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簿記検定試験と実務の壁

きっかけ

 公認会計士の受験生時代、財務会計論、管理会計論といった科目がありました。これは簿記検定でいう①商業簿記、②工業簿記に、③それぞれの会計理論が含まれている科目です。公認会計士受験生が避けて通れない、最重要科目でした。

 受験後、監査法人にて自信をもって会計監査に携わるのですが、受験勉強の内容と実務の違いに壁を感じることがありました。一方で、経験豊かで深く理解されている経理部長クラスの方でも、日々変動する会計基準についていくことが困難に感じているように見ていました。

記事でやっていきたいこと

 簿記検定から実務の壁であったり、会計仕訳の背景にある会計理論の壁をコンパクトに整理し、少しでも経理サイドで消費する時間を将来を考える時間に変更できるように、簿記2級で習うことをベースに、実務の壁や会計理論の概要を記事にまとめていきたいと思います。なお、参考に使用させていただいた書籍は以下のとおりです。

検定 簿記講義2級 商業簿記

出版:中央経済社 

第1章 簿記一巡の手続

①主要簿と補助簿

<参考テキスト>
 簿記は発生した取引を仕訳帳に記入します。また記入した仕訳を勘定毎に集計しますが、これを総勘定元帳への転記といいます。この仕訳帳、総勘定元帳が主要簿と呼ばれます。
 仕訳は少なくとも、日付、借方勘定科目、貸方勘定科目、金額、摘要といった項目が記載されます。
 ただし、相手先名や詳細な内容を管理するため、仕訳帳の補助として補助記入帳を作成します。(例:現金出納帳、当座預金出納帳、仕入帳など)
 また、総勘定元帳の詳細を記入するために補助元帳も作成します。(例:仕入先元帳、得意先元帳、固定資産台帳など)この補助記入帳、補助元帳を補助簿と呼びます。

<実務の視点>
 テキスト内容は複式簿記を前提にしていますが、青色申告等も考慮して個人事業主の方であっても複式簿記を採用した方がよいと思います。(税務メリットもありますし。)
 現在では会計ソフトを利用するため、主要簿や補助簿の名称等を覚えるよりも、A「何を、どのレベルまで」管理するのかの意思決定や、B仕訳を計上するための体制整備の方が重要と思います。
 A:一般的に情報を整理作成するための工数(コスト)と得られるメリットを天秤にかけて判断することが多いです。
 B:会計的には、販売プロセス、購買プロセス、人事プロセス、経費プロセス、財務プロセス等に区分した上で体制を整備(内部統制を整備)していきます。

②決算

<参照テキスト>
 帳簿を一定期日に締め切る手続きを決算といいます。
 決算は、・試算表の作成・決算修正仕訳の入力・財務諸表の作成といった流れです。

<実務の視点>
 決算は、月次決算、四半期決算、年度決算と区分されており、粒度・精度は会社判断で選択が可能です。ただし、上場会社は会計基準等に準拠する水準が求められます。
 決算結果は経営サイドの意思決定や出資者等への説明に利用されますが、一般的には、月次決算は、経営サイドの意思決定での利用が主となるため意思決定を誤ることのない水準の粒度とし、精密性よりは迅速性を求めた方がよいと考えます。

③試算表と精算表

<参照テキスト>
 試算表は、勘定科目ごとに仕訳の集計結果を金額で表示したものです。仕訳は複式簿記の考えから(借方)と(貸方)が必ず一致させることから、試算表の(借方合計)と(貸方合計)も一致します。
 精算表は、財務諸表作成するための、予備的な一覧表です。

<実務の視点>
 試算表の借方合計と貸方合計の確認はとても重要な手続ですが、会計ソフトを利用すると、基本的には一致している状態と思います。なので、実務上は精算表の方が重要です。
 精算表は試算表の勘定科目を集計するだけのような形で、簡単に会計ソフトで作成することも可能と思いますが、以下の場合に作成が必要となることがあります。

  • 上場等の開示基準に準拠するため

  • 連結財務諸表を作成するため

  • キャッシュフロー計算書を作成するため

 開示基準は、金商法、会社法でそれぞれ開示基準が定められているため、その基準にあわせて科目等の組替を行うことが求められます。

代表的な開示基準
「会社法施行規則及び会社計算規則」
「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」

 精算表は、場合によってエクセル等を利用して算出することになると思いますが、貸借を一致させるように片側だけの調整にならないように留意して作成する点に、特に留意が必要と思います。

終わりに

今回は一体ここまでにします。簿記一巡の手続であることから、会計理論というよりかは実務的な視点でまとめてみました。

次回は財務諸表の体系となりますが、ここで会計理論の体系もまとめたいと思います。背景にある考えを整理した上で、詳細な仕訳を理解した方が実務上も有用と思いますので、できるだけわかりやすくまとめていきたいと思います。
文章が中心の記事となってしまい大変申し訳ありませんが、お読みいただき誠にありがとうございます!!








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