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【びねつさんに聞く】全力で趣味を探求したらクリエイター支援に至っている話

カスタムオーダーのCustoMee(カスタミィ)に作品を展開いただいているクリエイターさんが、なぜクリエイターになったのか、今どんな活動をしていて、今後何を目指すのかを伺うシリーズ。

第4弾はびねつさんにインタビューしました。ピクセルアート作家としてのご自身の活動はもちろん、「みんなのステッカー屋さん」としてクリエイター支援も始められているびねつさん。どのような背景で現在の活動に至っているのかお伺いしました。



1. クリエイターになるまで

ーー最初は理系のキャリアからスタートされたと伺いましたが、キャリアパスについて教えていただけますか?

大学院までは生物系の研究をしていたのですが、就職先は自動車業界のサプライヤーでした。なぜ自動車業界に入ったかというと、大学で行っていた研究とは、仮説を立てて検証して思ったことを文章にすることなのですが、企業は分業になるのでより狭い部分での活動になってしまいます。
研究室の中に籠るだけではなくて、展示会など外に出る場で広く活動したいと考えていました。そういう点で、自動車業界は基本的にグローバルですし、裾野が広くて関連企業も多い業界で働いてみたいという観点から、最初は自動車業界に入りました。

ーーなるほど、そんな考え方で自動車業界に入られたんですね、そこからクリエイターになるまではどのような過程だったのでしょうか?

企業にいる限りはどうしても会社の指示に縛られてしまいますよね。自分の興味があって研究できることもやってみたいな、と思ったんです。簡単に言うと全力でできる趣味みたいなことですね。その一環で絵を描き始めました。
絵以外にも学生時代にテニスや軽音楽など、色々と取り組んだことはあるのですが、ひとりじゃできないですよね。一人でできて深く探求できるのが絵かなと思って始めました。

ーー絵を描き始めて、現在のドット絵のスタイルになるのはいつごろですか?

絵は最初からドット絵でした。最初にプレイしたゲームがポケモンなんですけど、最初のドットから3Dまで全て見ていて、ドットはすごく心に残っているんです。初めてゲームしたワクワク感もありますし、ドットなので自分の脳内で補間する感じが魅力的でした。その自分の心が動いた瞬間を作ってみようという感じでドット絵を描いていました。

ーーとすると、最初はポケモンを描いたんですか?

最初は風景から描き始めました。グラデーションの色を載せただけでも空になりますし、そこに白い丸を置いたら雲に見えますよね。キャラクターを描けるようになったのは比較的最近です。

ーーそうなんですね!ドット絵はいつごろ描き始められたんですか?

2018年か19年ごろでしょうか。その頃はまだ会社員でした。2020年に今のアカウントを作って、イベントなどの活動も始めたかったんですが、その頃ちょうどコロナ渦で。多くの方と同じく自分のキャリアを考えたときに、作家として独立しようと決めたのが2021年です。
フリーランスになって仕事として考えたときは、今のままではいけないな、という感じでした。周りの環境で何とかなることはなかったので、自分で何とかしないといけないと腹をくくった感じです。
ちょうど色々な節目で、身内が病気になったり、実家にいて手伝った方がいい状況もあったので、自分でやっていこうという気持ちが決まったタイミングでした。

2. クリエイターになってからの活動

ーーそこから最初の動きとして、どうやってお仕事を獲得されたんですか?

まずは基本的に動いている人に聞いた方が分かるので、相互フォロワーさんの展示に行って話を聞いてみたり、展示会場やギャラリーのスタッフさんに話を聞くことから始めました。
自己紹介をして、その方の活動についてお話を伺って、返ってきた答えと自分の活動の差分を見つけていました。動きとしては今とあまり変わらないですね、今の方がそのコミュニケーションの中で、自分の経験として話せることが多くなったくらいでしょうか。
タイプが違うとみんな色々な生活をしているので、誰からでも学べることがあると感じています。展示会やイベントに足を運んで話をするスタイルをずっと行ってきたのですが、繰り返すほど広がっていくのが良いですね。

ーー仮説検証を繰り返しながら進めていく感じと似ていますね。ご自身の経験としていま一番伝えられていることは何ですか?

