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男と女のフォルダー

よく言われる、男は一人につき一つのフォルダーを持ち、女は一つのフォルダーを上書きしていくというはなし。



年明けの1月には学生時代の同窓会があった。残念ながら私は参加がかなわなかったが、みんな当時の年齢まで引き下がって、女性も旧姓に戻り、懐かしい青春時代に思いをはせる楽しい一瞬だ。当時付き合っていたカップルは、もしかしたらやけぼっくいに火の付くことがあるかもしれないし、気まずいままのカップルもいると思うが、同窓会の楽しみはそんな事ではない。想い出話に花が咲き、忘れていたこと、知らなかったこと、いろいろな発見もあって楽しい時間だ。
男性は確かに多くのフォルダーを持ち歩き、こうした同窓会のようなときに「ここぞ」とばかりに持ち出すというか、引き出しを開けるのだろうな。たくさん恋愛をしてきたプレイボーイは重たい荷物(フォルダー)を背負うことになる。その点女性はフォルダーの数は少ないので、身軽でいい。だが、たった一つのフォルダーしか持ち合わせていない人ばかりではなく、いくつか所有している人もいるはずだ。女性だから一つしか持っていないとは限らない。プレイガール(って今でもいうのか?)にはフォルダーは一つではないだろう。一人ひとりのものはなくても(いくつかは上書き保存されているだろうが)少なくとも一桁の数字くらいは持ち合わせていてもよかろう。そう、忘れられない人のフォルダーというものだ。 

私自身の話をすれば、結婚と恋愛は「別」の考えから、好きという感情をあまりもたない人と結婚をしたが、その時やはり上書き保存以外のフォルダーを持っていた。しかも3つ持っていた。(ははは、元夫よ、すまない)
一つは高校生の時に仲の良かった女友達が、好きと公言していた男子からの告白に、ずいぶんととまどいながらも、私も彼の事が好きだったこと。友情を取るか愛情を取るかという場面だ。その時のフォルダーが一つ。
二つ目は高校を卒業してから長いこと付き合っていた人のフォルダー。親も当然彼と結婚すると思っていたらしいが、別れてしまった。
3つ目は人生初の振られた体験をした人。それぞれに思うことがあって忘れられないため、フォルダーは上書きされずに残っている、男のように・・・
私の場合決してプレイガールというわけではなく、すべて振られた想い出の産物だ。だからと言って、この想い出のフォルダーを今この瞬間に開いたとしても、思いは青春時代に戻るが、現実はそうではない。私はあの甘酸っぱいままの思い出を引き出しから出した時、牛の胃袋のように(たとえがロマンティックではないな、すまん)何度も反芻しながら、大切に大切に引き出しの奥にしまっている。大人になってしまった今では味わうことのできない、プラトニックで純粋なところに価値のあるものだ。しかし男はフォルダーを作った時期に気持ちを戻し、大人になった今も続いていると勘違いをするようだ。だから、女は上書きと言われ、男はいつまでたっても「あの頃の自分」と決別できないのかもしれない。ある意味男のほうが純粋なのかもね。
もしくはあの頃のフォルダーのままの女子を夢見て、自分だけは大人になってしまっているのかもしれない。