呼ぶラプンツェル【オンライン・キャプション】
キャプションに書ききれない作品情報を解説するnoteです。
作品の制作手法はこちらのnoteで解説してます。
呼ぶラプンツェル
サイズ:SMサイズ
マテリアル:アクリル板 アクリルガッシュ ステンレスネジ
2019年9月制作
グリム童話の「ラプンツェル」をテーマにした作品です。
ディズニー映画の「塔の上のラプンツェル」の元になったお話です。
グリム童話では、ラプンツェルが長い髪の毛を塔の上から垂らし、彼女の部屋に入ろうとする人は髪の房をつたって塔に上ります。絵になるシーンですよね。でも、私的には「邪悪なもの」を引き込んでいるようにしか見えないなあ…というのがこの絵の主題です。
透明アクリル板と、透明カラーアクリル板(ネイビー)の組み合わせ。ネジを見せたくなかったので銀ラメ絵の具で覆ってますが、全然隠し切れてないですね。もうちょっと試行錯誤が必要かなと思っています。
カラーアクリル板は壁の色によって色味が変わって見えるのが面白い素材です。例えば、背景が蛍光イエローの時は、明るいグリーンのように見えました。
※以下は、わたしの主観が多分に入った自己解釈です。専門性はまるで無いので、信頼せず、娯楽作品としてお読みください。
元ネタ:ラプンツェル
つわりに苦しむ妻のために、夫は魔法使いの庭に忍び込みラプンツェル(レタスみたいな葉物野菜らしいです)を盗もうとします。当然魔法使いに見つかり、夫は「(野菜の)ラプンツェルは好きなだけ食べていい。その代わり、生まれてくる子は私がもらう」という約束をします。
生れてきた女の子は魔法使いにもらわれ「ラプンツェル」と名付けられて森の中の塔で育ちます。これ何気にひどくないですか?野菜の代わりにもらわれたから野菜の名前で呼ばれるって。「キャベツ太郎」並みのネーミングセンスだと思われます。
魔法使いの「ラプンツェル、髪を垂らしておくれ」という呼びかけを符号に、彼女は長い金髪を窓からたらし魔法使いはそれをロープ代わりにつたって彼女の部屋に入ります。
この魔法使いはラプンツェルを塔から出しません。さらに、他の人間と会おうとすることも固く禁じます。バリクソ過保護な親なんですよね。端的に言って毒親です。ラプンツェルは魔法使い以外の人間を見ることも許されません。
しかし、たまたま塔の近くに立ち寄った王子様がラプンツェルの歌声を聞いてしまいます。「女の子がいる!会いたい!」ってなった王子ですが、塔にはどこにも入り口が無く登れそうな梯子もありません。
でも諦められない王子様はどうするかというと、塔の近くで張り込みを行います。この時点でちょっとストーカーっぽさというか、粘着質な性格が見えますね。張り込みの結果、魔法使いが彼女に声をかけ髪をたらしてもらって登っていることを突き止めます。(おそらくこの時点で魔法使いは昼間にしか来ないということにも気付いているはず…)
魔法使いと同じように「ラプンツェル、髪を垂らしておくれ」と声をかける王子に対しラプンツェルは疑うことなく髪を垂らします。登ってきた王子を見てびっくりするラプンツェルですが、王子のコミュ力によって心を開くようになり、愛し合うようになります。
王子は夜ごとこっそりやってきてはセックスして帰っていくやつと化します。客観的に見て、世間知らずの女の子と仲良くなってセフレ化しているクソ男では?という嫌な感じがぬぐえません。
彼女が外に出るための梯子を作るという名目で王子は絹糸をちょっとずつ持ち込むのですが、梯子が完成する前にタイムアップとなってしまいます。
ある日、魔法使いは「おばあさん、最近なぜかお洋服がきついの。」というラプンツェルの爆弾発言によって彼女の妊娠に気づきます。異常に過保護なくせに彼女のおなかが大きくなっていることにも気づかない無関心ぶりからも毒親っぽさが垣間見えますね。
ここで魔法使いがブチ切れます。だいじにだいじに育てた娘が自分のいいつけを守らず夜な夜な男とセックスしてたらまあブチ切れますよね、というところまでは分かるんですが、ここからがひどい。彼女の髪をばっさり切って塔から荒野へと追い出してしまいます。(どうやって塔から降りたんだ?)
自分を裏切った娘は絶対に許さないし、幸せにもしないという強い意志を感じます。怖すぎ。
ラプンツェルは荒野で双子を生みます。職歴なしのシングルマザーが多胎育児とか、現代日本における悪夢という感じですね。
魔法使いはもちろん王子も許しません。いつも通りに呼びかける王子に対し、さっき切り取ったラプンツェルの髪を垂らして部屋に引き上げ、
「あの子はもういません!残念でした!!!死ね!!!!」
的なノリで王子を塔から突き落とします。怖すぎ。
王子は一命はとりとめたものの両眼を失明し、以降森の中をさまよい歩くことになります。お忍びだったから家来とかもつけてなかったんでしょうね。
~数年後~
ある日王子は往来の子供の泣き声にふと懐かしいものを感じます。なんとそれはラプンツェルの子供の声でした!二人は再会し、ラプンツェルのうれし涙が王子の目に当たると目が見えるようになりました。よかったね。
という雑なオチでラプンツェルの物語は終わります。
昼は毒親、夜はクソ男
上記のストーリーは多分に私の解釈が入っています。もうちょっとフラットに読みたいという方はぜひ実際のグリム童話を読んでいただけると良いと思います。ちなみに「お洋服がきついの」発言はグリム童話の初版にしかありません。子供が妊娠するという内容が批判を浴びたらしく、第二版以降はちょっとマイルドになっています。
昼は毒親が、夜はクソ男が彼女の髪を登ってくる。箱入り娘のラプンツェルはそれすら気付かない…というのが「邪悪」な物語だなと思います。
グリム童話はこのほかにもひどい話が山ほどあって、絵にしていきたいモチーフも山盛りです。
絵の解説はマガジンにまとめていますので、興味がある方は他のnoteも見ていただけると嬉しいです!
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