双聖戦本戦 一回戦 第二半荘
双聖戦本戦 一回戦 第二半荘
対局者(第一半荘の結果)
Argenti(+43,2)
とらふく(-11,2)
くろべ〜〜(-32)
対局者紹介
Argenti
雀魂三麻現役プレイヤーで最強の呼び声もある。第一半荘は暴力的な強さで圧勝。面前バランス型
とらふく
配信も行っている守備型鳴き麻雀のトップクラスプレイヤー。第一半荘は終始噛み合わ無いが2着を死守。副露守備型
くろべ〜〜
リザーバーとして本戦に出場するも第一半荘は終始手が入らず苦戦。面前守備型
東一局
東一局から凄まじい内容で始まった。
早々に中を仕掛け逃げ切りをはかるArgenti。丁寧に対応して聴牌を目指すとらふく、くろべ〜〜という本日何度も見た構図で東一局はスタート。放銃してもおかしく無い牌を何度もギリギリで押し通し辿り着いた海底で待っていたのは奇跡的な聴牌。
麻雀においてはどんな事があろうと絶対切ってはいけない牌と限り無く当たり牌だと分かっていても切らないといけない牌がある。
上記の牌姿。Argentiに対して残り筋は2‐5pと6‐9sの2種。聴牌を取る6-9sは単純確率でも放銃確率50%である。さらにとらふくに対しても危険牌である。これは本来「絶対に切ってはいけない牌」である。しかし状況がそれを許さない。第一半荘の結果、くろべ〜〜とArgentiの差は75,000点以上。素点にして45,000点以上の差をつけなければいけない。この差を縮めるには現実的には親の連荘しか無い。2回しか無い貴重な親の権利は簡単に落とせない、いや絶対落としてはいけないのである。この状況があるからこそ6‐9sは「絶対に切ってはいけない牌」と「限り無く当たり牌だと知っていても切らないといけない牌」の狭間を彷徨う運命の牌へと変身を遂げているのである。
2回のポン仕掛けで対々和の可能性も僅かにある。万が一愚形待ちであればドラの9sはともかく6sは通るかもしれない。またArgentiととらふくに対しての共通安牌は無い。何を切っても放銃する可能性はある。それならば選ぶ牌は……。
長考の末、くろべ〜〜が導き出した結論は打7s。これはこの状況下では今の私には絶対に打てない牌。何しろ親は落とせないのだ。6-9sで放銃しても誰にも責められない。むしろ自然な流れでさえある。そんな事対局者は百も承知、それでもくろべ〜〜は耐えた。7sもとらふくに通る保証は無い、それでも6-9sだけは絶対に切ってはいけない牌。それを信じた。これを切るのは俺の麻雀じゃない。まだ東一局、親はもう1回ある。危険牌を切って勝負するより危険牌を止めて勝負する方が遥かに難しい。だが俺は行く。くろべ〜〜勝負師として意地の一打。
この7sが見れただけでもこの対局は見る価値があった。例え6-9sが当たりでは無くてもそう思える魂の一打だった。
Argentiの一人聴牌で流局(6-9s)
東二局 一本場
親番のArgenti 4巡目先制リーチ。入り目が7sで嵌8sの場況がよく見えさらには盤石の後引っ掛け。これに不運にもくろべ〜〜が8sで放銃。前局で魂の一打を放ったくろべ〜〜だが運命は非情である。またこ和了の裏にはとらふくの小さなミスがあった。(本来ミスと呼ぶべき代物では無いが本人がそう言ってるのでそのように表記する)
クリックミスによりとらふくなら100%鳴く1巡目南を鳴き逃し。これによりArgentiの和了を誘発してしまった。
裏1でArgenti 12,000点の加点。天も人も全てを味方に付けまさに盤石の体制。
東ニ局 二本場
これ以上の連荘は許せないとらふくが持ち前の速攻仕掛けを入れる中、くろべ〜〜が4巡目先制リーチ。とらふくが危険牌を抱え苦しい立ち回りを余儀なくされる中、リーチに立ち向かって行ったのはArgenti。勝負を決定付ける親のメンピンドラドラ三面張リーチ。これで勝負あったかに思われたがくろべ〜〜意地の七対子ツモ。枚数差をはねのけ、首の皮一枚残す薄氷の和了。
裏ドラこそ乗らないもののくろべ〜〜勝ち上がりの可能性をギリギリ残す大きな跳満ツモ和了。
東三局
そうして迎えた運命の東三局。ここでは凄まじい攻防が繰り広げられた。
持ち前の速攻で最初に聴牌を入れたのは親のとらふくだった。何度も聴牌を外し良形聴牌を狙うものの、終始噛み合いが悪く中々両面聴牌にならない。都合ここまで三度聴牌を外している。これ以上の聴牌外しは許されない。その中で辿り着いたのが嵌7s。幸い辿り着いた嵌張7sの場況は良い。親のとらふくの連荘で終了かと思われたが…。
