見出し画像

【超短編小説】私の彼はどんな彼?

 それはまだお見合い結婚が普通だった頃の話。
 紹介された人の話を皆に聞くと、口をそろえて明るい太陽の様な人だよと答えた。
 写真を見ると眩しい笑顔で笑っている。
 一目で気に入ってしまった。
 両親に、
「私、絶対この人と結婚する!」
 そう宣言した。
 両親もそれがいい。家柄も立派で非の打ち所がないという話になった。

 初めて会った日。
 ドキドキしながら彼の前に座っていると、ボソボソと小さな声で挨拶された。
 ご趣味は? などと聞いても、特にないとそっけない。
 聞いてた話と違う。
 もしかして、そんなに私が嫌なのだろうか?
 ショックが大きすぎて、私は泣き出してしまった。
 さすがに慌てたのか、彼は
「あ、いや。どうか泣かないで下さい」
 と必死に慰めてくれた。

 お見合いが終わって、私の印象最悪だろうなと落ち込んでいたら、後日交際OKの返事が返ってきてびっくりした。
 何がどうなっているのか、よくわからない。

 それからもう何十年たったか。
 彼との生活は幸せで、彼は周囲の言うように太陽の様な明るい人間性だった。
 どうやらお見合いをさせられた時、彼には想っていた人がいたらしい。
 当時のことだからまだ身分違いみたいな風習が残っていて、諦めさせるための結婚であったようだ。
 それに、相手の女性も彼のことをそんなに意識していなかったと言う話だ。

 交際が決まってもしばらくは浮かない顔をしていたが、私との交際期間でみるみる元気を取り戻して、彼からプロポーズを受け私たちは結婚した。

「君と結婚してよかった」
 今、そう言って、明るく元気でいてくれる。もしも私にそんな力がなくて、ずっと片思いを続けていたらと思うと、ゾッとする。

 彼を元の彼に戻せてあげたこと。それは私の人生の一番の自慢なんだ!

 ケラケラと孫を抱き上げて笑う彼の横にいられる。それはなんて嬉しい事なんだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?