ダイアン 架空漫才5

「夏」


西「あのさ。最近めちゃくちゃ暑くない?」
津「ほんまにね~。」
西「いやいや。ほんまに気付いてる?」
津「いや気付いてるも何も…実際暑いやんか。」
西「皆さんもほんまに気付いてます?」
津「そら気付いてるて…」
西「そこのお姉さん、呑気にうちわでパタパタ扇いでんと。最近暑いの気付いてる?」
津「暑いから扇いではんのやろ。」
西「ほらそこのお兄さんも。ダラダラ汗かいてんと。最近めちゃくちゃ暑いよ。気付いてる?」
津「気付いてるて!暑いから汗かいてはんねん!」
西「僕ね、流石にこの暑さはおかしいと思ってね。調べたんですよ。」
津「調べた?」
西「そしたらね。…知ってます?今、『夏』っていうらしいんですよ。」
津「え?」
西「知ってた?」
津「いや知ってたっていうか…」
西「『なにぬねの』の『な』に、『たちつてと』の『つ』で夏(なつ)なんですけど。」
津「え?ちょっと待って西澤。え?夏知らんの?」
西「夏?ううん。今は知ってるで。」
津「今じゃなくて…。今まで夏知らんかったん?」
西「あー…うん。」
津「最近調べて知ったんや。」
西「うん。」
津「マジで?」
西「うん。」
津「なんて調べたん?」
西「『最近 暑い なんで?』って。」
津「そしたら夏って出てきたん?」
西「うん。」
津「嘘やろ…。」
西「でさ。日本だけこんな暑いのせこい!って思ってさ、調べてたら他にも暑い国いっぱいあるらしいな。例えば『サウジアラビア』とか……『イラク』とか……えー他には…」
津「ちょ、ちょっと待って。全部言う気?」
西「うん。暑い国、まだまだあるからね。」
津「『まだまだあるからね。』やなくて…。全部挙げてたらキリないから…。
西「そう?」
津「そんなことよりな?西澤が夏知らんかったことにみんなビックリしてんねん。」
西「うんうん。」
津「『うんうん』やなくて…。じゃあなんなん、春も知らんの?」
西「春は知ってるよ。」
津「…え?…秋は?」
西「知ってる。」
津「…冬は?」
西「知ってる。」
津「夏だけ知らんかったん?どういうこと!?夏だけ知らずに生きてこれる!?」
西「よーわからんけど。」
津「そっちの方がムズいやろ。」
西「何言うてんの?夏"だけ"知らんって何なん?春とか冬とかに夏は関係ないやん。」
津「いやあのな。夏ってな。春とか冬とかの仲間やねん。」
西「へ?」
津「春夏秋冬って聞いたことないか?」
西「あー!知ってる知ってる!」
津「知ってんねや。あれってな。春・夏・秋・冬っていう4つの季節のこと言うてんねん。」
西「え!?マジで!?」
津「そうそう。春が『しゅん』で夏が『か』、秋が『しゅう』で冬が『とう』やねん。」
西「そうなんや!てっきり『春か秋冬』ってことやと思てた!」
津「ちゃうよ!」
西「なんで春と秋冬で1対2の対立関係作るんやって不思議に思っててん。」
津「すごいな…。」
西「そや。話変わるけど、夏ってさ漢字あるん知ってる?」
津「知ってるて。」
西「俺な、夏に漢字があるの嬉しすぎて夏って大学ノートにいっぱい書いたんやけど、後でお前に1番綺麗に書けた『夏』見せたるわ。」
津「ええわそんなん。」
西「皆さんも見れるように後でブログにあげますんで。」
津「誰も見いひんて。みんな不思議がるからやめとき?」
西「いやーでもあれやな。」
津「…なに?」
西「こんな暑いとさ。"冷たいもん"食べたなるな。」
津「…まあな。」
西「キンキンに冷えた炭酸とか飲みたならん?」
津「…たしかにな。」
西「あとはあれな。アイス!冷たいアイス食べたならん?」
津「…発言が夏初心者過ぎるわ。」
西「え?」
津「ベタすぎてそんなんみんな口にも出さんねん。…いやベタとかちゃうな。当然のこと過ぎんねん。」
西「逆に聞くけどさ。お前は、こんな暑い時何食べたくなる?」
津「暑い時…?んーまあ逆にカレーみたいな、辛くて熱いの食べたいかな。」
西「は!?(笑)いやいや!それはないで!(笑)暑い時に熱いもん食べるて!(笑)ボケてんの?」
津「やから夏初心者過ぎるて。そんなん小学生でも言わんで。」
西「…てか見てよ。」
津「なにを?」
西「服、服。」
津「え?」
西「半袖半ズボンです。」
津「あー確かに、漫才してる時あんま着いひんな。」
西「実はこれもめちゃくちゃ暑いからやねん。」
津「そらそうやろな。分かってる……あれ?」
西「ん?」
津「ちょっと待って。ふくらはぎ…。」
西「なに?」
津「『夏』ってタトゥーあるやん…。」
西「え!?」
津「タトゥー入れたん?」
西「ほんまに!?」
津「ほんまに!?やなくて。自分の意思で入れたんやろ?見てみいや。」
西「うそ!?まじやん!どういうこと!?」
津「なんでお前がびっくりしてんねん!」
西「いや知らんもん!」
津「知らんてなんやねん!他に誰がすんねん!」
西「俺かて知らんよ!パニックや!」
津「マジで知らんの?」
西「マジで知らん。」
津「いやでも誰かが勝手にタトゥー入れるなんて不可能やん…」
西「まあ確かに…でもホンマに知らんねん!」
津「夏を知らんはずのお前の足に夏のタトゥー…ちょっと待って…。今携帯ある!?」
西「携帯?あるけど。」
津「写真フォルダの去年の写真見て!」
西「去年の写真!?…分かった!………あ!!」
津「どうした!」
西「タトゥーの写真ある!」
津「やっぱり!」
西「うわ!しかも夏っていっぱい書いたノートの写真もある!!」
津「…去年のフォルダに夏の欠片があるのに、今年初めて知ったと西澤は言ってる…もしかして…記憶が無くなってる…?」
西「ちょっと待って!」
津「なに!?」
西「更に遡ってみたら、2年前のフォルダにもタトゥーとかノートとかの写真がある!!」
津「まじか!」
西「どういうこと!?」
津「西澤…落ち着いて聞いてくれ。」
西「おん…。」
津「多分やけどな…西澤の記憶から毎年『夏』だけ消えてんねん。」
西「どういうこと!?」
津「夏を今年初めて知った言うてたけどな、もっと前から知ってたかもしれんぞ!」
西「嘘や!そんなわけ…!なんで!?」
津「わからん。昔、西澤が夏を知ってた証拠を探そう。なんか昔使ってた物とか今持ってないか!?」
西「漫才中やぞ!あるわけないやろ!」
津「なんでもいい!小学生の時に使ってたノートとか小さい頃のビデオカメラとか!なんかないか!?」
西「あ!小学生の時使ってたノートあった!」
津「ナイス!中見てくれ!」
西「わかった!……うわ!…『夏』って異常に書いてる!」
津「なるほど…小学生の時にはもう既に夏を知ってたんか…。」
西「あ!小さい頃のビデオカメラもあった!」
津「ナイス!1番古いのから見ていこ!」
西「…分かった!1番古いの…あ、俺が初めて喋った時の映像や!」
津「おお。再生してくれ!」
西「分かった!」

