女児アニダンスミュージックED史

女児アニダンスミュージックEDの系譜ってあるじゃないですか。

あるんですよ。

決して多数派とは言えませんが、90年代以降の女児アニメの要所要所にR&BやFunk、Disco、クラブミュージック、テクノポップ、時にTKサウンド等のダンスミュージック要素を取り入れたED曲が散見され、その系譜は「冬の時代」を経ながらも、現在まで受け継がれています。

今回は、筆者が勝手に見出している「女児アニダンスミュージックED史」について語りたいと思います。

最初に「何故わざわざEDに限定するのか?」と言う疑問にお答えしておくと、筆者が「女児アニメを1話見終えた後にダンスミュージックのEDが流れ出すのが超好きだから」です。趣味です。

※ 読まなくていいけど書いておいた方が良さそうな話。
何を持って「女児アニメ」とするかの線引きについては、基本的には筆者の独断としつつ、下記の3点を指標とします。
・『なかよし』『りぼん』『ちゃお』の3大少女漫画雑誌の原作、またはコミカライズしていた作品
・『おともだち』『たのしい幼稚園』『幼稚園』『ぷっちぐみ』掲載作品のうち、女児向けとされる作品
・「世界名作劇場」シリーズ作品(ただしダンスミュージックを扱う本記事としてはほぼ触れる機会はありません)

また「女児アニメ」と言うには対象年齢が高く、本記事では扱わない作品として特記しておきたいものは以下です。
・少女漫画雑誌でも対象年齢が比較的高い『別冊マーガレット』『少女コミック』『花とゆめ』『LaLa』『別冊フレンド』『月刊Asuka』などを原作とするアニメ
・いわゆるドアサ・ニチアサアニメのうち、本来の対象年齢が高いと思われる「ギャラクシーエンジェル」「ぴたテン」(ただし「デ・ジ・キャラットにょ」「おとぎ銃士 赤ずきん」は女児アニメとして制作されています)
・「美少女戦士セーラームーンCrystal」「カードキャプターさくら クリアカード編」などの大人向けの性格が強いリバイバル作品
・「さばげぶっ!」

色々書きましたが、この線引きは沼なのでこれ以上は追求しません。(この定義で行くと「カレイドスター」は除外になってしまいますが、女児アニダンスミュージック史的に外せないので筆者の独断で女児アニメとします!)

i. 華の90年代

まず、この歴史がどこから始まるかという問題もありますが、ここでは1995年を起点にしたいと思います。

1995年は『なかよし』原作の大ヒットシリーズ「美少女戦士セーラームーン」に対し、『りぼん』原作の「ナースエンジェルりりかSOS」及び『ちゃお』とのメディアミックス「愛天使伝説ウェディングピーチ」が放映された年です。

同時に95年は「美少女戦士セーラームーンSuperS」から、明確にHouse/ Garageを志向したこのED曲が放たれた年でもあります。
Meu(梶谷美由紀) - “らしく”いきましょ (1995) (美少女戦士セーラームーンSuperS 後期ED)

「“らしく”いきましょ」は「セーラームーン」シリーズの6代目EDですが、他のOPEDと比べると異色なハウスチューンとなっています。

しかしながら、この楽曲以前にリリースされたボーカルアルバム『美少女戦士セーラームーンR ~未来へ向かって~』(1993)では、結構バリバリのダンスミュージックをやっていて、モロにJanet Jackson風な富沢美智恵 (as セーラーマーズ)「聖・炎・愛 ~Fire Soul Love~」や、Black Contemporaryもしくは今の耳で聞けば80年代シティポップ風な篠原恵美 (as セーラージュピター)「STAR LIGHTにキスして」が収録されており、「“らしく”いきましょ」はこの延長線上にある楽曲だと思われます。

続いて「ナースエンジェルりりかSOS」のEDを聞いてみましょう。
麻生かほ里 - 笑顔を忘れない (1995)(ナースエンジェルりりかSOS 後期ED)

80年代後期から90年代のJ-Popシーンを代表するプロデューサー小室哲哉による、いわゆるTKサウンドを意識したアレンジとなっています。それもそのはず。本作の前期OP「恋をするたびに傷つきやすく…」を手掛けているのは小室哲哉本人です。しかも本作の原案および主題歌の作詞には秋元康が関わっています。(秋元康は「美少女戦士セーラームーンSuperS」にも前期ED「私たちになりたくて」の作詞で関わっていました)
この後期ED「笑顔を忘れない」では上記2名はノータッチなのですが、それでもやはりTKサウンドを模倣したアレンジは健在です。

