小さな男 その2
昨日見た夢をあなたは覚えている?
彼女は僕を見ずに
グラスを手に語り掛ける
暗闇に映し出される店内の明かり
「昨日は大きな鳥の夢を見た」
僕がそう言うと
彼女はふっと色めくように聞き流す
店内で流される
ピアノのうたごえが沈黙を埋める
好きな曲だ
白いテーブルクロスに並べれられた
厚切りの肉をどうにも使い慣れない
フォークとナイフで口にする
私が見た夢
それはあなた
彼女の横顔をじっと眺める
彼女の目はどこかぼんやりと
グラスに注がれる
あなたは死んだわ
殺されたの
「誰に?」
知らない
知らない誰か
よくない夢かしら?
そういうと彼女はグラスに残ったワインを
一気に飲乾した
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