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スティーヴン・ホーキング「ビッククエスチョン」NHK出版

副題は<人類の難問>に答えようとある。
100%文系人間の俺には到底理解できないと思いつつ、読んでみた。あまりにも有名だから説明はいらないとは思うが、一応整理しておきたい。

ホーキングは「世界で最も優れた科学者」として名を馳せたが、2018年、76歳で亡くなった。ご存じのようにALS(筋委縮性側索硬化症)であった。
21歳、ケンブリッジ大学院生時代にALSの診断と共に余命告知を受けた身でありながら、日々を「思いがけない贈り物」としながら生き、宇宙の謎の解明に身をささげた。彼にとって生きる力は「愛する人たち」と「ビッククエスチョン(宇宙の根源に関わる問い)」であったという。

ビッククエスチョンとは6つの問いだ。
・神は存在するのか?
・宇宙はどのように始まったのか?
・未来を予言することはできるのか?
・ブラックホールの内部には何があるのか?
・タイムトラベルは可能か?
・より良い未来のために何ができるのか?

誰だって自信をもって答えられない難問だ。しかし、彼は科学者としての見解を根拠を示しながら明確に示す。正直圧倒されるしかない。内容が膨大なので、2つに限定して書き留めてしておきたい。

1.神は存在するのか?
結論は「自然法則はあってもそれを想像した神は存在しない」である。俺の考えに近いかな? 「聖書」の世界観からは「あり得ない」ことだが、ビックバンに関係する話であるので、2の答えから導き出される。
2.宇宙はどのように始まったのか?
「無から有はうまれない。結果には必ず原因がある。だから必ず神がいる」という人間の論理思考はどこまでの人間の思考。ホーキングの分析は違う。
「宇宙にはエネルギーと空間の2つがあるだけだ。この2つはビックバンによって自発的にうまれた」
「宇宙の始まりの背後には「負のエネルギー(空間)の存在がある」
「自然法則にしたがえば、宇宙は陽子と同じく何の助けもなくひょっこり出現できるだけでなく、ブックバンは原因がなくても起こりうる。原因はいらないのだ」
「ビックバン以前には時間がないのだから、時間を遡ってもビックバン以前には到達できない。こうして私たちはついに原因のない何かを発見した」
何のこっちゃ??と思うかもしれないが、これがホーキングの答えで、しかも終止符の打たれた話ではない。今、この命題に立ち向かう事のできる理論として、M理論がある。5つの超弦理論を統合したものらしいが、ここでは触れないでおく。

ビッククエスチョンに立ち向かうにあたり、決定的な道しるべになっていたのは「一般相対性理論」と「量子論」の2つであった。まだ観測からの客観的なデータがない時代にブラックホールから放射される熱的放射の公式を見いだした(後の「ホーキング放射」)。

彼の洞察はどこまでも、一つの惑星としての地球が宇宙の中でどう生きるのか?に向けられている。戦争、温暖化を招いた人間の過ちにも重要な内容が込められている。

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