では「愛天使伝説ウェディングピーチ」のEDはどうでしょうか?
FURIL - ヴァージンラブ (1995)(愛天使伝説ウェディングピーチ 後期ED)

こちらもバリバリTKサウンドです。この1995年頃と言うのは、小室哲哉プロデュース楽曲がオリコンチャートを席巻していた時代であり、無理からぬと言ったところでしょうか。

少し時期が飛びますが「愛天使伝説ウェディングピーチ」から1年を隔てて同枠で放映された、説明不要の名作「少女革命ウテナ」のEDもここで紹介しておきましょう。(「少女革命ウテナ」は主に『少女コミック』『プッチコミック』で連載を持っていたさいとうちほが敢えて『ちゃお』に漫画版を掲載していた作品なので女児アニメとします!)
裕未瑠華 - truth (1997)(少女革命ウテナ 前期ED)

これもやはりTKサウンドですが、97年ともなると安室奈美恵「Chase the Chance」(1995)の感じになってきますね。音楽面へのこだわりが強い幾原邦彦監督作品とあってか、楽曲のクオリティもここまで紹介してきたEDの中でも頭一つ抜けているのではないでしょうか。編曲は元JADOESキーボードの平間あきひこ。やはり一味違います(翌年の「スーパードール★リカちゃん」(1998)での仕事も良いです)。

そんなTKサウンド全盛の1995年、『なかよし』原作の「魔法騎士レイアース」3代目ED「いつか輝く」はちょっと違った面白さがあります。
吉成圭子 - いつか輝く (1995)(魔法騎士レイアース 3代目ED)

この楽曲は恐らくKylie Minogue「Never Too Late」(1989)やRick Astley「Never Gonna Give You Up」(1987)等のヒット曲に影響を受けていると思われます。これらの楽曲はイギリスのプロデューサーチームStock Aitken Watermanが手掛けたもので、そのレーベル名Pete Waterman LimitedからPWLサウンドと呼ばれます(ここで取り上げてるのはハイエナジーからの影響が色濃い、ストレートなPWLサウンドよりはシンセファンク色が強いものです)。

雰囲気は違えど、これらの楽曲も何処となくTKサウンドを感じるかもしれません。それもそのはず、小室哲哉は1988年にロンドンへ遊学した際にPWLのスタジオを訪れ、その音作りを学んだのです。帰国後の小室哲哉はTRFや安室奈美恵に代表される90年代TKサウンドを確立しますが、そこにはPWLサウンドとその派生であるユーロビートの影響があるのです。「いつか輝く」はTKサウンドそのものとは一線を画しますが、根底には同じPWLサウンドがあるのが興味深いですね。

そして翌1996年放映の『ちゃお』の超名作漫画のアニメ化「水色時代」のEDも紹介しなければならないでしょう。
YAG PD - 約束はAlright!(1996)(水色時代 後期ED)

この楽曲は90年代ながら今となってはもう「シティポップ」と言ってしまっていいでしょう。OPなんて尾崎亜美ですからね(OPとEDのまとめ動画ありました)。作編曲は岩崎元是!彼は80年代に「岩崎元是&WINDY」のボーカルとして活動した後、90年代から現在までアニソン・ゲーソンを数多く手掛けてきました。特にナイアガラフォロワーとして知られ、大瀧詠一や山下達郎の様な「ウォール・オブ・サウンド」をアニソン界に数多く残しています同時期のアニメ「モジャ公」ED「恋人が宇宙人なら」(1995)は必聴です。

現在、アニメ版「水色時代」は配信もレンタルもなく、筆者はリアルタイムで何度か目にしただけなのですが、このEDには「女児アニメを1話見終えた後にダンスミュージックのEDが流れ出す良さ」が詰まってますね…。

また、1996年には女児アニダンスミュージックED史的に注目すべき作品が放映開始します。『りぼん』原作の「こどものおもちゃ」(以下「こどちゃ」)です。
Still Small Voice - パニック! (1996)(こどものおもちゃ初代ED)

まずは初代EDから。かなりFunk寄り(Acid Jazz寄りというべきでしょうか?)なNew Jack Swingに仕上がっています。

知念里奈 - PINCH -Love Me Deeper- (1997)(こどものおもちゃ3代目ED)

さらに、3代目EDは90年代R&B寄りなクールなNew Jack Swingに。歌唱は当時デビューしたばかりの知念里奈です。編曲は松井寛です。彼はR&B・Funk系のアレンジを得意とし、この翌年にはMISIAを手掛け、近年では東京女子流の編曲やRemixを数多く担当しています。

