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「空飛ぶサーカス」015 いれちがいサーカス

 あべこベサーカスとともにこのサーカスでまた、たまにあるのが「いれちがいサーカス」です。このいれちがいサーカスもまた、観客にたいへんな人気なのです。

 それはこういうぐあいにすすみます。

 ライオン使いのレオナルドがライオンたちを連れて舞台に登場します。そして、ライオン使いのムチの合図でライオンたちか演技をする……というのがふつうのサーカスなのですが、このいれちがいサーカスではそんなふうにはなりません。

ライオンたちは演技をしないのです。何をするかと言えば、足で床を叩くのです。それはちょうど、ムチのような音がするのです。

その音を合図に演技が開始されるのですが、演技をはじめるのはなんとライオンたちではなく、ライオン使い、つまりレオナルドたちなのです。レオナルドが火の輪くぐりなんかできるのかって? 当然です。ライオン使いの演技はライオンに負けず上手なのです。それもそのはず、ライオンに教えるために、まず自分で演技を覚えなければならないからです。なかでも一番うまいと評判なのがレオナルドです。

 レオナルドは、まず、火の輪をシュッと飛びこんでくぐり抜け、一回転してぴたりと床に着地してみせます。それは他のだれも真似ができないくらいのうまさで、ライオンたちでさえ、思わず拍手してしまいそうになるほどです。お客さんたちは喜び、拍手が盛大に鳴ります。

 同じように、いつもラクダを相手にしているピエロのアウグスティンがラクダの演技を演じ、そしてラクダがピエロを演じるのです。そのため、ラクダはピエロのように化粧をし、ピエロのやるようにラッパを吹くのですがその奇妙な音に毎回お客さんはお腹をかかえて大喜びです。

 このプログラムで一番たいへんなのは、馬乗りです。

いれちがいのサーカスでは、馬乗りが馬を背中に乗せなければなりません。しかも、プログラムの中では、障害を飛びこさなければならないのです。喜んだのは馬たちと観客です。このいれちがいサーカスのあったあとの2、3日は、馬乗りたちは全員ベッドでうんうんうなっています。体が痛くてベッドからでられないのです。

結局、馬の演技は中止になり、やむなく馬たちの休養日にあてられるのが普通でしたから、ウマたちはいつもこのいれちがいサーカスをやりたかりました。

 このいれちがいサーカスで、なんと言っても人気が高いのかゾウの演技です。ゾウがアクロバットとブランコをやるのです。とくにブランコは大評判です。

 まず、ゾウたちは天井近くにある台の上にのぼり、そこから鼻でブランコにぶらさがって、ブランコをゆすります。揺れが大きくなったところで別のゾウの〈ホイッ〉という声の合図でブランコを放して飛び出し、別のブランコに飛び移るのです。

別のブランコでは尻尾でぶらさがった別のゾウが待っていて、最初のブランコから飛びだしてきたゾウを鼻で受け止めます。ゾウの鼻にぶらさがったゾウは〈ホイサッ〉の掛声を合図に鼻から離れて飛びだし、一回宙返りをして空のブランコに飛び移り、さらに元の台の上に戻ってくるというわけです。

 この演技はいつも大拍手です。

 ただ、この演技はあまりサーカスとしては、やりたくないのです。失敗してゾウが落ちるたびに、下に張った網が伸びてしまい、そのたびに交換しなければならないのです。この網の代金もばかになりません。というわけで、この演技は本当に運のいい人だけしか見られないというわけでした。

 

 さて、ゾウがブランコをやっている間、アクロバットやブランコ乗りは何をしているかって? 彼らはサーカスのテントの上に乗り、宙返りや逆立ちをサーカスの中に入れない人たちに見せるのです。

 また、楽隊も楽しくて人気があります。この日演奏するのは、動物たちの楽団です。

 ライオンがバイオリンを弾き、ラクダがフルートとクラリネットを吹き、馬がトランペットを、ゾウがトロンボーンを、そしてイヌたちか太鼓をたたくのです。

 どんな演奏かって、それは想像にまかせましょう。すくなくとも、モーツァルトやベートーベンに聞かせるような演奏ではなかったことは間違いないようです。

 

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