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 「眠りの森の美女」

むかしむかし あるところに、美しい妖精の国がありました。
妖精の国では、それぞれの妖精たちが、それぞれの力をあわせ、それぞれに与えられた、使命を果たしています。

今日は、ある国の王さまから、王女さまの誕生パーティーに呼ばれています。

その国の王さまは、生まれたばかりの王女さまのために、盛大なお祝いのパーティーを開催しました。

国じゅうから、たくさんの招待客が、王女さまのお祝いに来ています。

十二人の妖精は、王女さまの小さなベッドのまわりで、出番を待っています。
幸せをはこぶ魔法のことばを、王女さまに、贈ることになっているからです。

一番目の妖精は「王女さまは、バラのように美しくなるでしょう」
二番目の妖精は「王女さまは、誰からも愛されるでしょう」

妖精たちは、つぎつぎに、お祝いのことばを贈ります。
そして、最後の妖精の番になった時、
あたりいちめん暗くなり、招待されていない妖精がやって来ました。

「よくも私を、のけ者にしてくれたね!」
妖精は、恐ろしい声で、叫んだのです。

十二人の妖精たちは、王女さまを守ろうとします。

悪い妖精は、自分勝手なふるまいが過ぎるので、妖精の国の女王から、仕事を取り上げられ呼ばれなかったのです。

悪い妖精は、のけ者にされた恨みから、
王女さまに向けて、不吉なことばを叫びました。
「王女は、十五歳の誕生日に、糸紡ぎの針で指を刺して死んでしまうだろう!」

呪いのことばを聞いて、王妃さまは、その場に倒れてしまいます。
王さまは、衛兵たちに、悪い妖精を捕まえるように命令します。

お祝いのパーティーは、恐ろしい妖精のせいで、メチャクチャになってしまいました。

「ああ、良い気分だ!」
そう言うと妖精は、あっという間に消えてしまいました。

すると、そこに、隠れていた十二番目の妖精が現れました。
「王さま、王女さまは死にません」
「百年の眠りにつくだけです」「そして、百年後、眠りから覚めるでしょう」と、言ったのです。

十二番目の妖精は、まだ、祝福のことばを贈っていなかったので、呪いから王女さまを守ることが出来ました。

ただ、まだ魔法の力が弱く、呪いをすべて消すことは出来なかったのです。

王さまは、不安にかられ、国じゅうの糸紡ぎを燃やすよう命令しました。

            *     *    *

月日はながれ、王女さまはすくすくと育ち、
もうすぐ十五歳の誕生日がやって来ます。

王さまは心配で、王女さまが部屋から出ないように、侍女に見張らせています。

王女さまは、呪いのことばの事など知らないので、外に出たくてたまりません。
好奇心がつよい王女さまは、何度も部屋を
抜け出そうとしました。
しかし、すぐに見つかってしまうのです。

「なぜ、部屋から、出してもらえないのかしら」
「こんな退屈な生活は、我慢できないわ」

王女さまは、毎日、外に出ることばかり考えていました。

            *      *     *

とうとう、王女さまの誕生日が、やって来てしまいました。
侍女たちは、いつにも増して、見張りがきつくなっています。

ところが、いつの間にか、侍女たちが眠ってしまったのです。

悪い妖精が、王女さまを、おびき出そうと
邪魔な侍女たちを眠らせたのです。

「ふん、いくら見張ったって、私には通用しないんだよ」

王女さまは、悪い妖精の仕業とも知らず、
侍女たちが眠っているので、簡単に外に出ることができました。

部屋に閉じこめられていた王女さまは、はじめての自由が楽しくて浮かれています。

すると、どこからともなく、うわさ話が聞こえてきました。

「王女さまは、もうすぐ魔女の呪いで、百年の眠りにつくそうだ」
「なんとも、可哀そうなことだ」
「でも、百年目には、目覚めるそうだよ」

信じられない話を聞いてしまい、驚いた王女さまは、その場から逃げるように、走り出しました。

気がつくと、お城のはずれの、小さな部屋に来ていました。
部屋のドアは開いていて、中ではおばあさんが、糸を紡いでいます。
「おばあさん、何をしているの」
優しそうなおばあさんを見て、王女さまは、
つい声をかけてしまいました。
「ああ 美しいお嬢さん」
「糸を紡いでるんだよ、よかったらやってみるかい」
おばあさんは、王女さまを、部屋に招き入れてくれました。
「さあ、やってごらん」
おばあさんは、王女さまに、糸紡ぎをわたします。
「痛い!」
糸紡ぎを受け取った王女さまは、あやまって
糸紡ぎの針で指を刺してしまいました。