New Jack Swingとは80年代後半にシンガー兼プロデューサーのTeddy Rileyによって生み出されたR&Bのサブジャンルで、独特のハネたビートが特徴です。このジャンル自体は80年代後半から90年代前半が最盛期で、J-PopにおいてはZoo「Choo Choo Train」(1991)がUS直輸入のリアルタイムな和製New Jack Swingです。

なので96年にNew Jack Swingと言うと、時代遅れな印象を持つかもしれませんが、実は最盛期を過ぎた後も90年代を通してポップスやアイドルソングなどによく見られるアレンジとして残ることになりました。New Jack Swingを取り入れた日本のアイドルグループといえばSMAPです。初のオリコンシングルランキング1位となった「Hey Hey おおきに毎度あり」や「がんばりましょう」「しようよ」などの94年〜95年のシングル群がNew Jack Swingでした。

96年4月放映開始の「こどちゃ」は恐らくその影響下でNew Jack Swingを採用していると思われますが、96年と言えばSPEEDデビューの年でもあります。SPEEDは96年8月に「BODY & SOUL」でデビュー。11月には2ndシングル「STEADY」をリリースし、両曲共にバリバリのNew Jack Swingです。
そして、知念里奈(SPEEDと同じ沖縄アクターズスクール出身!)が歌う「こどちゃ」3代目ED「PINCH -Love Me Deeper-」が初放映されたのは97年9月、その翌10月にはSPEED最大のヒット曲となった「White Love」がリリースされます。「White Love」も列記としたNew Jack Swingです。

以上のように時系列で追うと「こどちゃ」のNew Jack Swing路線は、SPEEDの登場から大ヒットまでの時系列とがっちり同期しており、時流を捉えた路線だったと言えます。(さらに付け足せば、USでも男性スーパーアイドルグループBackstreet Boysが96年4月に「Get Down」をリリースし、そのライバルグループであるNSYNCも96年10月に「I Want You Back」をリリースしています。日米共にアイドル系New Jack Swingの最盛期にあったのです)

そして翌1998年、女児アニダンスミュージックED史上に残る大名曲を引っさげて、「カードキャプターさくら」が始まります。
広瀬香美 - Groovy! (1998)(カードキャプターさくら クロウカード編 ED)

この楽曲は広瀬香美の13thシングル。当時の広瀬香美は既にシンガーソングライターとして大成しており、同年には最初のベストアルバムがリリースされています。なんと当初はOPの「Catch You Catch Me」も歌う予定だったとか。

「Groovy!」はいわゆるディスコソングですが、この手のアレンジは特に「スウェイビート」と呼ばれ、数多く模倣されてきたパターンです。スウェイビートの源流となったのはCheryl Lynn「Got to be Real」(1978)です。大体この曲に雰囲気が似てればスウェイビートとされるのですが、バッキングのピアノのリズムがスウェイビートを特徴付けるとされます。

このEDは多くの皆様にも「女児アニメを1話見終えた後にダンスミュージックのEDが流れ出す良さ」を共感して頂ける名EDなのではないでしょうか?どうですか?(そうですよねぇ!?)

で、90年代の最後にもう1曲紹介しなければならない曲があります。1998年「ひみつのアッコちゃん(第3作)」の「わたしの歌を聴いてほしい」です。
白木由美/TAKING VITAMIN J - わたしの歌を聴いてほしい (1998)
(ひみつのアッコちゃん(第3作)前期ED)

作編曲はJADOESの藤沢秀樹、またの名をダンス☆マンです。彼はこの翌年にモーニング娘。「LOVEマシーン」(1999)の編曲を手掛け、ハロプロ黄金期を築いた名曲の数々を生み出していくことになります。
「わたしの歌を聴いてほしい」は、当時人気絶頂だった安室奈美恵(及びTKサウンド)を感じさせる部分もありますが、根底には70〜80年代のDisco、Soul、Funkの素養があり、次々に繰り出される展開と、溢れるポップネス、ラップパートなど、後のダンス☆マン節が詰まっています。

90年代はこんなところでしょうか。決してダンスミュージックが主流であったとは言えませんが、「セーラームーン」「カードキャプターさくら」と言った少女漫画原作アニメを代表する作品のEDに、ダンスミュージック志向の楽曲があったことは特筆に値するでしょう。

そして時代は、00年代へと移ります。

ii. 冬の00年代

いきなりですがまとめると、00年代は「女児アニダンスミュージックED史」における「冬の時代」となりました。

2000年、名曲「Groovy!」を生んだ「カードキャプターさくら」が放映終了すると、同枠で同じく『なかよし』原作の「だぁ!だぁ!だぁ!」が放映開始します。このEDは女児アニダンスミュージックED史上に残る結構なキワモノとなっております。
TRF - BOY MEETS GIRL DA!DA!DA! Remix (2000)(だぁ!だぁ!だぁ!1期ED)

