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休職新聞 書評欄

先週から今週にかけて読んだ本、漫画の感想など。

【漫画】
こざき亜衣先生の「セシルの女王」(既刊5,巻まで、3月には6巻発売予定)
エリザベス1,世とその第一の忠臣であるウィリアム•セシルの生涯を丁寧に描いている本作品。処刑シーンなど容赦無いところもあるけど、人の営みや心をここまで丁寧に一人ひとりの登場人物に注げるものかと毎号関心しつつ、最新号は中盤から涙が止まらず。歴史好きもそうでもない方にも読んでいただきたい1冊。

【文芸】
「82年生まれ、キム•ジヨン」ちくま文庫 
チョ•ナムジュ

単行本がでた頃、新鮮な気持ちで読んだ本の再読。
この本について発売された2016年から8年が経った今でも韓国も日本もあまりデータ的には変わっていないと感じた。
 例えば、最新のOECD参加国のなかで男女賃金格差のワースト1が韓国、ワースト3が日本。ちなみにワースト2はエストニアだ。
出典リンク OECD諸国の最悪の男女賃金格差 - 2024 (history-hub.com)

もちろん、日本では女性だけが割を食っているわけではなく、氷河期世代(自分も該当しますが)の男性が役付、管理職どころか正社員にすらつけないという現実もある。結果、子供どころか家庭をもつことをためらう人もいる。
 本ではキム・ジヨンの祖母、母の時代から、ジヨンが生まれ、少女時代や学生時代、社会人、結婚というライフサイクルの中で徐々に精神を蝕まれていくさまが描かれているが、ジヨン氏以外の女性たちにも共感するところが大きかった。

特に、ジヨンの姉であるウニョンの進学について教職系学部を進める母娘のやり取りはすごく、リアルに感じた。

しかし、母を責めることもできないなというのが実感。学ぶ機会すら奪われた母が、娘に結婚や出産を経ても安定した職を選択肢として残せるようにしてあげたいというのは、母親なりの優しさと感じた。

 また、ウニョンやジヨンを母・祖母世代は今でいう「ワンオペ」育児が普通であり、内面化してきた世代でもあるので。

 そしてこの人たちの娘(孫娘)たちも知らずしらずのうちにジェンダーロールを内面に踏襲しているのが切なくもあった。
 また、ジヨンが妊娠中の通勤で同性から非難されるシーンも、同性から疎まれる悲しさとやるせなさを感じた。

 日本ではこういう時、既婚・未婚、子供の有無など女性内の対立軸を煽る表現が多いのが残念だが、本作品では妊婦ジヨン氏にすっと感情移入できた。妊娠、出産を過剰にエモーショナルに作者が扱ってないからだろうか。
 日本も韓国も「母性」という言葉をうまく使って女性を拘束してきたことを改めて感じた。

いままた再読をおすすめしたい1冊。

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