小さな男 その9
おちち
どこへ行ったの
いつからだろう
彼女は彼のことをそう呼ぶ
大丈夫
パパは帰ってくるよ
朝の陽ざしが台所の脇まで
その日を伸ばす
あの事があってから一か月半
何も変わらないように
そう努めてきた
これから先どうなるのだろう
いつもの時間
そろそろバスが来る頃
「明美、バスが来るよ」
明美は短く切った髪に
黄色い帽子を被せる
「いってきます」
「いってらっしゃい」
私達はいつだって
あなたが帰ってくるのを待ってる
今日の天気は晴れ
何も変わらない日常
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