なんとTRF「BOY MEETS GIRL」(1994)のスーパーユーロビートRemixです。女児アニダンスミュージックED史に小室哲哉の影。原曲でもTKサウンド全開のギラギラした曲なのに、リードシンセが大音量でキックもデカくなってBPMも上がってオケヒもマシマシでかなり濃い味です。当時のパラパラブームを反映した一曲と言えます(「名探偵コナン」のOPでコナンくんがパラパラを踊っていたのも同じく2000年でした)。ダンパ時代は重宝したとか。

また、隠れた名曲として2001年の『ちゃお』原作「Dr.リンにきいてみて!」のEDも紹介しましょう。
AiM - 誰より… (2001) (Dr.リンにきいてみて! 前期ED)

いい感じのR&Bです。この時代になると流石にNew Jack Swing感は薄くなりますが、「こどちゃ」の路線を思わせるR&B曲です。作編曲の湯浅公一は、後にモーニング娘、Berryz工房、℃-ute、あぁ!などのハロプロ楽曲を手掛けていきます。

そして、00年代前半の女児アニダンスミュージックEDとして避けて通れないのが2000年放映開始の「とっとこハム太郎」シリーズです。
team Le TAO - 200%のジュモン (2000)(とっとこハム太郎 1代目ED)

サンバです。サンバなのですが、この曲がここまで紹介してきた楽曲と明らかに違うのは、キッズソングテイストが強いと言うことでしょう。当たり前です!女児アニメなんだから!これは「ハム太郎」が『小学二年生』原作であり、少女漫画雑誌原作よりも低年齢層向けだからに他なりません。

「ハム太郎」は00年代前半に大ブームを巻き起こし、2001年には当時人気爆発だったミニモニ。が「ミニハムず」名義で劇場版主題歌「ミニハムずの愛の唄」をリリースしたのはあまりにも有名です。ミニモニ。自体も強烈なキッズソング路線だったため、相性は抜群でした。また同時期に人気を博した「おジャ魔女どれみ」シリーズも、特にOPはキッズソングテイストが強いです。後の時代になると、「キッズソングテイスト」とダンスミュージックが如何に同居していくのかが1つのキーポイントになっていくので、覚えておいて下さい。

「ハム太郎」からもう1曲。後年のシリーズ最後のEDですが、こちらは遊び心溢れる1曲に。
ハムちゃんず - ハムハムトレイン (2005)「とっとこハム太郎 7代目ED」

かの有名なシュガー・ベイブ「DOWN TOWN」(1975)に限りなく近い1曲となっております。それもそのはず、作編曲は水色時代ED「約束はAlright!」でも紹介した岩崎元是です。ナイアガラ・フォロワーである彼の遊び心全開と言った趣です。彼は「200%のジュモン」やキャラソンも含め「ハム太郎」楽曲を全面的に手がけています。


と、ここまで2000年頃の女児アニメを紹介してきましたが、これ以降の00年代の女児アニダンスミュージックEDは非常に少ないです。

00年頃の人気作と言えば、先程も名前を挙げた「おジャ魔女どれみ」シリーズですが、そのEDはダンスミュージックとはまるで真逆なバラードです。続く「明日のナージャ」も20世紀初頭のヨーロッパが舞台ですから、ダンスミュージックはありません。また「アッコちゃん」に続く東映リバイバル枠「Cosmic Baton Girl コメットさん☆」でもダンスミュージックは採用されず。NHKアニメ「コレクター・ユイ」「カスミン」もEDは該当せず。

00年代前半の『なかよし』原作人気アニメ「東京ミュウミュウ」と「ぴちぴちピッチ」のEDもダンスミュージックには該当せず。『りぼん』原作の「超GALS! 寿蘭」「満月をさがして」「ウルトラマニアック」「愛してるぜベイベ★★」のEDはR&B調が多いのですが、どれもやはりバラードです。また、同時期の『ちゃお』を代表する「ミルモでポン!」シリーズは、EDがかなりの数があるにも関わらずダンスミュージック調なのはパパイヤ鈴木の「踊る魔法のおそうざいビョ~ン 」のみで、しかしこの楽曲もアレンジがちょっと弱い。また、「ミルモでポン!」の楽曲もやはりキッズソング色が強く、特にこれ以降の『ちゃお』は対象年齢が低年齢化していったことにも触れておきましょう。その他では『なかよし』原作の「ふぉうちゅんドッグす」も制作スタッフが「世界名作劇場」シリーズの流れを汲む興味深い作品でしたが、ダンスミュージックには該当せず。キャラものメディアミックス作品「ぷるるんっ!しずくちゃん」も該当せず。

