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7-3. われわれは値引きをしないから、お客さんは安心してくれる。

ミスミ社長 田口 弘

 ミスミは生産財の商社である。お客さんが部品や工具を購入する際には、価格は重要な検討要素のはずだ。ところが、ミスミは一切価格交渉をしない。値引きをしないのである。
 こんなやり方ではお客さんからそっぽを向かれるのではないかという不安をよそに、田口は、むしろ値引きをしないからこそ、お客さんは安心して買ってくれる、と言う。

「生産財の商売は、セールスマンがお客さんのところに行って、向こうの購買の人と交渉をして、顔色を見ながら値段を決めるということをやってきたわけです。そうすると、たとえば3割引きますと言っても、お客さんは『よそではもっと引くのではないか』という不信感があるんですね。われわれが定価販売で絶対に値引きしないと、逆にお客さんは安心されるんです。これを「価格保証」と言っています」

 価格保証とは言い得て妙である。
 値引きをするからお客さんがつくかと言えば、必ずしもそうではない。とはいえ、このミスミのやり方を徹底させるのは簡単ではない。

 受注は1個単位でも受け付ける。安いものでは1個8円である。
 原則として、商品の発送は、受注日あるいは翌日出荷、製作品でも受注3日後には完了させるというクイックレスポンスなのである。間に合わない場合には人間宅急便と称して、人が運んだりする。そうした努力がこの仕組みを機能させている。
 ディスカウントスーパー型しか生き残れないと考えられていた生産財市場でも、安さより、品質・納期・便利さで売る「コンビニ型」商社が高く評価されてきているのである。

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