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ブッシングに関する考察

治具や材料をしまってある引き出しを整理していたら懐かしいパーツが出てきました。アマチュア時代に使用していたブッシングです。

ある時期からマルチブレードを多く作るようになり、このブッシングは使用しなくなりました。・・・ホィットラー等のセカンダリー・ブレードはとても小さく、ブレードタングが5mm四方くらいしかないので、残念ながらブッシングが入る余裕がありません。
その後はブッシング無しの直接ピボットピンの手法で現在に至ります。

アマチュア時代は、このブッシングの効能や使用法をあまり理解しておらず、他のフォルダーメーカーが皆ブッシングを使っていたので自分も使っていた程度ですが、効能や正しい使い方を理解してからは、逆になかなか使えなくなりました。

ブッシングの主な効能とは何か?
トラディショナルスタイルのフォルダーはピボットピンに常に強いテンションがかかっており、回転する度に摩擦でピボットピンが削られていきます。長い期間使用されたフォルダーはピボットピンの上端部分が徐々に削れてきます。そして製作当初はライナーの背中と面イチだったバックスプリングが徐々に下がってきてギャップが出てきます。・・・全ポジションが下がるのでフラッシュは崩れないのですが・・・
この経年変化を出来るだけ遅らせる工夫がブッシングです。

ブッシングを熱処理するべきか?しないべきか? 
これは各ナイフメーカーの考え方が様々あると思いますので、ここでは言及しないことにします。

ブッシングの正しい使い方とは?
これはほとんどのフォルダーメーカーにご賛同いただけるかと思いますが、ブッシングは回転させてはいけません。
つまりブレードが回転する際にブッシングは回転せず、固定されていなければなりません。そうでないとブッシングを入れていないのと同様なので意味がありません。

今回は有名ナイフメーカーの採用しているブッシングを例にご紹介します。

まずはRon Lake,
ご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、「How to make folding knives」のRon Lakeの章の中でブッシングの画像が掲載されています。

何種類かの厚みのブッシングが針金に束ねられています。熱処理されているのかどうかは不明ですが、ブレードの厚みに合わせて調整研磨しているので、熱処理はしていないかもしれません。
残念ながら、ここではブッシングを固定する方法に関しては言及されていません。

次にJess Horn,
20数年前、Jess Hornのロックバック・フォルダーを分解する過程を見学する機会がありました。
これも有名な話なのでご存じの方も多いかと思いますが、彼のブッシングは下記の画像のようにピボットピンと一体型です。当然、ピボットピンはカシメなければならないので熱処理はしてありません。

このように一体型にすれば、ブッシングが回転することは絶対にありません。しかしながら、分解するのが非常に困難になります!
・・・ピボットピン以外のハンドル内のピンは簡単に抜くことができたのですが、この一体型のブッシング+ピボットピンはハンドルを外側に開くことでしか外せません。バックスプリングとスプリングキャッチを取り外した後、ゆっくりと両側のハンドル外側へ引っ張って、やっとこさ取り外しましたが、膨らんだピボットピンを無理やり抜いた影響で穴が大きく広がり、元の状態に再生できるのか?と心配したことを鮮明に記憶しています。

最後はTony Bose,
20年程前にTony Boseのスリップジョイント・フォルダーの最終組立工程直前の写真を見る機会がありました。組立前のすべてのパーツが並べてある写真です。
そこにはブッシングも写っていました。写真なのでサイズは想像ですが、 外径5mm前後、内径2.5mm〜3mm前後でした。
・・・このブッシング、ちょっと変わった加工がしてありました。
それは下記の画像のように、側面にフリーハンドで打ったポンチのような痕が数ヵ所ありました。
・・・これはいったい何なのだろう? 
最初はまったく意味不明でしたが、その後よくよく考えてみて、ある仮説を立てました(以下は私の想像です)。

パーツの写真では、ブッシングの表側しか写ってなかったのですが、ポンチは裏側にも同様に打ってあったと想像します。ただし位置をずらしてあったと思います。
この両面にポンチが打たれたブッシング・・・ポンチを打ったことがある方ならご存じだと思いますが、ポンチ痕の周辺は金属が盛り上がります。下記の画像はその拡大図です。

事前にブレードタングとブッシングは同じ厚みに調整してあり、最終組立直前にブッシング両側面にポンチすれば、その周辺の金属が盛り上がりポンチ痕部分の厚みが増します。
これを通常の工程でピボットピンをかしめれば、ブッシングのポンチ痕は両側のライナーに食い込み固定され、回転しないのではないか?と想像します。
もしこれが実現可能ならば、分解が容易でブッシングも固定できる・・・・なかなか斬新な方法だと思います!!!
・・・まぁ、これはあくまでも仮説ですが・・・

・・・残念ながらこの件を質問する前にTony Boseは亡くなってしまい、 真実は分からなくなりましたが・・・機会があればReeseに質問できるかもしれませんね・・・

私も「How to make 〜 for professional」の中で自分なりに考案したブッシングの固定方法を紹介していますが、残念ながら画期的と言うには程遠いです、トホホ。

春になり桜も咲き出しましたし・・・
若いフォルダーメーカーの皆さんには、ぜひ画期的な方法を考案していただきたいと思うこの頃です!
みなさん、よろしくお願いします!

Let's tryです!

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