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6-7. 不況の時ほど顧客ニーズが見える

 ミロク情報サービス会長 是枝伸彦

 好況の時には、供給者の論理がまかり通り、顧客ニーズに合わない商品でも世の中に受け入れられる。しかし、いったん不況になると、そうはいかない。買い手の選別の目が厳しくなり、本当に顧客のニーズに合わないものは売れなくなる。不況時のほうが真の顧客のニーズがよくわかるのである。

 本当のニーズでなければ売れないというのは、言ってみれば正しい状態である。その意味で、是枝は不況の時のほうが企業にとっては常態であると認識せよ、と言うのである。

 是枝は不況こそ企業にとっては常態で、好況は異常なのだというが、同じように、好況は企業にとってあまりいい状態ではない、というのは丸井の社長青井忠雄である。

「売れすぎるのはよいことではない。売れない時のほうが工夫するものだ。工夫を重ねると商売の盲点がつかめる。」

 米山や是枝など、多くの企業の業績を見ると、不況時や業績の悪い時のほうがさまざまな工夫がなされ、新製品開発や効率化が行われていることがわかる。それから考えると、売れすぎる、つまり何の工夫がなくても商品が売れる状態は、企業にとって決していい状態ではないかもしれない。
 本田が「アイデアは苦し紛れの思いつきだ」と言っていることを企業に言い換えると、「企業は不況で困り切っている時に新しい工夫が生まれる」ということになるだろう。

 理想的な状態から言えば、好況時にあっても、研究開発や商品開発、体質強化・コストダウンなどでも工夫を活発に行えばいいわけであるが、それがなかなかできないのが実状である。

 そこで、トップは好況にあっても、社員の意識を高揚し、ともするとぬるま湯につかろうとする社員をつねに叱咤激励し、あたかも業績低下、収益悪化の崖ふちにあるごとく危機感を煽らざるをえないということになる。

 自立した人間・プロとは、それを自らの意志で不断に繰り返せる人間を言うのであろう。


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