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【プロ野球勝手にノンフィクション】『ショートは打たんでええ』は本当か? 第三部#2

6月21日、リーグ戦が再開され阪神は甲子園にDeNAを迎えての三連戦。初戦は先発西勇輝の好投もあり1対0で勝利。9回、小幡のサヨナラ安打で接戦を制した。これで3連勝。首位広島とのゲーム差を1.5とした。

小幡の打撃に関しては、この物語では再三、「インコース」「速球」対応が鍵と記してきたが、この試合のサヨナラ安打はDeNAウイックの150キロインコースカットボール、速球系の球種を見事に引っ張った。

それまでは、DeNA先発ジャクソンの155キロ周辺の速球に小幡はアジャストできていなかった。

第一打席は3-1からの真ん中高めの速球に対し、バットが下から出ているのか、ボールの下を捉え力のない中飛に終わる。続く二打席目は、153キロの外角速球を肘を伸ばしてミートするも手打ちで投手へのゴロとなった。結果、ジャクソンがはじき遊ゴロとなったが、「投手強襲」というにはいささか物足りない勢いの強くない打球だった。

第三打席は疲れの見えるジャクソンから四球を選んだ小幡。サヨナラの舞台は両チーム無得点で迎えた第4打席、9回、2死、1、2塁で巡ってきた。

この打席、ウィックに対して小幡は積極的だった。初球インコース149キロのカットボール、二球目のインコース低め151キロのストレートに対しスイングをかけた。いずれもファゥルとなり0-2となった3球目、小幡の頭の中には「ストレート」しかなかったのだろう、155キロ外寄り高めを冷静に見送ることができた。続く4球目。ややボール気味だったが、154キロストレートに再びスイングをかけた。

サヨナラ安打はカウント1-2からの5球目。インコースカットボールだったが、おそらく、小幡はストレートのタイミングで打ちにいったと推測する。それが幸いしてストレートよりも3~5キロ球速が落ちるカットボールにタイミングが合ったのではないだろうか。

「ストレートだったら詰まっていたかもしれない」VTRを見てそんなようにも思えた。その一方で、DeNAバッテリーの立場からすると、速い球を続けすぎたかもしれない。緩急が無かった。

いずれにしても、小幡がサヨナラ安打にした打席は、個人的にDeNAバウアーの151キロストレートを中前安打にした昨年の打席と並び意味のある一打だったように思う。投高打低が猛烈に加速するNPBで「150キロ討ち」は打者のステータスでもあるからだ。

試合後、岡田監督はさぞかし小幡を讃えているだろうと思ったが、考え違いだった。記者からの『小幡は自信になる』との同意を求めるかのような質問に対して以下のように答えているのだ。

「自信にってか、木浪がアカンようになったら小幡しかいないわけやから、そんな。そら打てんでも使うのはしょうがないわ、それは、そんなんわ」

サヨナラの場面、ベンチには原口文仁、渡邊諒も残っていたが、このコメントを読む限り、岡田監督が小幡に代打を出さなかったのは「期待感」というよりも、「代わりのショートへの不安」が勝っていたからのように思えてしまう。そして「ショートは打たんでええ」と本気で思っている、とも。

先に、デイリースポーツは、阪神が今ドラフトで大学生の三遊間野手獲得に動くとする予測報道をし、その要因の一つに「小幡の打撃の伸び悩み」を挙げていた。小幡は岡田監督のショートの打撃に関する考えなど関係なく、次戦以降も安打を量産していくしかない。小幡は木浪だけではなく編成とも戦わなければならないのだ。

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