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世の中には「気弱なモラハラ」という人間が居てだな。

もはやトラウマになりすぎていてどこにも発信できずにいた話を、そろそろ消化しきれたかなーというこのタイミングで話してみようと思う。

それは数ヶ月前にようやく別れられた元恋人の話。
その元恋人とは身内の皆様ご存知、そう、付き合って1ヶ月目から数えてみると計20回ほど別れ話を持ちかけたが、その度に気弱なモラハラを発揮され別れることができなかった例の彼である。

彼との交際期間中、友人たちからは「早く別れろ」と何度も言われた。それに彼と付き合ったことで自身の評判がガタッと落ちている嫌な感覚もあったのだが、持ち前の根気強さが出てしまいなかなか別れられずにいた。自分の中での決定打が見つからなかったのだ。
なぜかって?そう、彼が「気弱なモラハラ気質」だったからである。

「気弱なモラハラ」とは、俗に言う「モラハラ」とは性質が違う。
むしろ一般的なモラハラのように「お前は本当に何もできない奴だな!」と罵詈雑言を浴びせられた方がこちらとしてはありがたいのだが、気弱や謙虚の対義語は「我が儘」ではない。つまり「気弱で我が儘」「謙虚で自分勝手」のように、対義語のように思えるそれらの気質は共存することがあるのだ。
彼がまさにそのタイプ。外から見れば優しくて物腰が柔らかい人物。私と一緒にいる時も謙虚で常に穏やかな人だった。しかし彼にとって気に入らない事象が起きるとたちまち「気弱なモラハラ男」へと変貌するのであった。

例えば彼が「スケジュールをアプリで共有しよう」と言い始めたとき、スケジュールや位置情報の共有にまったく抵抗のなかった私は快くOKした。しかし待てども待てども彼が自分のスケジュールを更新することはなかったのだ。
私も性格がいい方ではない。自分から言い始めた提案であるのにも関わらず継続して実行できない彼の身勝手さに少し腹が立った。「スケジュールを共有したいと自分から言ったんだから書いてくれないと。私だけ律儀に書いて手間が増えるのは気分良くないよ。」と何度か伝えたが、その場で2.3個予定を入れるだけで彼の態度は一向に変わらなかった。
何度も言うが私も性格がいい方ではない。2.3ヶ月経ったころ我慢も限界に達し彼の目の前でアプリを消した。すると半泣きで謝ってきた。謝られたところで彼の態度が変わらないのはわかっているので「なぜスケジュールを書かないのか理由を話して。」と伝えると「ちかちゃんの私生活が俺より充実しててプライドが傷ついて書けなかった。」と。

キャーーーーー!!えぇ?二十歳超えてそんな奴いるの?!!
私はパニックになった。「いや、しょーもな」の一言に尽きる。

「俺より忙しくね?えーちょっと嫌だわ。」
「なんか思ったより大変だったからやっぱ共有すんのやめたいわ。」
などなど、冗談っぽく言うなり若干の嘘を交えて意思表示をしたりむしろ自分の予定を増やしてみたり、自身のモヤモヤに対するアプローチの仕方は山ほどあるのに、彼は自身の傷に対して己が向き合う勇気もなければ私に伝える勇気もないのだ。

彼が地元の友達に違和感を持ち始めたころ、
「どう思う?」と相談され「んー、嫌な気持ちになるなら良くないよね。もうちょっと頑張ってみてそれでもモヤモヤするなら縁を切ったら?」とアドバイスをした。実際のアプローチ方法含め親身になって相談に乗った。彼のためになればと思って。しかししばらくして彼は友人たちと縁を切った。
そのことが彼の親にバレ怒られたとき彼は「俺は頑張ってみたんだけど、ちかちゃんに縁を切れって言われて。」と私のせいにしたらしい。私がしたいくつかのアドバイスはいつの間にか彼主導のものになっていて、彼が下した最終判断のみ私の我が儘として伝わっていたのだ。