ここでこの牌を引いて来るのが今日のとらふくだった。Argentiとの差は8,200点。ここでArgentiへの放銃だけはできないのだ。切り出しから5-8pはかなり危険牌に見え、何より今日のとらふくは終始噛み合いが悪かった。その流れの悪さは本人が一番感じていたのだと思う。8sを切ってローリング。ここでこの8pを切らないからとらふくはこの場所に立っているのだ。
すで既に聴牌を入れているとらふくに追いついたArgenti。勝負というものは不思議なものでArgentiにも勝負の選択が迫られていた。ここで両面の聴牌形なら何も迷う事は無かったがギリギリの勝負の中、嵌張待ちの選択を迫られる。3p待ちと5p待ちでは瞬間的な和了やすさはドラ待ちとはいえ嵌3pに分がある。ただ嵌5pの聴牌にとった場合はやや薄いが7pを引いて両面の変化がある。ここも非常に難しい選択。Argentiが取った選択は…
この打6pがとらふくの聴牌外しローリングを誘発。結果的にくろべ〜〜の7sを助ける事になってしまう。ここで打2pだともしかしたらとらふくは8pを押していたのかもしれない。それは神のみぞ知る世界。
Argentiにとって痛恨となった両面変化逃し。ここで5-8pの聴牌を取れていれば…。そして…
とらふくとArgentiが足踏みしている中、虎視眈々と反撃の機会を伺っていたくろべ〜〜。「知ってるか?麻雀は3人でやるゲーム何だぜ?」何処からかは分からないがそんな声が聞こえた気がした。
Argentiの和了牌を暗刻に引き入れてドラ6渾身の勝負のリーチ!
ドラを暗槓しArgentiの和了を潰し、勝負のリーチは一人旅へ。槓ドラも2枚乗りドラ9へと成長。当たり牌の中はArgentiと持ち持ち。もう片方の1mは………2枚いる!ただもう時間が無い。感情が追いつかない。この待ちが王牌に眠っているなんてそんな事が…そうして迎えた最後のツモ。そこに1mはいた!
思えば東一局の7sから物語は始まっていた。大きな大きなくろべ〜〜反撃の数え役満ツモ!
南一局
痛恨の役満親かぶりとなったとらふくに勝負手が入る。2s,3s,6s以外全ての索子で聴牌。点数状況からして5sを引き入れればリーチさえある牌姿である。
そんなとらふくを尻目にくろべ〜〜悠々と親倍ツモ!手順に9pを処理していたので待ち選択も迷わない流れの良さを感じる和了。この和了でこの半荘のArgentiとの差は49,200に。ウマ、オカを含めるとなんとトータルスコアで4,000点逆転!あれだけ遠かった背中が…たった2局の出来事である。
南一局 一本場
少しでも加点しないと追いつかないとらふくが6巡目先制リーチ!メンピンしか役は見えて無いがこれぐらいは和了らせてくれ!という願い虚しく流局。ドラ3のくろべ〜〜ははやる気持ちを抑えて丁寧に打ち回す。Argentiは苦しい時間帯が続く。
南一局 二本場
打点が欲しいとらふくの暗槓が入る。新ドラが乗ったくろべ〜〜。暗槓が入っているのでリーチをかけたくなるが少しでも和了率を高めるために慎重にダマを選択。地味なようだが暗槓が入っている状況のダマは非常に有効。この局面においても冷静さを感じる選択。ピンフツモドラ3!見事なツモ和了。
南一局 三本場
Argenti 3巡目リーチにくろべ〜〜が一発で振り込み。この手がもう少し早く入っていればこのような惨劇は防げたのに…。Argentiの立場に立ってみればそう思わずにはいられない和了。裏ドラ乗らず2,600の和了。しかしこの和了は実はとても大きい和了だった。逆転を許しトータルスコアで17,600点差をつけられていたくろべ〜〜との差を11,200点差までに詰め寄る。
南二局
これが勝負のアヤというものか。南2局はArgentiとくろべ〜〜の七対子ドラドラの同時性の対決になった。くろべ〜〜が先に聴牌をいれるものの中々待ちごろの牌が来ない。そうこうしてるうちにArgentiがまさかの4枚目7pを掴み無念の放銃。待ちの悪さから一転、最高の6,400直撃!トータルスコアを24,000点差に広げてオーラスへ。
オーラス条件について
オーラスに入る前に対局者の勝ち上がり条件を確認する事にする。
ここまでの成績(このまま終了した場合)
Argenti+43,2 -24,4=+18,8
