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《富倉米搗唄》~山村で歌われた精米作業の仕事唄(長野県飯山市)

富倉は、飯山市の北部、北信濃から越後へ抜ける交通交易の重要なルート沿いの集落でした。この富倉には数多くの民謡が歌われていました。この《米搗唄》は今では見られない精米作業の仕事の唄です。


唄の背景

古い時代の米搗きは、臼の周りから杵で搗いたり、地面に固定した唐臼にシーソーのように足で踏んで搗いたりする作業があったそうです。この富倉では「六人搗き」といい、臼の周りで6人で順番に搗いていく作業であったといいます。こうした単調な作業では唄を歌って作業効率を上げていったのでした。

富倉集落の風景

こうした仕事唄は盆踊り唄のような調子がよくて、楽しいものが歌われたようです。この富倉の唄も甚句系の7775調の唄が歌われていました。


音楽的特徴

拍子
2拍子系

音組織/音域
民謡音階/1オクターブ

富倉米搗唄の音域:1オクターブ

歌詞の構造

 基本の歌詞は7775調の甚句形式です。

〽︎今年ゃ豊年 
 穂に穂が下がる
 桝は要らない 
 アリャ箕で量る
[返し]
 要らない 桝は
 桝は要らない 
 アリャ箕で量る
 (トントントントント)

第3句目のあとに「アリャ」というリフレインが入ります。これは「コリャ」とか「ホラ」「エーコリャ」といった即興的なハヤシ詞で歌われます。
また、一通り歌ったあとには「返し」が付きます。これは各地の古風な盆踊り唄にあるように第3句目の3文字と4文字を入れ替えて歌い、続けて下の句を一通り歌います(「返し」を付けない場合もあります)。
旋律は上の句と下の句はほぼ同じメロディですが、歌い手によってリズムの相違等、ヴァリアンテが見られます。

演奏形態

掛声
※かつて民謡歌手によるLPレコードに吹き込まれましたが、その際は尺八伴奏が付けられました。

下記には《富倉米搗唄》の旋律の楽譜を掲載しました。

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