辛くないカレー。
カレーを作ってますというと、よく「辛い?」という質問をされる。
唐辛子を使わなくなった
カレーと聞くと、まず「辛いよね」っていう言葉やイメージが出てくると思う。だけどお店で作っていたカレーは辛くない。
そもそもスパイスを使ったから辛くなる、というわけではなくて。
辛くするためのスパイス(唐辛子など)があって、それらを使うと辛くなる。
元々最初から唐辛子をそんなに使う方ではなかった。あまり辛くないように仕上げておいたほうが、辛いのが苦手な人にも食べてもらえると考えていたから。
好きな方には、あとで辛さを追加するといったやり方をしていた。
しかし、コースに変えてから一切使わなくなった。これは唐辛子を入れたかどうかに関わらず、自分の作るカレーはどうしてもまろやかになるし、マイルドなものに仕上がると気づいたことがきっかけだった。
それが自分の味なのなら、逆に生かしてみようじゃないか、と。それが唐辛子を使わなくなった理由。
スパイスカレーの概念
スパイス=辛い。スパイス=刺激的。
僕はスパイスに関して、辛さや刺激というものにあまり面白さを感じていなかった。
そうじゃないところの面白さをお客さんに感じてほしいと思った。
辛いカレーを食べ慣れている人からは、僕の提供するカレーに対して「全然辛くないんですね」という反応が返ってくる。
逆にスパイスカレーをこれまで食べたことがないとか、きっと辛いだろうからと敬遠してきた人からは「食べやすい」という言葉が返ってくることが多かった。
特に50代、60代の人にとって、スパイスカレーはそこまで馴染みのある食べ物ではなく、僕の店で初めて食べたという人も多かった。「辛くないなら食べてみたい」という動機で訪れてくれた人も一定数いた。
カレーにフルーツを使う。
地元野菜のほか、フルーツをカレーに使うことも多々あった。単純に、産直の直売所や道の駅で新鮮な旬のフルーツが買えたから使ってみようという軽い気持ちで始めたのだけど。
せっかくならと思って使い始めたんだけど、いざやってみると、僕にとってフルーツは思ったより使いやすかった。
キウイフルーツ、いちご、ブルーベリー、すもも、オレンジ、みかん、金柑などの柑橘類、あとは柿やパッションフルーツなんかも使ってみた。
旬のフルーツがあることで、自分の目指していた味や香りがより明確に表現出来ていたと思う。
色について思っていたこと
コース仕立てにするようになって、カレーの色合いにもさらに意識を向けた。
いくら味がよくても、最初から最後まで、似たような色が続くのは目も飽きてしまうだろう。
せっかく作るなら、食材そのものの色というか、その食材が持つ美しい色をカレーに反映させたいと思っていた。たとえば、ほうれん草のきれいな色を出したいなとか。でも合わせるスパイスによってせっかくの色が濁ってしまうから、そうではないスパイスを選ぶことが重要。
食材が決まって、どういうスパイスを使うか想定して、そのうえでどういう調理法にするかを考えるという順番。メニューありきではなく、はじめに食材ありきが僕のスタイル。
スパイスの調合に関しては、絵を描いてるような感じにも似ているかもしれない。絵の具を混ぜて、自分の描く色を作り上げていくような。
絵を描くというよりは、色そのものを作っていく感覚でカレーをつくっていた。
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