見出し画像

また逢おう。もうひとつの世界で、いつか。

降りしきる雨、梅雨の始まり。同じ色の服を着た人たち。走り回る子供。きっと彼もこんな子だったのだろう。多くの人をそこに集めた彼は目を瞑り静かにそこにいた。


誰よりも面白くて、好奇心旺盛で、優しく、やんちゃなわんぱく野郎。
学校のロッカーに上ったり、すぐ変顔したり、モノマネが上手だったり。何をしても、何を言われても笑いに変えていた。
高校生活のたった三年間だったけど、思い出には必ずそこにいた。スマホをラケットにして卓球したり、制服で鬼ごっこをしてローファー壊したり。授業後に行った座敷焼き肉、田んぼ道の焼き魚、不味い家系ラーメンも。染みる商店も。
数えきれない思い出のすべてには当たり前のように君がいた。


制服で鎌倉の海に行き、濡れた翌日に教室で一人ひとり証書を受け取り、別々の道を歩み始めた日から今日まで。たまに遊んでいたものの、久しぶりに会った君は変わっていなかった。
だってこの世界で全員が揃う最後の思い出にはやっぱり君がいたんだもの。


さよならとは言えない。だってまた逢えるから。それが何年、何十年先のことかもしれないし、今とは違う世界かもしれない。
それでもまた、みんなが揃って、高校生のときみたいに面白いことしながら、思い出を話すときが来ると思う。


そのときまで、彼が長く過ごせなかったこの世界を。今を過ごすこの世界を。僕は一生懸命に全力で楽しまなきゃいけないと思う。
僕は僕であり続けなくてはならない。自分のためにも彼のためにも。
また逢ったときに思い出話するから空から盗み見するなよ。ちゃんと待っててね。
悲しい話も面白い出来事にできる日まで。
今までありがとう。また逢おう。


【あとがき】

5月28日土曜日。大切な友達が交通事故で亡くなりました。享年19歳。
本当に面白くて、みんなでいつも一緒にいた彼が亡くなったことは今も信じられていないです。お葬式で彼を見送り、火葬が終わり納骨した今でもまだどこかにいるんじゃないかと思っています。
ただ、本文にも書いた通り、もうお別れではなく、いつか別の世界で逢えます。
ですから、「さよなら」ではなく、「また逢おうね」と最後まで伝えてきました。
そのときまで僕はこの世界で頑張らなきゃな。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?