小さな男 その3
彼と出会ったのは薄闇に暮れる公園だった
私は学校から帰り直ぐ様かけ出した娘の
迎えに行った時
公園の街灯の明かりの中の
ベンチに居座る黒い影
娘は暗い中楽し気に友達と砂場で
遊んでいる
「愛美」
娘に声をかける
娘は顔を上げ声のするほうに振り返る
「日が暮れるぞ、今日はおしまい」
名残惜し気に友達とあいさつを交わす
ゆかりちゃんだったか
娘に手を振って娘もそれに応える
「気をつけて帰りな」
ゆかりちゃんはこちらに向けて礼をする
賢い子だ
「愛美」
「帰ろう」
娘が横に縋るように並ぶ
「今日はすき焼きだって」
「すき焼き」
「ママが待ってる帰ろ」
ふと目にする黒い影
公園の灯の明かりの中
彼はまだそこに居る
娘の手を握る
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