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【プロ野球勝手にノンフィクション】『ショートは打たんでええ』は本当か? 第二部#16

6月15日、阪神はソフトバンクに2対6で敗れ二連敗。試合は、先発ビーズリーが近藤健介、笹川吉康に本塁打を浴びるなど、終始、追いかける厳しい展開となった。阪神打線はソフトバンクを上回る8安打を放ったが長打は佐藤輝明の二塁打1本のみ。前日に続き長打力の差が勝敗を分けた。阪神は再び勝率5割に戻り、セ・リーグ4位に転落した。

この日、30歳の誕生日を迎えた木浪は「8番」で出場し、3打数1安打1死球。4点を追う最終回、先頭打者で打順が巡った際も、打席を与えられたが左腕ヘルナンデスから背中に死球を喰らい、代走を告げられた。

この試合の打撃内容はさほど悪く無かった。

一打席目、二打席目はいずれも相手先発、亜大の先輩、東浜巨に対して早いカウントから積極的に打ちにいく姿勢を見せていた。安打した2打席目は、外寄りのシンカーをセンター方向に打ち返していた。これまでなら引っかけて2塁ゴロに終わりそうなコース。この打席は「レベルスイング」ができていたのかもしれない。

残念だったのは7回、無死1塁で巡った第三打席、杉山一樹から三振を喫した場面だ。杉山は150キロを超えるストレートとフォークボールを武器に三振を数多く奪う、典型的なパワーピッチャー。木浪としてはカウントを追い込まれる前に杉山のストレートを捉えたかった。

杉山と甲斐のバッテリーは、初球から3球続けて152~3キロのストレートで攻めてきた。初球は大きく外れワイルドピッチになったが、二球目、三球目はストライクゾーンに来ていた。特に二球目は真ん中高め、木浪はスイングをかけたがファールにしてしまう。

続く三球目も二球目と同じコースに見えたが低いと感じたか、木浪は見送りカウント1-2と追い込まれてしまった。そして四球目。「見え見え」のフォークを内側から落とされ、バットは空をきった。ストレート1本に絞っていたのなら、ポイントは2球目だったように思う。

木浪が30歳になり、12球団のレギュラー遊撃手で他に30歳を超えているのは、現時点でソフトバンクの今宮健太だけだ。遊撃はその激務から若手への切り替えを最も早く検討され、それにより「レギュラー寿命」が他のポジションよりも短い。木浪は今まで以上に「守備範囲」「打率」など球団内外から厳しい視線にさらされる。それほど、遊撃手にとって「年齢」はセンシティブな要素だ。

この試合終了後の木浪の打率は.209。仮に、今の低調なままシーズンを終了するようなことがあれば、球団は今ドラフトで遊撃手の即戦力補強を検討する確率は高い。「ドラフトの目玉」の一人、宗山塁(明大)への入札確率は、木浪の攻守のパフォーマンス次第、とりわけ打率が鍵を握っていると個人的には思う。「ショートは打たんでええ」という指揮官など滅多といない。

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