とらふく-11,2 -50,4 =-61,6
くろべ〜〜-32+ 74,8=+42,8
二回戦トータル同点だった場合が明記されていないが決勝は追いつき有利(直近の順位が良い方が勝ち)なのでそれに準拠する
くろべ〜〜(現在84,800点)
→Argentiに45,200点以上の差をつけてのトップが条件でこのまま終了すれば達成。現在トータル換算で24,000点リード。Argentiへの倍満以上放銃が敗退条件(跳満放銃の同点はくろべ〜〜勝利)。リーチ棒が出てしまうと跳満以上放銃に条件が緩和されてしまう。
Argenti(現在15,600点)
→くろべ〜〜から倍満以上の直撃か役満ツモ、とらふくから役満の出和了。リーチ棒が出れば条件が1役軽くなる。
とらふく(現在4,600点)
→とにかく連荘してトップを取るだけ。Argentiとの差はトップを取れば自動的に解消される。
ここまで書いて来たがこれは時間が潤沢にある中で計算したから出来た事であって対局者が慣れない条件戦の中で、限られた時間しか無い対局中に正確に計算するのは困難だった。実際にオーラスにあたって対局者の3人中2名が条件を勘違いしていたのだった。
くろべ〜〜
→Argentiと初戦でトップラスを決められており、Argenti 2着である現在の点棒状況で条件を達成しているかどうか本人目線では不明瞭だった。まだ加点が必要かもしれないという認識でオーラスを迎える。
Argenti
→オカ分の15,000点を計算から抜かしており現在の差が9,000点と錯覚。満貫直撃か跳満ツモか跳満出和了りと条件を大きく勘違いをしてしまう。ちなみに私も観戦中は同じ勘違いをしていた。公式の告知方法がやや親切では無いのかもしれない。
正確に条件を把握していたのはとらふくただ1人。これがオーラスの選択において通常ではあり得ない選択に各対局者を誘う事なる。但しこれがこの対局の価値を損ねるものではないという事は強く書き添えておく。あくまで対局当時の対局者の打牌意図を正確に伝える為にあえて明記した。
南三局
跳満ツモ条件と錯覚していたArgentiから早速先制リーチが入る。手役はリーチとドラ1しか無いが赤5p一発ツモや抜き北からのリンシャンツモで跳満の可能性が発生しているのでここはリーチの一手。
条件が不明瞭な認識であるくろべ〜〜も丁寧な回し打ち方から振聴を引き戻し最終形の三面張でリーチ。Argentiをラスに落とせば突破は確定だ。
運命の悪戯とでも言うべきか。この瞬間、リーチ棒の供託とくろべ〜〜がどんな危険牌(ダブドラの赤5p)でもツモ切らないといけない状況が同時に発生し、絶望的と思われたArgentiに現実的な跳満直撃での逆転条件が成立していた。(くろべ〜〜から赤5p直撃で裏1必要)
決着は瞬く間に訪れた。絶対に聴牌が必要なとらふくから放たれる2p。リーチの道中で北を抜いていたArgentiは裏3が乗りやすい手格好である事と、終盤に差し掛かり逆転の機会はこの瞬間しか無いという事でロン和了を選択。結果は裏1の満貫。Argenti無念のトータル2着。
最終結果
二回戦トータルの結果は下記の通り
Argenti+43,2 -15,4=+27,8
とらふく-11,2 -58,4 =-69,6
くろべ〜〜-32+ 73,8=+41,8
非常に息の詰まる熱戦でリアルタイムで見てた時は思わず感動してしまいました。ここに書ききれて無い細かい攻防も本当に凄かった。
私には絶対に切れない東一局海底打7sから始まった物語はくろべ〜〜の勝ち抜きという結末に終わり、くろべ〜〜視点の物語とした見た時はこの上ないカタルシスがあった。
但しこれはくろべ〜〜だけが主役では無く、トップレベルの打ち手が3人揃い極限に近い精神状態だったからこそ生まれた名局だと思います。
三者三様に持ち味を発揮しとても良かった。私もいつかこんな、見てる人を感動させるような麻雀が打てればと思いました。
三人ともこんなに素晴らしい対局を見せてくれて本当にありがとうございました!どこかでまた会いましょう!
使用牌譜
https://game.mahjongsoul.com/?paipu=240211-d2eb21e0-93e3-499f-8e62-253dfd57b405_a798824100
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