:伊波


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