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047.横浜港・大さん橋-国際客船ターミナル

≪3.生糸貿易をささえた横浜の洋館・建造物022/みなと地区≫
*大さん橋は、平成14年の工事完成で、海の中に杭を打った橋脚タイプの桟橋から、海底から埋め立てた埠頭になりました。それによって、「大桟橋」は「大さん橋」と名称も変わりました。接岸しているのは英国籍のダイヤモンド・プリンセス。115,875トン、全長290m (三菱重工長崎造船所で建造)。横浜港発着のクルーズの多い、横浜ではおなじみの船です。
 
安政6(1859)年、幕府は横浜港を開港するにあたって、来航する外国の船のためにいまの山下公園のあるあたりに、東波止場、西波止場の2つの突堤をつくりました。
 慶応2(1866)年に起こった豚屋火事で、関内地区の多くの家屋が損傷したため、区画整理も行い、新たに西波止場の根元から防波堤を兼ね屈曲した突堤、象の鼻を作ることになりました。
 これらはいずれも、水深も浅くはしけ用の突堤で、船舶が接岸できる岸壁、桟橋ではありませんでした。その後、生糸を中心に輸出入が活発に行われるようになったことで、接岸できる桟橋の建造が求められ、明治22(1889)年H.S.パーマーの意見書によって横濱築港計画が実施されることになりました。
そして、明治27(1894)年、海底を浚渫し、海の中に長い脚を下した桟橋をつくり、第一期工事として作られたのが西波止場を改造した鉄製の桟橋「鉄桟橋」でした。これが大さん橋の始まりです。
 
 ■桟橋から岸壁・埠頭へ
 構造は、鉄製のスクリューパイル(螺旋杭)を海底にねじ込み、その上に桟橋を固定させたもので、パイルの鉄材はスコットランド・グラスゴーのバローフィールド社製を輸入したものでした。まだ日本では構造用の鉄材を作る力がなかったのです。官営の八幡製鉄所が創業するのは、明治34(1901)年のことです。
 螺旋の直径は約1.52m、高さ約0.7mであり、それに鋳鉄管直径30.48cm、肉厚3.55mm、長さ16.5mの杭本体がついていました。最初に桟橋を建設したときには、建設重機はありません。そのために杭はすべて人力でねじ込んだといいます。桟橋づくりと一口に言いますが、いまと違って、大変な作業が必要であっただろうと思います。
 鉄桟橋は外国航路の大型船舶が直接接岸できる桟橋として生糸貿易のみならず、綿花・綿製品、洋酒、時計、砂糖をはじめ、大型客船が多く寄港し、輸出入に大きく寄与したのでしたが、残念ながら、関東大震災で大きく損傷してしまいました。
復旧工事で採用した螺旋杭は、螺旋直径1.82m、高さ1.12mとし、杭本体は無垢の鋼柱で直径16.5cmでした。現在の岸壁型の大さん橋になる前の大桟橋に使われたものでした。

桟橋時代を支えていたスクリューパイル。これが100本近く
海底に撃ち込まれていて桟橋を支えていました。

その後は、新港地区に埠頭が整備され、山下埠頭、本牧埠頭が整備されて大型のガントリークレーンも据えられたことことからコンテナで運ばれる貨物船の利用はそちらに移り、大桟橋は客船を中心に利用されることになりました。大正から昭和の初めは、海運が先端業界、最盛期であり、大型船の来航が増え、改修が繰り返されながら、日本の代表的な客船用の国際港として利用されてきました。

両岸壁に大型船が接岸した光景。向こう側(左)の大きな船はダイヤモンド・プリンセス115,875トン、全長290m。こちら側で接岸している船(右)はぱしふぃっくびいなす、27,000トン、全長183メートル、乗客数696名で日本クルーズ客船所属、石川島播磨重工東京第一工場で建造された。ぱしふぃっくびいなすも十分大きいが、11万トンクラスと並ぶと大人と子供に見える。左に見える逆三角屋根の建物は、大桟橋から大さん橋への建て替え工事中に使用された旧客船ターミナル。

 ■送迎デッキ--くじらの背中
 そして、平成14(2002)年にそれまで桟橋だった埠頭が埋め立てられて、岸壁としてつくり替えられました。大桟橋が岸壁になった際に、それまで桟橋を支える足、土台の役割を果たしていたスクリューパイルが掘り出され、現在、大さん橋入り口の右手前や横浜橋梁の1号ドック周辺に、説明板とともに置かれています。
 平成14年に、岸壁としてつくり替えられたことで、桟橋ではなくなりましたが、名称はいまも「おおさんばし」のまま。呼び名は変えず、桟橋ではなくなったため、文字を「大さん橋」としています。
 構造は、地下1階、地上2階で、建物の長さ約430m、最高高さ約15m、幅約70m。客船の歓送迎用にある程度高さは確保しながらも、両側にある赤レンガ倉庫、山下公園側からの見晴らしを妨げないように低層に仕上げられています。設計は、イギリス在住の建築家、アレハンドロ・ザエラ・ポロとファッシド・ムサヴィ。

屋上は緩いうねりがあり、くじらの背中と呼ばれています。芝生とボードで
入出港するクルーズ船客をくつろいで送迎できるスペースになっています。

客船ターミナルとしては、約44,000平方メートル、3万トン級の客船は4隻が同時接岸可能で、渡船橋も4基用意されています。国際港として必要な税関・出入国管理・検疫施設なども備えていて、インフォメーション、発券所、客船待合スペース、店舗、飲食店などもあり、乗下船客だけでなく、一般客、観光客の利用も多いのが特徴です。また、ホールもいくつかあり、海辺のイベント会場として利用されています。
 船旅の良さは、下船時には、ほぼ船の中でイミグレーションの手続きができるので、下船用のデッキを使えば移動距離も飛行場と違って短く、スムーズに降りられる点にあります。流れもスムーズに可能なのですが、課題は発着船数が少ないために、ターミナル出口のバス便等の交通手段が少ない点です。
 屋上は、送迎デッキ、野外イベント広場として芝生と木製ボードで2つのゆったりしたうねりになっていて、くじらの背中の通称で観光スポットとして人気を集めています。

大桟橋からは、赤レンガ倉庫、ホテル・パシフィコ、ランドマークタワーなどがよく見えます。
また向かいには風力発電装置ハマウィングも見えます。
大さん橋の屋上、クジラのせなかは3塔が一緒に見られる
数少ないスポットになっています。おためしください。

●所在地: 横浜市中区海岸通1-1-4

  

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