(西:「な…ちゅ…」)

津「夏言うてる!」
西「マジか!」
津「やっぱり西澤、お前昔から夏知ってんねん!」
西「信じられへん…」
津「どういうことや…」
西「あ!ちょっと待って?…NSC在学中のネタ帳あったわ。」
津「NSC在学中のネタ帳?……でも小さい頃から夏知ってんの分かったからな。それはもうええ…」
西「…え!?」
津「どうした?」
西「嘘やろ…。」
津「なに!?」
西「…あのな…ノートの最初のページにな…漫才の台本があるんやけど…」
津「おう…」
西「その漫才のタイトルが…『夏』や…」
津「は!?」
西「ありえへん…」
津「ちょっと待ってくれ!どんな内容なんや!?読んでくれ!」
西「…!!」
津「西澤!どうした!?」
西「読むぞ…。

『西「あのさ、最近めちゃくちゃ暑くない? 」津「ほんまにね~。」
西「いやいや。ほんまに気付いてる?」
津「いや気付いてるも何も…実際暑いやんか。」
西「皆さんもほんまに気付いてます?」
津「そら気付いてるて…」
西「そこのお姉さん、呑気にうちわでパタパタ扇いでんと。最近暑いの気付いてる?」
津「暑いから扇いではんのやろ。」』」

津「キャー!!」
西「…どういうことこれ…?」
津「西澤、今日のこれ新ネタや言うてたよな!?」
西「おう…昨日ふと思い付いた完全な新ネタや。」
津「じゃあなんでNSCの時のネタ帳に同じネタが載ってんねん!」
西「…。」
津「繰り返してる…?」
西「…そ、そんな訳…。」
津「…そや!お客さん!このネタ見た事あるよって人いますか!?いたら手を挙げてください!」

(客席の半分以上が手を挙げる。)

西「は!?」
津「あかん!ゲェ吐いてまう!」
西「嘘や!」
津「西澤!タトゥーとノートの夏の字を写真に撮れ!」
西「え!?」
津「いいから!はやく!」
西「わ、分かった!」

カシャッ カシャッ

津「ほんで、そのノートもビデオカメラも常に持っとけ!」
西「お、おう!」
津「んでビデオカメラで今の俺らを撮ろう!来年の俺らに伝えるんや!『夏を忘れるな』って!」
西「分かった!ちょっと待って!」
津「おう!」
西「…ん?………うわあ!!!!」
津「どうした!!!」
西「…こ、このビデオに残ってる最新の映像が…」
津「最新の映像…?それがどうしたんや!」

(動画を再生する。
西・津『夏を忘れるな!!』)

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