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浦賀・燈明堂と庶民の足・渡船(2)

                                          湾を横切り西浦賀と東浦賀をつなぐ横須賀市営の
                                         渡し船「愛宕丸」。対岸との距離は目と鼻の先だ。

■300年続く渡し船――海の上の横須賀市道
浦賀駅から燈明堂海岸に来るまでのちょうど真ん中あたりに、湾の対岸とむすぶ渡船の乗り場がある。
享保5(1720)年に浦賀奉行が西浦賀に置かれると、東京湾に出入りする船を改める「船番所」が作られた。江戸への出入りを厳しく取り締まる海路の関所である。そのため浦賀湾は船改めを受ける船があふれ、町には人も集まって大いに栄えたという。
 
しかし、細長い湾で東西に分かれた浦賀の町は、間に深く切れ込んだ湾が邪魔をして、わずか300メートルほどの対岸に行くために、湾をぐるっと3kmほど歩かなければならなかった。
 
そこで、享保10(1725)年、東-西浦賀の間を行き来する渡船が設けられた。
以来290年、通勤や日常生活に欠かせない交通として変わらずに運行されてきた。
 
実はこの渡船、現在は民間に委託されて運営されているが、唯一の横須賀市営の交通機関で、この航路は「浦賀海道」と名付けられ、2073号線として登録されているれっきとした海の上の市道なのである。
 
渡船場は、東叶神社と西叶神社の近くにあり(東渡船場/西渡船場)、どちらにも、レトロな待合室が設けられている。いまは機械船になっているが、昭和30年ころまでは櫓を使った手漕ぎの船だった。
 
渡船料金は何度か料金が改正されて今(2024年)は1回400円(横須賀市民200円)、小・中学生以下200円(横須賀市民100円)である。自転車も、余裕がある限りは持ち込めるようになっていて料金は50円。バイク利用者にはうれしいサービスだ。
東西間の距離は400メートルほどで、所要時間は5分ほど。
愛宕丸(4.8トン定員13人、船員1人、旅客12人)が1隻でピストン輸送している。
 
運行時間は毎日7:00~17:00頃まで(冬季/夏季で変化あり、乗船前に要確認)、時刻表はなく、客があれば運行し、いなければ、どちらかで客待ちをしている。東西渡船場に呼び出しボタンがあって、愛宕丸が対岸にいる時にはボタンを押すと迎えに来てくれる。
 
京急・浦賀駅を降りて、西浦賀を浦賀ドック、川間ドックを見ながら燈明堂まで歩き、折り返して渡し船で東浦賀にわたり、浦賀駅に戻る、歩きでのある散歩にいい距離だ。
浦賀は、鋭く切り込んだ狭い湾の両側に家が広がる町だが、湾口近くの両側にヨットハーバーがある。
ヨットと言えば、帆が不可欠だが、浦賀ドックの東浦賀の出入り口近くにおすすめのお店があった。帆布(カンバス)を利用したオリジナル製品の製造・販売をする専門店「三浦屋」である。
 
浦賀ドック-燈明堂-川間ドックと見学した後は、西叶神社に戻ってお参りし、渡し船で東浦賀へ。渡船場から、歩いて愛宕山に登り、浦賀駅に戻る道の途中で、三浦屋さんで帆布製品を覗いてみるのも楽しい時間だったが、残念ながら2023年3月に閉めてしまった。なかなかの人気店だっただけに残念だ。

船番所跡の掲示。
西浦賀の渡船場近くにある西叶神社。東浦賀には東叶神社がある。
春秋2期の大祭は、盛大に行われる。
西浦賀の渡船場


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