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    白雪姫


むかし むかし、ある国の王さまと王妃さまに、女の子が産まれました。
女の子は、雪のような白い肌をしていたので、白雪姫と呼ばれるようになりました。
白雪姫は、王さまと王妃さまに大切に育てられ、幸せに暮らしていました。
ところが、王妃さまが病気で亡くなってしまったのです。

しばらくして、王さまは新しいお妃さまと結婚しました。
新しい王妃さまは、とても美しく華やかで、誰もが美しさをたたえました。
王妃さまは、お城に大きな魔法の鏡を持ってきていました。
魔法の鏡は、王妃さまの、知りたいことに応えてくれます。
王妃さまは、鏡の言うことなら何でも信じ、従ってしまいます。
なぜなら、王妃にまで登り詰めたのは、鏡の言葉に従ったからだと、信じているからです。

美しさが自慢の王妃さまは、毎日鏡に尋ねるのが日課です。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰だい」
すると、鏡の中の妖精がこたえます。
「王妃さま、あなたさまが世界で一番美しいです」
王妃さまは、鏡の言葉を聞くと、とても安心して満足するのでした。

月日はながれ、白雪姫は15歳になりました。
雪のような白い肌に、艶やかな黒い髪の王女さまは、誰よりも美しく輝いています。
ある日、いつものように王妃さまは、鏡にたずねました。
すると「王妃さま、世界で一番美しいのは、あなたさまではでは無く、白雪姫です」と、鏡は言いました。
「あの白雪姫が、私より美しいだって」
自分が一番でなければ、気がすまない王妃さまは、悔しくて仕方ありません。
「一番に成るには、どうすればいいんだい」
王妃さまの願いを、よくわかっている鏡は、すぐに応えました。
「白雪姫を森に連れて行き、殺してしまえば良いでしょう」
王妃さまは、すぐに家来を呼び、命令しました。
「白雪姫を森に連れて行き、殺してしまえ」
王妃さまは、鏡の言うがままに、従うのでした。

家来はすぐに命令に従い、白雪姫をだまし、森に連れ出します。
何も知らない白雪姫は、森の中の花や木や鳥たちに、心を奪われます。
家来は、楽しそうに飛び回る白雪姫を見ていると、殺す気にはなれませんでした。
家来は、王妃さまからの命令を、すべて話しました。
「どうかお逃げください」「決して、お城に戻ってはいけません」
家来はそう言うと、お城に戻って行きました。

一人ぼっちになってしまった白雪姫は、行くあてもなく歩いて行くと、小さな可愛らしい家がありました。
「何て可愛いお家なのかしら」
「どんな人が住んでいるのかしら」
白雪姫は勇気を出して、小さなドアをノックしてみました。
すると、可愛らしい七人の小人たちが出てきました。
「すみません、道に迷ってしまって…」
「おお それは大変だ!」
小人たちは、全員で同じことを言います。
白雪姫は、それが面白くて、クスッと笑ってしまいました。
「とにかく、家の中で話を聞きましょう」
一番年上に見える小人が、優しく言ってくれました。
白雪姫は、これまでのことを、小人たちに話しました。
「可哀想な白雪姫」
「行くところが無いなら、ここに居たらいいよ」
七人の小人たちは、白雪姫をなぐさめます。
白雪姫は、小人たちの優しさに、泣き出してしまいました。
「ありがとう、本当にありがとう」
そして、白雪姫は小人たちの家に、住むことになりました。

そのころ、お城の王妃さまは、いつものように鏡にたずねいました。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰だい」
すると鏡の妖精が言いました。
「王妃さま、あなたではありません」「一番美しいのは、白雪姫です」
それを聞いた王妃さまは、白雪姫がまだ生きていることを、知ってしまいました。
「毒リンゴを作り、白雪姫に食べさせるのです」
怒りにふるえる王妃さまに向かって、鏡の妖精が言いました。

王妃さまは、鏡に言われたとうりに毒リンゴを作り、白雪姫のいる森に行きました。
白雪姫のいる場所は、鏡に教えてもらっていたので、すぐにわかりました。
「トントン」
ドアをノックすると、白雪姫が出てきました。
「お嬢さん、水を一杯いただけないだろうか」
おばあさんに化けた王妃さまは、か細い声を出して言いました。
白雪姫は、弱ったおばあさんが可哀想で、すぐに水を持ってきました。
「さあ、おばあさん、どうぞ」
「ああ 優しいお嬢さん、ありがとう」
「お礼に、このリンゴをあげよう」
おばあさんに化けた王妃さまは、真っ赤なリンゴを白雪姫に渡しました。
「さあ、美味しいから、すぐに食べなさい」
白雪姫は、言われるまま、リンゴを一口かじります。
すると、とつぜん苦しみだして、その場に倒れてしまったのです。
王妃さまは、白雪姫が死んだと思い、急いでお城に帰って行きました。

夜になって小人たちが帰ってくると、ドアのところに白雪姫が倒れているのを見つけます。
「白雪姫!白雪姫!」
小人たちは何度も呼びましたが、白雪姫は応えません。
そのとき、馬に乗った青年が通りがかり、小人たちの悲しむ声を聞き、走ってきました。
「何と美しい人なんだ」
青年は、美しい白雪姫に、見とれています。
小人たちは泣きながら、白雪姫を部屋に運ぼうとしますが、重くて運べません。
「私が運びましょう」
青年は、まだ生きているように美しい白雪姫を、優しく抱き上げます。
ところが、小さいドアを入ろうとした時、頭をぶつけよろけてしまいます。
青年は、白雪姫を落とさないようにするため、その場に尻もちをついてしまいました。
すると、のどに詰まったリンゴのかけらが、はずみで飛び出し、白雪姫が目を開けたのです。
「白雪姫が生き返った!」
小人たちは泣きながら喜びます。
白雪姫は、おばあさんに化けた王妃から、もらったリンゴを食べたことを話しました。
「ここにいては危ない」「私のお城に来てください」
青年は、隣の国の王子さまだったのです。
「私が命をかけて、貴女をお守りします」
白雪姫は、優しい王子さまの申し出を、喜んで受けることにしました。

そのころ、お城に戻った王妃さまは、急いで鏡にたずねました。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰だい」
「王妃さま、世界で一番美しいのは、白雪姫です」
「そんなはずはない!」「言われたとうり、毒リンゴを食べさせたのだから!」
「王妃さま」「白雪姫はとなりの国の王子と、結婚するでしょう」
鏡は冷たく言いました。
怒りにふるえる王妃さまは、鏡を床に投げ捨て、バラバラに壊してしまいました。
「お前の言うことを、信じた私が、大バカだった!」
大事な鏡を壊した王妃さまは、その場で気を失い死んでしまいました。

その後、白雪姫は小人たちの祝福を受け、王子さまと結婚しました。
美しい白雪姫は、誰からも愛され、幸せに暮らしました。

      おしまい


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