00年代後半に人気を博した「きらりん☆レボリューション」(以下きらレボ)と「しゅごキャラ」はそれぞれハロプロとのタイアップで、なおかつ1クールごとにEDが変わるので曲数は多いのですが、ダンスミュージックと言えるのは「きらレボ」シリーズ終盤の2曲のみです。これについては後述します。『なかよし』の人気作品「シュガシュガルーン」はOPEDを全曲小西康陽が手掛けていますが、ダンスミュージックとしては取り上げられません。同時期にはサンリオの「おねがいマイメロディ」シリーズもありましたが、やはり該当なし。「ふしぎ星の☆ふたご姫」は2期EDの「学園天国」カヴァーが目を引きますが該当せず。「おとぎ銃士 赤ずきん」もバラード系。「出ましたっ!パワパフガールズZ」には「真夜中のドア」と言うタイトルだけ見ると「おや?」と思うED曲がありますが、アレとは全く関係ありません。

この時代にあってオーパーツ的存在と言える楽曲を3曲紹介します。
1曲目は「セーラームーン」「おジャ魔女どれみ」などのシリーズディレクターとして知られる佐藤順一監督の2003年作品「カレイドスター」から、2期ED「escape」です。
r.o.r/s - escape (2003)(カレイドスター 新たなる翼 ED)

2Stepアニソンとして絶対外せないこの曲。歌唱はアニソンSSWとして知られる奥井雅美と米倉千尋のユニットr.o.r/s。作編曲はJ-Pop、アイドル、声優ソングを幅広く手掛ける田辺恵二です。

2Stepとは90年代末頃に登場したUKのクラブミュージックの1種です。80年代にUSで生まれたHouseまたはGarageがUKに渡りUK Garageとして独自に進化し、90年代末に4つ打ちとは異なるビートに変化した派生ジャンルです(さらに00年代以降はまたこれが変化してDubstepになっていきます)。

2StepがメジャーになったのはUKのR&B歌手Craig Davidによる部分が大きいでしょう。まず1999年にArtful Dodger feat. Craig David名義での「Re-Rewind」(1999)がヒットし、翌年にソロ名義でシングル「Fill Me In」(2000)をリリース。同年のアルバム「Born to Do It」(2000)が全世界で800万枚を売上げ、その存在感を示しました。
日本で2Stepに反応したのがm-floです。元々US方面のHipHop/R&Bをやってた彼らですが、2Stepを取り入れた2001年の9thシングル「come again」がヒットし、彼らの代表曲の1つとなりました。現在でも国内のクラブアンセムとして知られています。

「escape」もそんな潮流を反映した1曲です。こうしたジャンル的な流れを踏まえると、本記事の最初に紹介した「美少女戦士セーラームーンSuperS」EDの「“らしく”いきましょ」のHouse/Garageの先に、2Stepの「escape」が現れてくるのは面白いですね。

2曲目はあの「デ・ジ・キャラット」シリーズから、女児アニメとして制作された2003年の「デ・ジ・キャラットにょ」のED。
Prière - EQUALロマンス (2003)(デ・ジ・キャラットにょ 前期ED)

00年代前半に子供時代を過ごした方なら、誰もが「ちょっと異質な存在」として記憶しているであろう「ギャラクシーエンジェル」を初めとしたニチアサのブロッコリー枠。後に深夜33時アニメなどと呼ばれたりもしたあの枠ですが、「デ・ジ・キャラットにょ」は明確に女児向けを想定して制作されており『ちゃお』でもコミカライズされていました。

このEDは一聴すると00年代当時のラウンジ系クラブミュージックにも通じるハウスアレンジの楽曲ですが、実はこれ「らんま1/2」(1989)のEDのカバーです(何故?)。この編曲を手掛けたのは70年代から第一線で活躍するJ-Pop随一のアレンジ職人、船山基紀です。

3曲目は2005年の『りぼん』原作「アニマル横町」EDの「ファンタジスタ★ガール」です。
the Indigo - ファンタジスタ★ガール (2005)(アニマル横町 前期ED)

サバービア系の爽やかなソウルナンバーとなっています。the Indigoは00年代に活動していたグループで主にバラエティ番組のEDやCMソング、深夜アニメに楽曲提供を行っていた様です。西寺郷太とコラボしていたり、CDジャケットにはCECILやorange pekoeのジャケットでお馴染みのイラストレーター、カンバラクニエを起用している辺りから立ち位置が見えてくるでしょうか?作曲面を担ったメンバーの市川裕一は、後にAKB48やSKE48などに数多くの楽曲を提供しています。

