警察庁(国の警察組織)ついて解説
この記事では、国の警察組織、警察庁、がどのような組織なのかを、ほとんど知らない方向けに、解説します。
国と都道府県
日本の警察組織は、「国の警察組織」と「都道府県の警察組織」の2つに分けられる。国の警察組織は警察庁のことであり、都道府県の警察組織は都道府県警察のことだ。
都道府県警察の警官と比べ、警察庁に所属する警官を、私たちが目にする機会はかなり少ない。
なぜなら、都道府県警察の警官は、現場で事務を執行するが、警察庁の警官はそれとは異なる役割を担っているからである。
この記事では、その警察庁はどんな組織なのか、また、私たちが目にしないその業務について解説する。
警察庁という組織
警察庁がどのような組織なのかを知るには、図を見るのが早い。
内閣総理大臣が国家公安委員会を所轄
上図の通り、国の警察組織の最上位は、国家行政の最上位である内閣総理大臣だ。その内閣総理大臣は国家公安委員会を所轄している。
ここで、所轄とは、監督ではあるが、指揮命令権のない監督のことだ。それは、指揮命令権のある指揮監督よりさらに弱いつながりだ。
具体的には、総理大臣は国家公安委員会の5人の委員を任命する。委員長には、総理大臣が任命した国務大臣が充てられる。したがって、国家公安委員会は合計6人によって組織されている。
また、国家公安委員会が警察庁長官を任免するのだが、総理大臣はそれに対して承認を与えるかを判断する。
他には、緊急事態における特別措置として、総理大臣が一時的に警察を統制したり、警察庁長官を直接に指揮監督することもある。
国家公安委員会が警察庁を管理
先に述べたが、国家公安委員会は、国務大臣である委員長と、5人の委員によって組織されている。
委員には、警察の職務経験を持たない、社会各界の有識者が充てられる。具体例として、2024年6月1日の時点では、委員には大学教授や元会社役員といった経歴を持つ人物が充てられていた。
国家公安委員会は以下の内容を統轄し、また、警察行政に関する調整を行う。
警察教養
警察通信
情報技術の解析
犯罪鑑識
犯罪統計
警察装備
簡単に言えば、警察庁が行う仕事をすべて取りまとめる、ということだ。
以上の目的を達成するために、国家公安委員会は警察庁が行う様々な業務を管理する。
ここでいう管理とは、警察庁の大綱方針を定め、その運営がその大綱方針に即して行われるように警察庁に対して、事前事後の監督を行うことである。
警察庁の役割
都道府県警察が交番やパトロール、刑事事件の捜査といった執行事務を一元的に担うのに対して、警察庁は以下のような役割を担っている。
警察行政に関する調整
警察制度の企画立案
国の公安に係る事案についての警察運営
警察活動の基盤である教育訓練
通信、鑑識等に関する事務
重大サイバー事案に係る犯罪の捜査の統轄
「警察行政に関する調整」、「警察制度の企画立案」の2つについて、以下で少し解説する。
警察行政に関する調整とは
行政とは、定められた法律に従って仕事をすること、または、そのサービスのことである。言い換えれば、単に、公務員の仕事のことを意味している。
つまり、警察行政とは,警察組織が警察法に定められたルール通りに仕事をすることや,その治安活動のことだと分かる。
警察庁は、都道府県警察の警察行政を調整する役割を担っているのだ。
各都道府県に都道府県警察の本部があり、それぞれの本部で警察行政が行われているから、当然、それらを調整する必要がある。
行政は普通,国,都道府県,市町村の3つが役割を分担して行われるが、警察の行政は、1954年から国と都道府県の2つが役割を分担して行われてきている.
もちろん,市町村には警察署がないというわけではない.これは,市町村長が所轄するような本部がないということだ.
警察制度の企画立案とは
警察という行政機関は,警察法という法律によって定められている。警察制度とは、その警察法のことだ。
つまり、警察制度の企画立案とは、警察法案の立案をするといくことである。
法律を制定する立法機関、国会、ではない組織が、自身を定める法律の立案をすることに違和感を覚えるかもしれない。
「なぜ自分で自分の法律を立案できるんだ?」といったように。
しかし、国が法律によって、内閣の下に警察組織を作り、内閣がその警察組織に対して、必要な法律の変更や新しい法律の立案を任せているだけである、ということを踏まえると納得できると思う。
実際、法案の提出方法は、「議員発議」と「内閣提出」の2つに分かれており、内閣提出によって提出される法案の原案作成は、各省庁において行われるものとされている。
警察庁の国際的な活動
警察庁は国の警察組織であり、他国の警察組織と連携を取っている。この連携によって、犯罪者が国外に逃亡しても、その逃亡先の国で犯罪者の身柄を拘束することができる。もちろん、その時逮捕するのはその国の警察官だが。
具体的には、国際刑事警察機構(インターポール、INTERPOL)を通じて加盟各国と情報交換や操作協力を行っている。ただ、それだけではない。
外交ルートや刑事共助条約、TOC条約などに基づく中央当局ルートを通じた捜査共助によって外国捜査機関から犯罪捜査に必要な情報や証拠を取得している。
中央当局とは、相手国が指定する機関のことだ。日本なら、法務省や警察庁がそれにあたる。
以下の図は、外交ルートとTOC条約の違いを表している。
インターポールとは
インターポールの正式名称は、INTERNATIONAL CRIMINAL POLICE ORGANIZATIONだ。先述したが、日本語では、国際刑事警察機構だ.
事務総局はフランスのリヨン市という場所にある。1956年に設立されて、2024年3月までに196の国と地域が加盟している。
主に以下のような活動をしている。
国際犯罪(者)に関する情報の収集と交換
犯罪対策のための国際会議開催
国際手配書の発行
ちなみに、国際手配書には8種類の色がある。赤、青、緑、黄、 ... 、水色(インターポール国際連合特別手配書)だ。
赤が最も凶悪な犯罪者に対する手配書だと思うかもしれないが、実際にはどの色の手配書も重要だ。
警察庁の場所
警察庁は,東京都千代田区の霞が関にある。
警察庁の近くには、他にも多くの国の機関、官庁、が位置している。総務省、国土交通省、警視庁、外務省、東京裁判所、法務省、農林水産省などなど。
まとめ
この記事では、警察庁の役割や組織の構造について解説しましたが、警察庁の具体的な業務内容についても触れました。
警察庁は国の治安を守るために重要な役割を担っており、その活動は国内外で広範囲にわたります。
この記事を通じて、警察庁がどのような役割を果たしているのかを理解して頂けたなら幸いです。
情報源
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?