曖昧な鰭

※ Lærke(レアケ) デンマークの女性名

目の覚める間際に夏至を告げる鳥 その名をもった青い眼のひと

思い出すたびに新たな雪の降る陶磁器だから歌はやまない

姉妹都市(姉妹も都市もおもしろく響く)ようこそ会えてうれしい

背の高いレアケがお辞儀するときに見つめてしまう、違うところを

音階の少し違った呼び声にわたしは生まれ直したみたい

差し出したグミはsourであるらしく顔が言葉を追い抜いている

清浄な会話それからレモネード 正しいだけじゃ辿り着けない

天井画見上げるようで、でもたまに、天使の隣にわたしの顔が

薔薇園の地下にはミイラ(でもこれは夢なのだから、でも誰の夢?)

曖昧な鰭で生まれた人魚ならどちらにもなる、あなたにもなる

声は骨、夢の中ならわかること でもまだ此処に来てはくれない

やわらかに屈折してる花たちは水の中では息がしやすい

浴衣から飛びだす脚も気にせずにはしゃぐレアケが透けていく夜

鍵盤の上でふたりの指先が交差するとき鳴るのはこころ

お互いの雪を見せ合うよろこびは溶けながらなお刻まれてゆく

アラベスク 立ち現れた草原をおなじ体で踏みしめている

ふるさとがゴーストタウンに変わるときちゃんとわたしはゴーストだろうか

たましいの同胞だった一瞬が無数に眠るからだで生きる

過ぎ去っていく人はみな横顔でどこか自分に似てしまう、でも

もう顔はわからなくても呼んでみる 魔女になるまでその鳥を待つ


第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト(短歌の部 二十首連作部門)応募作

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