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   北風と太陽

ある日、北風さんが太陽さんのところにやって来ました。
「やあ 太陽さん!」
大きな声で、北風さんは言いました。
「やあ 北風さん!」
優しい声で、太陽さんは返事をしました。
「太陽さん、どっちが強いか、力くらべをしてみないか」
負けず嫌いの北風さんは、太陽さんに勝って、みんなに自慢したいのです。
「いいよ、やってみよう」
太陽さんは競争が嫌いでしたが、仕方なくやることにしました。

すると、向こうのほうから、一人の旅人が歩いて来ます。
北風さんは旅人を指差し「あの旅人の服を、早く脱がせたら勝ちだ」と、言いました。
「それじゃあ、僕から先にやってみるよ!」
北風さんは、はりきって息を吸いこみ、思いっきり旅人に吹きつけます。
「ひゅ〜 ひゅ〜」
旅人はいきなり冷たい風が吹いてきたので、コートのえりを立て、しっかりとつかみました。
北風さんは、早くコートを脱がそうと、もっと強く吹きつけます。
「びゅ〜 びゅ〜 びゅう〜」
北風さんは力いっぱい吹きつけますが、旅人はもっと強くコートをつかみ、脱げないように頑張ります。
何度やっても、旅人のコートを、脱がせることはできません。
「あ〜 苦しい」「息がつづかない」
北風さんは、降参するしか、ありませんでした。
「次は、ぼくの番だね」
太陽さんは、にっこり笑うと「サンサン サーン」「サンサン サーン」旅人に向けて、暑い夏の日差しを照りつけます。
すると、旅人は暑くて、コートのボタンをはずしました。
太陽さんは、もっと強く照らします。
「サーンサーン サーン!」「サーンサーン サーン!」
旅人は、ついに我慢できなくなり、コートを脱いでしまいました。
「太陽さんの勝ちだ」
北風さんは、ガッカリして言いました。
「ホッホー ぼくの勝ちですね」
太陽さんは、勝てたことを、喜びます。
しかし、ガッカリしている、北風さんを見るのは嫌でした。

北風さんは、しょんぼりと肩を落として、帰って行きました。
ところが、太陽さんが、何か叫んでいます。
「大変だ、旅人さんが倒れた!」
旅人さんは、汗をいっぱいかいて、ぐったりしています。
「北風さん、冷たい風を吹きかけてください!」
北風さんは大急ぎでもどり、旅人さんに冷たい風を、思い切り吹きつけました。
すると、旅人さんの顔色は、みるみる良くなったのです。
「ああ 良かった!」「ぼくのせいで、旅人さんが、死んでしまうところだった!」
太陽さんは、ほっとしました。
「北風さんのおかげだ」「ありがとう」
太陽さんに、お礼を言われた北風さんは、少し誇らしい気持ちになりました。
「いやいや、大したことないよ」
北風さんは、恥ずかしそうに笑いました。
こうして、北風さんと太陽さんは、気分よく家に帰って行きました。
    
      おしまい


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