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6-3. 悪は急げ。

 TDK元社長 山崎貞一

 奇をてらった表現だが、いいたいことは通じる。
 TDKの2代目社長であった山崎貞一の実家は静岡の八百屋で、父親は働き者で一徹なところがあったという。
 学生時代に帰郷したある日、夕食を取っていると、父が外から帰ってきていきなりわめき散らした。山崎は温厚な人間だが、この時は虫の居所が悪かったとみえて、カッとなって食事中の箱膳をひっくり返し、さっさと部屋に入ってしまった。

 しかし、部屋に入った山崎は自分のした不行跡をすぐに後悔した。そこで少し間を置いてから、父親を奥の間に呼び、床の間を背に座らせて「さっきは申しわけありませんでした」と、手をついて謝った。父親は、どぎまぎして、「これから注意しろ」くらいでおさまったという。

 これを例にあげて、山崎は社員にいつも「悪は急げ」と言っていたと、同社3代目社長素野福次郎は著書の中で伝えている。

 「会社の中でも仕事で失敗したら、すぐに報告して叱られてしまったほうが、手も早く打てて楽だ。特に得意先を相手にしたミスなど、こじらせるととんでもないことになりかねないから、なおさらである。」

「悪は急げ」とはつまり、悪い結果を知ったらすぐに動け」という間違いを改めるのを躊躇するな、ということであり、「善は急げ」と同義なのである。


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