「誰のためにアートを作ってるの?」からはじめる現代アート入門
初めましてカワムラ シュウイチともうします。アーティストです。
この度土曜会というアートの勉強会のデイレクターをすることになったので、少しアートについての文章を書いておこうと思い、筆を執った次第。
何について書こうか考えていたのですが、まずはアート入門として「誰のためにアートを作ってるの?」をテーマにアートの分かりづらさとその理解について書いていこうと思います。
現在のアートは、アートワールドという大きな校庭でサッカーをしている人がいたり、野球をする人がいたり、おにごっこをするひとがいたりするような状況です。つまり、複数のルール。価値、評価のつけ方のゲームがアートの中にあるということです。よくアートについて ルールなどなく自由に表現するものであると言われることがありますが半分正解で半分違います。それはアートワールドのいくつかあるアートのやり方の一つに「ルールなどを設定せずに自由に表現する」というルールがあるということなんです。このようなアートの複雑さがアートの敷居を上げている要因になってるんです。
そこでこの複雑さ、分かりづらさを解消する手助けとして、「誰のためにアートを作ってるの?」を理解することでその輪郭がとらえられるのではないかと思い、分析ツールを作りました。見る側の人たちは作品の理解の手助けに、作る側の人たちは自分の立ち位置を客観的に理解するために役立ててもらえるとありがたいです。
「誰のためにアートを作ってるの?」は大きく5つに分類できます。
・アートのため
・社会のため
・自分のため
・大いなる存在のため
・お金を出してくれる人のため
それぞれを細く解説していきます。
アートのために作品を作る
これは何かの代用としてではなく純粋にアートを作る。アートの歴史を更新したり、新しいアートを作ろうという考えるタイプです。
モダンアートとはこのルールに基づいて作られています。(アートにおける)モダニストとはこの思想の強い人を指します。
社会のために作品を作る
これはアートの中に閉じこもるのではなく、アートの外にある問題をアートの積み重ねられてきた技法や方法を使って鑑賞者に問いかけようとするタイプです。アートのために作品を作ることの限界(いろいろの方法がやり尽くされたためこれ以上新しいものが出ない)を乗り越える手段として80年代ぐらいから表れだした考え方です。社会というとどうしても大きなものを考えてしまいますが、簡単に言うと自分以外の誰かに向けて作品を作り相手の考えや心を揺さぶろうとすることが目的になっています。(アートにおける)ポストモダニストとはこの思想の強い人を指します。
自分のために作品を作る
自分の中にあるモヤモヤを発散するのにアートは有効的です。アートセラピズム的な考え方から自由に表現するなどもここに入ります。
自己表現的というか「作品=私」な人もこのタイプですね。あとは単純に楽しいから作るです。作ることの楽しさは作り手として誰しもが持つものだと思います。
大いなる存在のために作品を作る
大いなるもの(大自然とか)との対話であったり、神が降りるであったり、夢でお告げがあったりなどいろんな意味でやばい感じですが、
宗教画のことを考えると伝統的なものとも言えます。何よりこの考え方の強い作家の作品に圧倒されることが多いのも事実。
お金を出してくれる人のために作品を作る
アートとお金をセットにするとどうしてもネガティブなイメージを持たれがちですが、歴史的な意味でもむしろこっちの方がスタンダードといえます。欲しいと思わせるもの、価値があるものを作りそれを売る。職業としてのアーティストとしてを成立させることはとても大事なことです。(ただそれが全てになるとそれはそれで、、)ちなみに村上隆やジェフ・クーンズ、ダミアン・ハーストは高度資本主義の中で自分の作品の価格を最大化させるというルールでアートをしていた人たちです。
これらのどれかに当てはめるのではなく、これらをベースにしたパラメーターでそれぞれにどの程度の割合かを考えるのです。
ここで注意しなければいけないのは、5つの分類はそれぞれを否定するためのものではありません。先に説明したようにアートは多様なルールがあります。今回の目的は違いを理解することにあるのでそうなっているんだと思っていただけるとありがたいです。ちなみにカテゴリーに当てはめるのではなくパラメーターを採用している理由は、作家によっては別々のルールを同時に扱ったり、作品ごと、プロジェクトごとに使い分ける作家がいるためです。(ちなみに僕は同時に複数扱うためになるべく多くのルールを取り扱えるようにしようとします。単純に鑑賞の幅が広がるので展示を見に行くのが楽しくなるというのもありますが、、)
試しに僕の「誰のためにアートを作っているのか」を分析してみました。
うーん、、圧倒的に大いなる存在との戯れが足りない。作品にノイズがないって言われるのはこれが原因か、、
次に未来へ号でおなじみ、かっぱ師匠こと遠藤一郎さんも勝手に分析してみました。
大いなる存在(未来)に対して作っているから、あのよくわからないけどすごい感じと圧倒されるヤバさなんだと分析できましたね。なるほど。
このように色々活用できると思うので使ってみてください!次回はこのツールを使った応用編です。「アートのために作品を作る」「社会のために作品を作る」について掘り下げます!
土曜会は今回のようなアートを分析したり、お互に持っている知識の共有、つながり作りの場として3か月に1回開催している会です。アーティストに限らずいろんな方が参加されてます。 堅苦しい感じではないのでご興味ある方は是非!
土曜会 art study meeting
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参考資料
分析ツールを作るきっかけになった記事。
www.realtokyo.co.jp/docs/ja/column/outoftokyo/bn/ozaki_259/
参考書籍
アート:“芸術”が終わった後の“アート” 松井みどり著
http://www.amazon.co.jp/dp/4255001324
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