すると、王女さまは、その場にバッタリと
倒れてしまったのです。

とうとう、悪い妖精の呪いで、眠らされてしまいました。
「ハッハッハッ」
恐ろしい声で笑うのは、呪いをかけた、悪い妖精です。
おばあさんに化けて、王女さまが、来るのを待っていたのです。

「やれやれ、こんなに簡単にだまされるとは
なんというお馬鹿さんなんだ」
悪い妖精は、嬉しそうに言いました。

すると、十二番目の妖精がやって来て、
悪い妖精に魔法をかけ、動けないようにしたのです。
「さあ、観念しなさい」
「あなたは、女王さまの、裁判にかけられるのです」
十二番目の妖精は、妖精の国の女王さまの
命令で、悪い妖精を捕まえに来たのです。

悪い妖精は、邪魔されたことがくやしくて、
怒りにふるえています。

十二番目の妖精は、悪い妖精をとらえると、
つぎの仕事にとりかかりました。

王女さまをベッドまで運び、いちばん美しいドレスを着せ、バラの花びらでベッドを飾りました。

それから、目覚めた時に困らないよう、すべての人や動物、かまどの火まで眠らせたのです。

最後に、鋭いトゲのあるイバラで、お城を
おおい、誰も近づけないようにしました。

十二番目の妖精は、やるべきことをすべて終え、悪い妖精をつれて妖精の国へ帰りました

   *     *     *     *

妖精の国に連れて来られた、悪い妖精は、
裁判にかけられました。

悪い妖精は、ひどい罰が下されることを恐れています。

しかし、妖精の国の女王さまは、罰を与える
つもりはないのです。
それでも、女王さまは悪い妖精を、許したのではありません。
「おまえは、罪を償わなければならない」
「お前が眠らせた王女は、何もしなければ
目覚めることはない」
「百年が過ぎた時、おまえが王女を、目覚めさせるのだ」
「それが出来た時、すべてが許される」
妖精の国の女王さまは、悪い妖精に、再生の
機会を与えました。

悪い妖精は、女王さまの優しさを知り、素直に命令に従う約束をしました。

    *    *     *     *

それから、百年の時が過ぎ、王女さまを目覚めさせる時が来ました。

悪い妖精は、百年の間、まじめに魔法を学び、この日を待っていました。

妖精はこの日のために、準備をしているので
あとは、予定どうりに動くだけです。

      
王女さまが眠る、お城にやって来た妖精は、
誰かを待っていました。
すると、美しい立派な青年がやって来て、
お城に入ろうとします。
しかし、お城をおおうイバラに、行くてを
はばまれてしまいます。

それを見ていた妖精が、魔法を使ってイバラを消し、青年がお城に入れるようにしました

お城の中は、時が止まったように、人も動物もかまどの火まで、何もかもが動きません。

青年は、一瞬だけ立ち止まり、まわりを見まわしました。
ところが、そんな不思議な光景に目もくれず
まっすぐに王女さまの部屋に向かったのです

青年は、バラの香りに引き寄せられ、王女さまの部屋にたどり着きました。

ベッドで眠る王女さまを見つけた青年は、
あまりの美しさに、みとれてしまいます。

青年は、一瞬で恋におちてしまい、王女さまに優しくキスをしました。

すると、王女さまは目を開け、すべてのものが一斉に動きだしたのです。

止まっていた時は動き出し、お城の中は、
活気を取り戻しました。

すぐに、侍女たちがやって来て、王女さまの
ドレスを着替えさせ、髪をきれいに結い上げます。

王女さまの支度が整うと、合図のラッパが響きわたり、王女さまと青年の結婚式がはじまりました。

まるで、何もかもが、初めから決まっていたように、たくさんの招待客が、お祝いに来ています。

盛大に結婚式はおこなわれ、王女さまと青年は、末永く幸せに、生きて行くことを
誓ったのです。

教会のかたすみで、見守っていた妖精は、
安心して妖精の国へ帰って行きました。

妖精の国へ戻った妖精は、これまでの罪を
許され、女王さまや妖精たちと、楽しく暮らして行きました。

     *おしまい*


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