小さな男 その7
初恋の女性と二人きりでデート
こんな素晴らしいことがあるだろうか
海辺の砂浜
踊るように舞う彼女は
まるで天使だ
「新庄さん」
新卒で入った僕を彼女はいまだ
名字で呼ぶ
この場所に行こうと言ったのは彼女
僕を選ぶ理由なんて見当もつかない
「綾香さん」
職場の同僚は皆彼女をそう呼ぶ
「不思議」
「空があんなにも赤い」
赤い空、夕焼けが彼女を照らす
僕のほうを振り返る彼女
彼女の目には何が映っているのだろう
ただひたすらあなたを見つめる
僕の心の奥底だろうか
彼女の足がゆっくりと波に浚われる
夕焼けは儚く闇の帳が落ちてゆく
彼女に近づき抱きしめる
彼女は僕の手の中に温かく包まる
そうすべきだと思ったから
ただそれだけの想い
今この時
潮騒だけが聞こえる
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