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アムステルダムの思い出 days1

夜になって宿に戻るとフロントのお兄ちゃんから「お前と同じ国の女がいるんだけど、トラブルみたいなんで話を聞いてやってくれよ」と言われ、そのメガネのおばちゃんに引き合わされた。
世界一周船の旅に参加していたんだけどクルーズ船に乗り損ねてアムステルダムに取り残された、ツアコンにはデンマークで合流と言われたんだけどどうやってデンマークまで行ったらいいのか旅行会社に問い合わせたいとの由。
フロントのお兄ちゃん、投げたなー と思ったよね。
コペンハーゲンまでのチケットを買って行くしかないんじゃね? としか言いようないよね。
陸路でも行かれるということはわかったんだけど、飛行機の方がこのおばちゃんには危なくなさそうと思って、とりまチケットを手配しないとと言ったら、フロントのお兄ちゃんに電話させようとしていやがる。
ここは★★ そんなサービスはしてないと思ったが勝手にやらせておいたら、お兄ちゃんは目配せした後、TVのサッカー観戦に夢中になっているフリをしておばちゃんには背を向けてしまった。
宿の入口の方ではごきげんに盛り上がってる男もいるが宿泊者ではないらしく、フロントのお兄ちゃんが立ち入るなとダルそうに追い出しに行って、戻りしなに「まだやってるよこいつらは… お節介焼きなんだな」って感じで、またわたしをチラッと見てフロントに戻った。
何でだったか忘れてしまったけれど、なんぼかお金を貸してやって、日本へ帰国したら返金してもらうこととなり、おばちゃんの住所と電話番号、帰国の予定日をメモにしてもらった。
翌朝、セントラルステーションに近い銀行に同行することになっていたのでフロントの前に居てくれるようお願いしていたんだけど、姿が見えず。
フロントのお兄ちゃんが交代前でまだ居たから、「あのマダムは来た?」と聞いたら、なんか散歩してくるとか言ってたよとあくびしながら答えた。
散歩から戻ったおばちゃんにイラついていたら、「きれいな町だけど、この(ホテルの)辺ってもしかしたら治安が悪い場所? 昨日の夜は暗くてわかんなかったけど」とか言ってるんで、ほんとにアブナイやつと関わったもんだと思った。
その後は確か一緒に銀行へ行って、おばちゃんが駅まで同行して欲しそうなのをわかりながらそうしないでバイバイした。
東京に戻っておばちゃんへの連絡が億劫になっていたが旅行の後だしそれなりに貧乏になってしまったので、おばちゃんのケータイへ連絡することにした。
留守電になったのでみずほの口座を吹き込んで切った。
おばちゃんから折り返しがあって、マンチェスターだかで紅茶を買ったので送りたいから住所を教えて欲しいとの申し出を受けたが、同じ区内に住んでいるのを知っていたのでなんだか住所を教えるのは面倒臭いなと思って、「家に居ることも少ないから宅配を受け取れないことが多いし、お気持ちだけ」と辞退した。
その電話のあと部屋にいる時ゴロンとして、別な生活をしている人とやり取りする煩わしさを感じた。
世界一周クルーズ船の旅、寄港先で取り残された人と出会った旅の思い出。

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