経験として伝えることの集大成が「みんなのステッカー屋さん」の活動かもしれないです。
(編集注記:みんなのステッカー屋さんでは、現役で活躍している様々な作家さんのステッカーをイベント等で販売されています。)
色々お話していったら顔見知りの方が増えて、結果として「みんなのステッカー屋さん」に参加していただいているクリエイターさんが気づいたら100名を超えました。
なので、顔を合わせたコミュニケーションから始まった活動ですね。イベントにすでに出展されている方との繋がりがあったうえで「みんなのステッカー屋さん」にも出してもらうという流れになっています。
各クリエイターさんはご自身の活動の流れがあるので、それにお互いが合う位置にいることがポイントです。

3. みんなのステッカー屋さん

ーー「みんなのステッカー屋さん」についてもう少しお伺いしたいのですが、取り組みを始めたきっかけは何でしょうか?

一番最初は、単純に関わりのあるクリエイターさんのステッカーとかグッズがほしいなと個人的に思ったんです。でもイベントに一つ一つ行ったり、逆に持ってきてもらうのは面倒ですよね。お客さんが多ければクリエイターさんは面倒ではないし、お客さんもより多くのクリエイターさんのグッズが揃っている方が魅力的に見えるのではないかなと考えました。
この活動は最近始めたばかりで、去年11月のデザフェスでクリエイターさんをスカウトしたんですよ。デザフェスに出ている人に、次のデザフェスでは「みんなのステッカー屋さん」のブースでもステッカー出しませんかって言った方がやりやすいですよね。

ーー今はイベントの活動がメインかと思いますが、将来的には常設店を作るなどの構想などあったりするんですか?

当初は、ゆくゆくはショップにしたいなと思っていたんですが、今は常設のショップにはこだわらず、この取り組み自体が続いていくことが大事だと思っています。ショップを続けることと、このコミュニティが続くことは、たぶん別物だと思っています。
常設店を持つと、その土地の環境など動かせない要因によって変化しないといけない部分があると思っています。逆にポップアップだと、毎回環境が変わるからこそ、自分を確固たるものにしないといけない、「みんなのステッカー屋さん」の理念みたいなものが固まっていくと思っていて、今はポップアップで続けていくのが良いかなと考えています。

ーーなるほど、ちなみに現在の理念は何でしょうか?

「作家の継続的な活動を実現する」です。
ステッカーだと安価で手を出しやすいし、クリエイターも出しやすいということがあります。
リスクが少なくて売り上げが立つし、お客さんが買ってくれるという行動は明確に強いアクションなんですが、それがクリエイターに届くという点が大きいと考えています。
SNSの「いいね」が一つ付くことと、ステッカーが一つ売れることは、クリエイターにとっては重みがかなり違うんですよ。お客さんがお金を出して買ってくれる重い行動、でも気軽に買いやすいということを考えるとステッカーになりました。
イベントにいらっしゃるお客さんって、買ってくれたりリピーターになったりするので、お客さんがその場で買ってくれたという体験をより多くのクリエイターさんにしてもらえたらいいなと思っています。

クリエイターとして仕事をするにあたって、企業さんからの依頼でお仕事をするクライアントワークと、イベントに出てお客さんにグッズを販売するという物販がありますが、物販の方が難しいんです。
自分でずっと売っていかないといけないし、在庫リスクも抱えるし…。クライアントワークは収入面でも良いし影響力も付くのでやりたいと思うことも多いと思います。
ではなぜイベントに出るんだろうと考えると、ファンの方と交流できて自分のグッズをどんな人が買ってくれるのかが明確に見えるという点にあると思っていて、色んなクリエイターさんにイベントの良さを知ってほしいと思います。

ーーステッカーを出されたクリエイターさんには、どのようなフィードバックを行っているんですか?