周囲からの賞賛に執着のある人だった。
そのため大学の実習ではいつも中心人物になりたがっていた。ことが上手く進んでいるときはいいけれど、班をまとめるというのはそれなりに批判や意見も集まるもので、そういったとき批判的な声には耳を傾けようとしなかった。聞きたくない声は聞かなければ無いものと一緒だと思っていたのだろう。そんなリーダー像は周囲も望んでいない。「付き合っているから」という理由で別の班で動いている私に相談が集まってくることもあり、彼の班員への申し訳なさから個人名を伏せて遠回しに「もう少し周囲の声を聞いてあげてほしい。」と伝えたが、「いやー俺今回やる気出なくてさー!笑」と。自身の不出来に立ち向かわない人だった。

そう、つまり「気弱なモラハラ」とは、
気が弱く穏やかな人柄だが、自身の理想とは違う現実が目の前に立ちはだかったとき、戦いも諦めもせず「逃げる人」のことを言うのだ。

彼はいつだってそうだった。
声を荒げたり怒ったり、自分の欲求を伝えてくることはほとんどなかった。
「5:5でいたいから思っていることがあるなら言ってほしい。」と根気強く何度も伝えたが、いつも穏やかで無欲な様子だった。しかし関係がうまくいかなくなると途端に連絡がつかなくなり、平気で2.3時間黙りこくり、大学に来なくなる。
そう、自身の要求を提示する勇気がないため現実から目を背けることで、私に察してほしかったのだ。私に「自分の理想」を押し付け、自分が戦わずとも「自分の思い通りに動く人形」になってほしかったのだと思う。
スケジュールの件も、彼が何も言わずとも「私の方が忙しいとプライドが傷つくかな?」と先回りして考え、個人的な予定をセーブするべきだったのだろう。いや、そんなの絶対無理だけどね 笑。



ある日姉に言われた「我が儘じゃない人間なんてこの世に1人もいなくて。じゃあなんで我が儘に見える人と謙虚に見える人がいるかというと、それは我が儘の発散の仕方が人によって違うからなんだよ。」という言葉。

その言葉ですべてが腑に落ちたような気がした。

私は自分で言うのもなんだがかなり気が強い。
そんな私が気弱な彼と付き合い、色々と周囲からの反感も買った。

実際は、失恋をしていたころに彼から頻繁に連絡が来るようになり2人で遊ぶようになった。いつだって彼から誘ってくれて、場所も日程も私が乗る電車でさえも決めてくれて、失恋したタイミングだったしなんでも決めてくれるのが楽で付き合った。

しかし周囲からは、
「絶対にちかこがグイグイ攻めたんだよ!」
「他にうまくいってる子が居たのに略奪したらしいぜー。」

などなどありもしない話が広がり、よくも他人の恋路でそこまで妄想が膨らむなーと思っていた。
話し合おうとしても別れ話をしても無視され連絡を遮断され。そしたらだんだんと疲弊して戦意がなくなってきて。私が根負けしてずるずると付き合っていた事実など誰にも伝わることはない。

それはきっと私が我が儘に見えるから。
私も彼も本当は同じだけ我が儘だけど、外に向けて発散する私と察してもらおうとする彼とでは、受け取られ方が違うのだろう。

こういう話をすると必ず、
「男は本気で好きな女にはそんなことしないから!お前が愛されてなかっただけだよ!」と言い始めるモブが出てくるけど、それはそういう迷信を広めることによって得をする側の人間による嘘だと思う。

だって彼は親からの大切な連絡も平気で無視し続け、大学の友人からの温かいアドバイスや説得も無視し、馬鹿にされるのが怖くて私以外の人に相談事ができない寂しい人だったから。とても弱い人だったんだろうな。

結局そういう人は誰に対しても不誠実なんだと思う。
仮に彼が将来幸せな結婚をしたら、相手が相当犠牲的な人だったか、プライドの高さ故に幸せなフリをしているかのどちらかだと思う。

もう恨みも何もないし、いつ付き合っていつ別れたのかも覚えていないほどに朧げな愛情だったけれど、若いうちに苦い思いを経験させてもらえて本当に良かったなと思っている。おかげで私は今こんなにハッピーだ。反面教師ではあったけれど、私の周囲にいる人々がどれだけ愛情深く強い人たちなのか、それは彼に教えてもらった。

みんなも気をつけてね。少しの違和感は無視しない方がいい。
自分の心の傷を感じたら、それは間違いじゃないから。


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