期待する「ピグマリオン効果」 なかなか手が動かないメンバーを悩む

弟子: 師匠、今日は少し悩んでいます。部下に「これをやってほしい」とお願いしたら、「こういう理由で、やらない」と言われることが多くて、つい「なら、もういい」と言ってしまいました。反省はしているのですが、どうしても自分ができることはやるけど、どうなるかわからないようなことはやりたがらない部下に対して、もったいない気持ちが拭えません。

師匠: それは難しい状況だな、弟子よ。しかし、それはまさにリーダーとしての成長の場でもある。まず、その部下の態度をどう理解しているか教えてくれるか?

弟子: 私は、仕事なんて趣味の一つのようなもので、いろいろやって、失敗して、成功して学べばいいと思っています。そして、言われたことをやるのは、言った人を喜ばせることにもなるし、できなかったらその理由を説明すればいいと思っています。しかし、その部下は、言い訳ばかりして新しいことやチャレンジを避けているように見えます。今までの育った環境で、そうなったのかと、邪推しています。

師匠: なるほど、弟子よ。確かに、その部下が過去の経験や環境に影響されている可能性は高い。人は、失敗を恐れる環境で育つと、新しいことに挑戦するのを躊躇しがちになる。もしかしたら、その部下は過去に何かをやろうとして失敗し、その結果、厳しい批判を受けたことがあるのかもしれないな。それが原因で、今は失敗を恐れて消極的になっているのかもしれない。

弟子: それはあるかもしれません。私が思う以上に、失敗を恐れているのかもしれないですね。

師匠: その可能性は大いにある。だからこそ、リーダーとしてその部下をどうサポートするかが問われる。例えば、彼に対して失敗しても良いという安心感を与えられる環境を作ることが大切だ。また、彼が少しでも成功を感じられるような小さなタスクから始めさせるのも一つの方法だ。

弟子: 具体的には、どうすればいいでしょうか?

師匠: まずは、その部下と一対一でじっくり話をすることだ。彼がなぜ「やらない」と言うのか、具体的な理由を深掘りしてみるんだ。もしかすると、彼はタスクの難易度を過大評価しているのかもしれないし、過去の失敗が心に引っかかっているのかもしれない。それを理解することで、彼の視点に立ったアプローチが可能になる。

また、「小さな成功体験」を積ませることが大切だ。例えば、彼が自信を持ってできる簡単なタスクを与え、その成果をしっかりと評価し、フィードバックを与えることが効果的だ。これにより、彼は少しずつ自信を取り戻し、より大きな挑戦にも前向きになれるかもしれない。

弟子: 小さな成功体験を積ませる…それなら、できそうです。やってみます。

師匠: そして、彼に失敗は学びの一部であることを繰り返し伝えるんだ。失敗を責めるのではなく、それをどう改善するか、どう次に活かすかを一緒に考えるようにするんだ。これが、彼のやる気を引き出し、結果としてチーム全体の成長にもつながるだろう。

弟子: 師匠、もう一つ悩みがあります。実は、その部下は、時間はかかるものの、結局は様々な仕事をやりきっているんです。しかし、一対一で話すときは、権威を感じているのか、ただ「ハイ」と言うだけで、本音が見えません。また、「失敗を恐れるな」とは言いたいですが、言えないです。仮に言ったとしても、上の立場からの言葉だからか、彼にとっては恐れるのは当然と感じているようです。

師匠: なるほど、それは興味深い状況だ。つまり、その部下は表向きでは従順に見えるが、内心ではプレッシャーを感じている可能性が高いということだな。そして、そのプレッシャーが、彼の本音や自主性を抑えているのかもしれない。

弟子: そうですね。自分では、何とか本音を引き出そうと思っているのですが、権威勾配の影響で、それがうまくいきません。

師匠: 権威勾配というのは、どうしても存在するものだ。それを完全に取り除くのは難しいが、その影響を緩和する方法はいくつかある。例えば、彼が本音を言いやすい状況を作り出すために、非公式な場で話すことも有効かもしれない。場所や形式を変えるだけで、会話の内容や質が大きく変わることがあるんだ。もう一つ大切なのは、こちらが「聴く」姿勢を明確に示すことだ。具体的には、彼の言葉に耳を傾け、すぐにアドバイスや意見を述べず、ただ聞くことに徹するんだ。

弟子: 聞く姿勢を持つことですね。確かに、私はついアドバイスをしたり、自分の考えをすぐに述べたりしてしまいます。待ちきれないんです。しゃべってしまうんです。それが、彼にとってプレッシャーになっているのかもしれません。

師匠: その可能性はある。時には、ただ「うん、それで?」と問いかけるだけで、相手は自分の気持ちをより深く話し始めることがある。さらに、彼に自分自身の考えを尊重されていると感じさせることも重要だ。例えば、彼が提案や意見を述べたときに、その意見をしっかりと受け止めて検討する姿勢を見せることが大切だ。

弟子: そうですね。まずは彼の考えを引き出すことに集中し、その上で一緒に考えるというアプローチを試してみます。これなら、彼のプレッシャーを少しでも和らげることができるかもしれません。

師匠: そうだ。最後にもう一つ、彼に対して具体的な「期待」を示すことも忘れないでほしい。例えば、「このプロジェクトでは、君の意見やアイデアが非常に重要だ」といったように、彼が主体的に関わる価値があることを明確に伝えるんだ。これにより、彼は自分がチームにとって不可欠な存在であると感じ、自信を持つようになるだろう。これは「ピグマリオン効果」と同じようなことだと思っている。

弟子: 「ピグマリオン効果」は、期待することで、能力やパフォーマンスが向上する心理現象ですね。昔、読んだ本でそういう話があり、すっかり忘れてしまっていました。

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