本格的に女児アニダンスミュージックEDが復活し始めるのは、00年代も終わりに差し掛かった2008年以降です。
まず、『ちゃお』原作の「きらレボ」シリーズ3年目「きらりん☆レボリューション STAGE3」のこのED曲。
MilkyWay - ガムシャララ (2008)(きらりん☆レボリューション STAGE3 第3クールED)

「きらレボ」シリーズの12代目ED。「きらレボ」楽曲は、かの有名なOP「バラライカ」に代表されるようなエキゾチック(民族音楽的)なアレンジが大きな要素の1つでした。「ガムシャララ」もラテン感を全面に押し出し、パーカッションとホーンのオブリガードもノリがよく、踊れる楽曲となっています。(0:10や1:29からの間奏のメロを聴くと、後のAKB48「フライングゲット」(2011)が連想されますね。連想されますね。)

月島きらり starring 久住小春 - はぴ☆はぴ☆サンデー!(2009)(きらりん☆レボリューション STAGE3 第3クールED)

「きらレボ」シリーズの13代目にして最後のED。作編曲は前山田健一です。ヒャダインであることを明かす以前の作品となります。彼がその影響を広言する渋谷系サウンドが押し出され、歌詞・PV共に松浦亜弥の「ね〜え?」(2003)を思わせる1曲です。同時にキックやベースには、既にブレイク後だった中田ヤスタカプロデュースのPerfumeによるテクノポップの影響が見られます。

また、「きらレボ」で言及しておきたいのは、10年代の女児向けアイドルアニメでスタンダードになる「現実のアイドルが作中アイドルの歌唱を担当するスタイル」の元祖である点です(単発での先例はあるかも知れませんが、TVシリーズで年間通して連動した企画は「きらレボ」が初でしょう)※1。主人公・月島きらりの声優を務めたのは当時のモー娘。の久住小春。歌唱も「月島きらり starring 久住小春(モーニング娘。)」名義になっています。作中アイドルグループのMilkyWayの各キャラクターもハロプロ研修生(ハロプロエッグ)のメンバーが担当しています。
(こうしたアイドルアニメとの連動企画について、『ライムスター宇多丸のマブ論CLASSICS アイドルソング時評2000-2008』収録の短評「"演じる"アイドルたち―「劇中キャラ」ブームを考える」(2007)で、当時のアイドルファン視点から論じられていて興味深いです)。

※1 アイドル歌唱担当の元祖は「魔法の天使クリィミーマミ」とのご指摘を頂きました。また「超時空要塞マクロス」のリン・ミンメイ(飯島真理)も該当するとのご指摘も、全くその通りです!視野狭窄に陥っておりました。ここでは後の「アイカツ!」「プリパラ」に直接通じる路線という事でご理解下さい。(10/12 13:12追記)

「きらレボ」終了後、同枠で同じく『ちゃお』原作の「極上!!めちゃモテ委員長」が放映され、R&B調のEDが登場します。
MM学園合唱部 - キレイになりたい (2009)(極上!!めちゃモテ委員長 第1クールED)

「極上!!めちゃモテ委員長」は「Dr.リンにきいてみて!」から9年間続いたテレビ東京系『ちゃお』アニメ枠の最後の作品となりました。歌唱は「きらレボ」に続きハロプロの流れを汲むMM学園合唱部(正確にはハロプロに続くつんく♂プロデュースの「NICE GIRLプロジェクト!」所属です)。作編曲は奇しくも「Dr.リンにきいてみて!」EDと同じ湯浅公一です。ハロプロ方面から再び女児アニEDに舞い戻ってきた訳ですね。両曲を比較すると90年代R&Bからすっかり00年代R&Bに変わっていて時の流れを感じさせます。

以上のように00年代の女児アニダンスミュージックEDは、初頭と2008年以降を除く00年代中期に大きな空白期があり「冬の時代」だったと言わざるを得ません。

しかし女児アニダンスミュージックEDは、女児アニメの歴史の重要なポイントで必ず頭をもたげてくるのです。

多分皆さんもうお気付きのように、ここまで数多くの00年代女児アニメに触れましたが、敢えてあのシリーズの名前は出していませんでした。

「プリキュア」です。

iii. プリキュアダンスの黎明

2004年放映開始の「プリキュア」シリーズは、00年代から10年代にかけての女児アニメの最重要シリーズと言う位置づけになるでしょう。

女児アニダンスミュージックED史においても、「プリキュア」は「冬の00年代」における数少ないダンスミュージックEDの担い手の1つであり、後進の女児アニメシリーズ達に影響を与え、後の「黄金の10年代」の萌芽となる重要な役割を果たしていきます。