精算書をお送りするのですが、全体のクリエイターさんで平均売り上げがこれくらいで、相対的にどのくらいの立ち位置かということをお伝えすることもあります。もちろん関係性が大事なのですが。

「みんなのステッカー屋さん」は全部委託販売なのですが、割合にして三分の二くらいは東京以外の方です。首都圏だと半分くらいでしょうか。遠方の方も結構いらっしゃるので、まずは委託販売でちゃんと売上げが立つということを知ってもらって、次は遠方から来て販売して売れる重みを知ってもらって、次のステップとしてイベントどうするのかということも考えられるといいですよね。

一応方針として、地方と東京とか都市部のパイプを強くするというのはあるんですが、具体的にパイプをどうやって太くするのかとか、それがどう繋がっていくかなどはまだ模索中です。

クリエイター支援をしていると、キャリアをどう設計するかということが大事だと感じています。
例えば企業案件でも、ただ案件があるから絵を描いているだけでは単発のバイトをしているのとあまり変わりないですよね。あとはSNSでの作品の見せ方でも、例えば一次創作のアカウントで二次創作は出さない方がいいとか、対象年齢のゾーニングをしているかとか、そのあたりのサポートは必要だと思うのですが、実際どこまでやるのかというとまだまだ試行錯誤中です。

4. 今後の活動について

ーー今後の活動についても聞いていきたいのですが、個人の活動と「みんなのステッカー屋さん」の活動と、それぞれ今後どのように動いていきたいなどありますか?

個人の活動は、これまでと同じく絵を描くことの探求を引き続き行っていきます。「みんなのステッカー屋さん」の方は集団なので、参加されているクリエイターさんのサポートをする形ですね。
すでに120名ほどいるので、どんなサポートの形になるかはこれからです。マネージャー的にお仕事を選ぶサポートを行うのか、お客さんに対してどんな作品を提供するのかを考えるのか、組織の中で割と役割分担は出来ているのですが、具体的な動きについてはこれからです。

ーー引き続き参加するクリエイターさんは増やしていく予定ですか?

そうですね、増やしていきます。すでに顔見知りである程度お互いに知っている方がいま参加されているんですが、次回11月のデザフェスでは公募で初めましての方も何人か入ってくる予定です。
あとは、お声がけいただいている企業さんや、個人のクリエイターさんで企画をしている方もいらっしゃるので、その方と共同で何かしたりなど、一概には言えないですが状況に応じて活動していこうかと考えています。

ーーちなみに、noteなども含め色々とご自身の考えを発信されていますが、情報発信を重視されていますか?

どちらかというと必要に迫られてというところでしょうか。相手に対して誤解のないように誠意を尽くすために、公的な場で発信をしていっている感じです。
例えば案件のご紹介・ご依頼にしても、先ほどお話した通りキャリア設計がない限りは単発のバイトに近いものという感覚を持っているのですが、こういった発言や理念を理解したうえで持ってきていただきたい、そのための情報発信という側面もあります。
作家を支援して継続的な活動をサポートするという理念に対して、自分の果たすべき義務は何だろうと考えていると、周りの人は割と良く見てくれているなと思います。
例えば、美味しいラーメン屋さんでも売上げ重視型とラーメン探求型って違う設定じゃないですか、同じようにクリエイターさんから信頼を獲得できたり好意的に見える設定って何だろうと考えると、それはちゃんと説明するとか、質問にはちゃんと答える、何度でも答えるということが大事なのかなと思います。胆力はいるんですが、言葉を尽くしていきたいと考えています。


いかがでしたでしょうか?
ご自身の信念のもとに、仮説検証を繰り返しながら活動されている点がとても印象的でした。また、ご自身の考えをnote等でしっかり発信し、言葉で伝えられている点も周りを巻き込むパワーに繋がっているのかなと感じました。
CustoMeeも、日本全国のクリエイターが自身の作品で収益をあげられる環境を作りたいと考えており、「みんなのステッカー屋さん」の理念にとても共感したインタビューでした。(ナカシマ)

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