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【プロ野球勝手にノンフィクション】『ショートは打たんでええ』は本当か? 第三部#7

6月29日、阪神はヤクルトとの神宮での試合を1対6で落とし3位転落。6月の負け越しが決まった。試合は、先発、伊藤将司が初回に3点を失うなど終始、追う展開。打線はヤクルト先発、奥川恭太の前に走者は出すものの適時打がなかなか出ず、結果、散発6安打に終わった。

小幡はこの試合、守りで手痛い失策を犯した。0対3で迎えた3回1死、1塁、オスナの2塁ゴロの場面で併殺完成へのピボットプレーの最中に落球。小幡が試合後コメントしていたが「2塁ベースに入る際、勢いをつけすぎた分、捕球の反応が遅れた」。3アウトチェンジを一転、ピンチを広げ、結果として2失点の原因となってしまった。

この失策には岡田監督もおカンムリだったようで、試合後の記者会見で「ゲッツー取っていたらどうってことなかった」とし、小幡のプレーが試合の流れを相手に渡してしまったことを独特な言い回しで振り返った。

失策を打撃で取り返したかった小幡だったが、この日もいいところはまったく見られなかった。4打数無安打。3試合続けて安打が出ていない。

奥川と対峙した二打席はいずれも早いカウントから積極的に打ちに行っていた。1打席目は2回、二死、1、2塁の好機の場面。この打席、小幡はストレートを狙っていたのだろう。小幡の前の打者に対する奥川の変化球の制球が定まっていなかったことから、狙い球を絞りやすい状況だった。

初球144キロ外寄りのストレートをファゥルにした後の二球目。初球よりも中に入ってきた落ちの悪いフォークに小幡は「ストレート」タイミングでスイングをかけた。角度良く打球を上げたように見えたが、平凡な右飛。打ち上げると小幡の打球は伸びない。

二打席目は2球続けて外角低めのフォークボールで攻められ、2球目を引っかけて1塁ゴロで凡退。難しい球にバットを出してしまった印象だ。

3打席目は8回、二死、1、2塁、5点差を追う場面で小澤怜史と対戦した。小澤と中村のバッテリーは全8球、ストレートとフォークボールの2球種のみで攻めてきた。

結果を知るものからすれば、この打席の小幡の頭の中は、ストレートを捉える、もしくはフォークの浮いたところを捉える、この2択で占められていたはずなどと軽々に推測するが、プロ野球は素人が思うほど単純にはいかない。一発勝負の高校野球とは異なり、過去の対戦が「伏線」となるのだ。小幡は5月の対戦で、小澤の外側から入ってくるスライダーに手を焼いていた。そのことから、小幡は当然、小澤に対してはスライダーの出し入れも配球予測に入れていたと思う。

結果として、スライダーは1球もなく、フルカウントになってから4球続けて外角寄りのストレートを投じられたが、小幡は仕留めることができなかった。最後の球は144キロ、コースはやや高め。難しい球ではなかったが、狙い玉を絞りきれてなかったのか、バットは空を切った。

四打席目は8回、1死、無走者で石山恭稚と対戦するも、石山は得意のスライダーを封印。「速球系オンリー」の配球に小幡は力負けした。

全5球の球種の内訳は、初球からストレート、シュート、シュート、ストレート、ストレート。ここに、コースの徹底さが加わる。外、外、外、内、内でシュートは低め、ストレートは高めという「決め事」もバッテリー間にはあった。小幡は配球に翻弄され、詰まった1塁ゴロに打ち取られた。

この試合が終わって小幡の打率は.169にまで下がった。試合前、デイリースポーツが鳴尾浜での木浪の近況を伝えていた。骨折の経過は順調で、日々、トレーニングできるメニューが増えているという内容だった。木浪の復帰の時期は未定だが、小幡は「代役」で終わるか「奪還」できるか、オールスター前まで正念場の状況が続いていく。

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