転機となったのは2006年9月、「ふたりはプリキュア Splash Star」の後期ED「ガンバランスdeダンス」です。
五條真由美withフラッピ&チョッピーズ - ガンバランスdeダンス (2006)
(ふたりはプリキュア Splash Star後期ED)

「ガンバランスdeダンス」はイントロの4つ打ちキックとシャッフルハイハット、ストリングスアレンジが、First Choice「Dr.Love」(1977) の様なサルソウル系のダンスクラシックを思わせます。0:08や0:58からのサビへのブリッジなどは名曲「Am I The Same Girl」を意識しているでしょう。

同時にキッズソングテイストが強いのも確かしょう。これは「プリキュア」シリーズが、「おジャ魔女どれみ」や「ハム太郎」によって市場として大きく成長した未就学児を中心とする低年齢層をメインターゲットとしているためです。

続く「Yes!プリキュア5」「Yes!プリキュア5 Go Go!」の後期EDでも同曲が歌詞・アレンジ違いで採用されます。
宮本佳那子 - ガンバランスdeダンス~夢見る奇跡たち~ (2007)(Yes!プリキュア5 後期ED)

キュア・カルテット - ガンバランスdeダンス~希望のリレー~ (2008)(Yes!プリキュア5 Go Go! 後期ED)

この3年間に渡る「ガンバランスdeダンス」シリーズが、後の3DCGを用いた「プリキュアダンスED」の元祖となっていくわけですが、楽曲・映像共に大きく変わったのが、続く2009年の「フレッシュプリキュア!」(以下フレプリ)でした。
林桃子 - You make me happy! (2009)(フレッシュプリキュア! 前期ED)

「You make me happy!」は後の10年代女児アニダンスミュージックEDの系譜を決定付けた歴史的なEDです。

「You make me happy!」では「ガンバランスdeダンス」にあったキッズソングテイストは削ぎ落とされ、軽快なファンクチューンに徹し、当時の言葉で言えば「アキシブ系」と表現するのがぴったりな楽曲です。実際、アキシブ系として評価の高い「トップをねらえ2!」OP曲、Round Table featuring Ninoの「Groovin' Magic」(2006)の影響は大きいと思われます。

この変化は「フレプリ」そのものが、様々な点でシリーズの刷新を狙って制作された作品であり、幅広い年齢層をターゲットに据えたことによるものです。

映像面でも新たな試みとして、EDで3DCGモデルのプリキュア達が踊る、後の定番スタイルが確立されます。国産の女児向けアニメとしては、2008年にして全編フルCGと言う極めて挑戦的な試みだった「きらレボ」3年目に続く3DCG導入となりました。3DCGにおける日本アニメ的な表現、特に美少女キャラ表現はまだまだ発展途上にあった時代ですが、プリキュア制作陣としては90秒間を年間2本のEDと言うフォーマットであれば3DCGを活用出来る手応えがあったようです(こちらの記事に詳しいです)。その後、2010年の「ひめチェン!おとぎちっくアイドル リルぷりっ」でも3DCGが一部で用いられ、2011年開始の「プリティー」シリーズと2012年開始の「アイカツ!」シリーズでは、毎週変わるライブシーンで3DCGを用いるのがスタンダードとなりました。「フレプリ」EDは後の時代の試金石として大きな意義があったと言えます。
(こうした3DCG活用の根底には、作画カロリーの高いダンスシーンとなると作画より3DCGの方がコストで勝ると言うメリットがあるようですが、そうした勘定を差し置いて挑戦的な試みが行われていくのも3DCGダンスシーンの魅力です)

楽曲の話に戻りましょう。「フレプリ」では後期ED「H@ppy Together!!!」も同様のファンクチューンを採用しています。
林桃子 - H@ppy Together!!! (2009)(フレッシュプリキュア! 後期ED)

翌2010年、「ハートキャッチプリキュア!」の後期EDではなんとゴスペルを取り入れています。
工藤真由 - Tomorrow Song 〜あしたのうた〜 (2010)(ハートキャッチプリキュア!後期ED)

また、この楽曲にはバックコーラスを務めたmickey-Tのメインボーカルによる全編英語詞の「Tomorrow Song (English Ver.)」が存在し、そちらはもう完全にゴスペル調になっています。
mickey-T - Tomorrow Song (English Ver.) (2010)

翌2011年の「スイートプリキュア♪」でもゴスペル路線を踏襲しています。
池田彩 - ワンダフル↑パワフル↑ミュージック!! (2011年) (スイートプリキュア♪前期ED)

