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「散骨の海」

 
 
 2000年に入ってから東京湾の入口、中ほど、最奥の三か所に散骨海域ができ散骨業者により毎週、毎月、海洋散骨が行われるようになった。
丁度私が今、墓守をしている東京都の霊園墓地を墓じまいして墓に入っている遺骨を海洋散骨しようと思い始めた時期と重なる。
なぜ墓じまいを考えたのか・・・それは 私には、墓守の継承者がいないからだ。
まだ伯父叔母が、毎年お盆に墓参りをしているので、すぐに海洋散骨してしまおうと言うわけではない。 けれども伯父も叔母もかなりな高齢になっているので、時間の問題で墓じまいをして、海洋散骨することになる。
私は、母の介護のために日本一平らなところ東京湾最奥の人工ビーチのある埋め立て地に引越しをして6年間母と同居・介護をした。その間に母は、二回脳梗塞を発病した。
母が、下の世話が必要になり私は仕事と介護の両立が出来ず気が狂いそうになって母を施設に入れて母との同居介護をやめた。
実際の介護は私の手から離れたものの母の介護は私に付きまとい救急車で搬送されたり入院したりと私の手と時間を煩わすことは多い。
いずれ母が死んだら父や祖父祖母たちの眠る東京都の霊園墓地に埋葬することになるのだろう。
だが葬式と埋葬には安くても30万円から60万円はかかる。
海洋散骨は、一体5万円程度から散骨してくれる。散骨と言っても海に骨をまくわけではなく骨を細かく砕いてプラスチックで覆い海に散骨するのだ。それは・・・海洋投棄に近いと思う。墓をしまいにするということは、私が死んだら私も海洋散骨してもらうということだ。この海洋散骨は、海洋投棄に近い感じがして心が重い。
私の住む町はPoolと人工海岸しかない観光と広大な公団住宅や市営住宅の町で、ここの人工海浜の沖に海洋散骨場がある。
 近年お葬式も家族葬が多くなりお金もかけず人も集まらない中で故人を偲び送る形が定着してきている。
私が墓守をしている都営霊園も、いつからだろうか、更地になる墓が増え墓を維持することが出来なくなり樹木葬や永代供養墓にする人が増えた。お墓参りの習慣は無くなってしまうのだろう。
 私もその一人だ。父から受け継いだ墓を終わりにして、ここの海岸沖の海に祖父や祖母を父と母をの骨を・・・散骨する。
ただ、悪いことばかりではない。人口の海浜にはカクテルを飲みながら海を眺めることができる場所がある。自分の家からも歩いて30分ほどと近い。
海洋散骨した後は、故人に会いに墓参りをひんぱんにできるようになる。
散骨した海を眺めながらカクテルを飲み故人を偲ぶことができるようになるのだから・・・
 
お墓が無くなっても人は故人にに手を合わせたいと思うし故人を偲ぶ気持ちは有る。
東京湾に海洋散骨をした人が、カクテルを飲みながら故人を忍ぶ時代は、すぐそこまで来ている。私がそうなるであるように。