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出戻りぱんだのおはなし・に


飼育員さん、こんにちは?こんばんは?それともおはよーございますかな?(*´艸`*)
今日もぱんだは元気です!\(*ˊᗜˋ*)/♡ヤホー

さてさて、前回投稿したおはなしの続きを書こうかな。ぱんだは無事に北海道に帰れるのかな?パパに会えたのかなー?

つづきのはじまり!\(*ˊᗜˋ*)/♡ヤホー


13時。急いで退勤したぱんだは、一番の仲良しさんに帰省の連絡をしながら一度おうちへ帰ろうか悩みました。
飛行機の出発時間は17時、時間はまだ少し余裕がありそうだけど成田空港へ行くのは初めて。
鞄の中に入ってるのはお財布とiPadちゃん、お化粧ポーチにスマホ、イヤホン、充電器もある。

うん、真っ直ぐに空港に向かおう。

お仕事中何度も泣きそうになったけど、パパ本人は頑張って戦ってる。
ぱんだには何ができるかな?
ぱんだが不安になって泣いてたら、気が散って戦いに集中できないんじゃないかな?
そんな事を考えながら同居人さんから預かってるカード類やおうちの鍵をロッカーにしまって、お店のグループLINEに来たら渡してもらうように伝言。

「 じゃあちょっとぱぱを起こしに行ってくるから、みんなまたね!お土産楽しみにしてて!」

まだ頑張ってお仕事しているスタッフちゃんたちに手を振りながら、ぱんだは全開の笑顔で最寄りの駅へと向かいました。

泣くのはパパが起きて、おはようとただいまのご挨拶をしてから。そう心に決めて電車に乗り込めば嫌いな電車もちょっぴり楽しいアトラクション。
車内で妹ちゃんに容態の確認をしてみると、病名はクモ膜下出血。緊急手術の開始時間は14時予定とのお返事。

『18時に新千歳空港着の飛行機に乗るから、それまでままの事よろしくね。すぐに病院に向かうから待ってて』

頭は真っ白、スマホを持つ手も震えるけれど、自分とのお約束を守るために大好きなおうたを聴こう。
そっと目を伏せて、イヤホンから流れる歌声にたくさんの元気を分けてもらいながらガタゴト揺れる電車に身を任せてみれば、そこはぱんだだけのライブホールみたいで少しずつ心のお日様が顔を出す。

―――電車はちょっぴり苦手だから、東京駅から成田空港直通のバスに乗ろう。そうと決まれば、バスの発着時間も調べておかなくちゃ。それから・・・・・・。

道中、無知なぱんだはクモ膜下出血について、それによって引き起こるであろう後遺症について、それから万が一の時の手続きや手配しなくちゃいけない事柄を調べながら、お友達と普段通りの何気ないLINEのやりとり。

不意に耳に入ってくるフレーズに乗り込んだ飛行機の中で、人目も憚らず溢れる涙。冷たい恐怖でも不安でもなくて、もっともっと温かい気持ちで溢れていて、こんな時なのにぱんだの心の中には満開の花景色が広がっていく。

そんなこんなで到着した新千歳空港、機内から降りた瞬間から寒かったです。
この日の気温は6℃くらい? パーカーにジーンズで過ごす気温じゃありません。
途中、道に迷いながらも辿り着いた病院の駐車場で五年ぶりに会うママは、泣き疲れて憔悴しきったお顔でした。

「親不孝娘が帰ってきたよ!ただいま!!」

急なことでなんの検査もしていないから、思いっきり抱き着いてスリスリしたい気持ちを笑顔に変えてご挨拶。
呆れたような疲れたような顔のあとにママの目から溢れた涙はどんな涙だったんだろう?

「お父さん、まだ頑張ってるよ。お母さんは戻るけど、ぱんだは病院に入れないから車で待っててね」

車の鍵を開けてもらい、ママの背中を見送ってからいくつか窓から漏れる灯りを見上げてそっと心の中でパパにもただいまのご挨拶。
寒いから車に乗ろうかと思ったけれど、少しでもパパの近くに居たくて限界までお外で応援する事にしました。

ぱぱ、ぱんだが帰ってきたよ
早く起きていつもみたいにお膝に座らせてね
起きたらぱぱの好きな信玄でラーメン食べようね
おたる水族館行きたいから二人でドライブしよ
ハイジ牧場もクマ牧場も行きたいなぁ

頭の中には大好きな人が歌ってたおうたがずっと流れてて、だからあの時、楽しい未来でパパを応援できたのかな。


パパの開頭手術が終了したのは予定より一時間半遅れて、23時を過ぎた頃。
脳の手術自体は無事に終えたけれど、救急車へと乗る直前に一度心停止した影響か、元々の高血圧や心臓の疾患によるものかは判断できないが、心臓や肺への負担が大きすぎて、手術を担当してくださった先生の見立てでは回復の見込みは二割程度だと告げられたそうです。



今、ぱんだがこうして笑顔でいられるのは、あの時ずっとそばに居てくれたあなたが居たからです。いつか届けに行ける日まで、ここに仮置きしておきます。ありがとう。


何かのきっかけのひとつにでもなれたなら嬉しいです\(*ˊᗜˋ*)/♡ヤホー