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ちいさなミイ ☆57

前回の記事は『ムーミン』に関する思い出だったが、アニメと原作で1番印象が大きく変わるのはミイかも知れない。

初期のアニメ版ではミイがとても意地悪で、口煩くて、癇癪持ちの嫌なキャラに描かれているが、原作のミイはリアリストで、冷静で、頭の回転が速い。一言で云えばカッコイイのである。

因みに、原作ではスナフキンの異父兄弟で、ミイの方が年上なのだ。

でも、ミイの身長は伸びず、スナフキンのポケットに入るほど小さい。

ミイがカッコ良く見えるのは、原作者トーベ・ヤンソンの理想像だからだ。人間誰しも現実社会で暮らして居れば、言いたい事も言えない場面が多い。相手に遠慮したり、自分の保身の為に我慢してしまうが、ミイはそんな遠慮は一切考えない。

その言葉は時に辛辣であり、時に相手を傷つけるが、冷静になってよく吟味してみると、的を得ていて正しいのだ。ミイは怒りっぽく、怖いように見えるが、誰に対しても平等に怒るし、いたずらはするが、ぜんぜん意地悪ではない。

だから、原作を読んでいる人はミイを好きになるのではないだろうか?

少しミイの言葉を紹介しよう。彼女のセリフはトーベ・ヤンソンの何らかを反映しているのかも知れない。

「死んじゃったものは、しかたないわ。このりすは、そのうち土になるでしょ。やがて、そこから木が生えて、あらたなりすたちがはねまわるのよ。それでもあんたは、かなしいことだと思う?」

なんだっておもしろいじゃないの――多かれ、少なかれさ。

>いちばんいいことを希望して、いちばんわるいことがおこってもおどろくなってさ。

>逆よ、まったく逆よ。自分と向き合うにはひとりになるんじゃないわ。いろんな人と関わりあうのよ。自分の知らない、自分を知らない人たちと関わりあうのよ。見えてくるわよ、本当の自分が。

そうね、明るくしているほうが楽しいわね、明るい人にとっては。けど、暗い人には疲れちゃうわよね。だからね、楽しくするってより、楽にする、なのよ。

たまには、怒んなきゃね。どんなちっちゃな生きものにだって、怒る権利はあるんだから。だけど、ムーミンパパの怒りかたって、よくないわね。ちっともはきださないで、みんな、しまいこんじゃうんだもの

それがあんたのわるいとこよ。たたかうってことをおぼえないうちは、あんたには自分の顔はもてません。

子供の頃の私は、正直ミイの事を小憎らしいと感じていたが、好きになってしまうと、あの意地悪そうな表情も、だんだん愛おしくなってしまった。



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