これら一連のゴスペル路線は、日本においてゴスペルをポピュラーな存在した映画「天使にラブソングを…」の影響もあるでしょうが、クリスチャンミュージックの世界においてはこのくらいポップなゴスペルは割とスタンダードな存在であり、90年代から活躍するHezekiah WalkerJohn P. Keeなどの直輸入と言えるでしょう。

「ワンダフル↑パワフル↑ミュージック!!」で注目したいのは、過去2作のファンク、ゴスペルを踏襲しつつも、「You make me happy!」で一度は振り切ったアキシブ路線から、「ガンバランスdeダンス」の頃のキッズソング路線への揺り戻しを感じさせる点です。その後の「プリキュア」EDも、音楽的な流行を踏まえつつもキッズソングテイストを大事にしていったと言う意味で、脱「You make me happy!」の方向に進んだと言えます。

しかし「You make me happy!」の影響は、後続の10年代女児アニメ達に波及していきます。

iv. 黄金の10年代(1) - 「You make me happy!」以降

2011年、「プリティー」シリーズの初代アニメ「プリティーリズム・オーロラドリーム」が放送開始します。「プリティー」シリーズは1クールごとにEDが変わるパターンで、特筆すべきはavexとのタイアップを強く押し出している点でしょう。

「プリティーリズム・オーロラドリーム」からは、第2クールEDの「We Will Win! -ココロのバトンでポ・ポンのポ~ン☆-」と第4クールED「Everybody's Gonna Be Happy」を紹介しましょう。
東京女子流 - 「We Will Win! -ココロのバトンでポ・ポンのポ~ン☆-」(2011)(プリティーリズム・オーロラドリーム第2クールED)

勿論この曲は、アイドル戦国時代の真っ只中にファンク路線を打ち出してデビューした東京女子流の楽曲な訳ですから、彼女たちのアーティスト性が色濃く出た結果と見るべきです。しかしながら、女児アニダンスミュージックED史観で見ると「You make me happy!」のファンク路線に通じる1曲だとも言えます。

そして、第4クールED「Everybody's Gonna Be Happy」も「You make me happy!」以降を感じさせる軽快なファンクチューンになっています。
Prizmmy☆ - Everybody's Gonna Be Happy (2011)(プリティーリズム・オーロラドリーム第4クールED)

また「You make me happy!」以降と言うパラダイムで言うと、OP曲ながら「1000%キュンキュンさせてよ♥」も見逃せない1曲となっています。
プリティーリズム☆オールスターズ - 1000%キュンキュンさせてよ♥(プリティーリズム・オーロラドリーム後期OP)

しかしこの曲はOPなので「女児アニダンスミュージックED史」からは除外です。(そのこだわりは何?)

翌2012年、「プリティーリズム・オーロラドリーム」の直接の続編「プリティーリズム・ディアマイフューチャー」が始まります。

本作のEDは4曲ともEDM〜テクノポップ路線で、全曲が女児アニダンスミュージックEDに該当します。Prizmmy☆の「my Transform」も「Body Rock」も当時全盛だったガチガチのEDM路線なのですが、ここではPrizmmy☆に続く新グループPURETTYの楽曲を取り上げたいと思います。
PURETTY - チェキ☆ラブ (2012)(プリティーリズム・ディアマイフューチャー第2クールED)

PURETTYは韓国の大手事務所DSPメディアに所属していたK-Popグループで「プリティーリズム・ディアマイフューチャー」と連動してデビューしました。作中にもPrizmmy☆の4人と同じく、PURETTYをモデルとした韓国人留学生5人のキャラクターが登場します。

2012年にしてK-Popと言うアプローチは、勿論当時から東方神起や、少女時代、KARAが日本で大きな人気を得ていたからに他なりませんが、あれから更にK-Popの勢いが増し、BTSがグラミーのステージに立ち、韓流が日本の若年層から絶大な支持を集めるまでに至った現在の視点で見ると「早過ぎた」と言うのが正直なところです。

少し本題から逸れますが「女児アニダンスミュージックED史」の未来の話として、2020年代には「もう一度K-Popから日本の女児アニメに何らかのアプローチがあるのではないか?」と言う予想を立てておきます。もしかすると「女児アニダンスミュージックED史」においてPURETTYの存在がオーパーツになる日が来るかもしれません。(ちなみに、00年代にDSPメディアと双璧を成したSMエンターテインメントが製作した韓中合作K-POPアイドルアニメが「シャイニングスター(샤이닝스타)」(2017)です)

閑話休題。

「You make me happy!」以降、「冬の時代」とは比べ物にならないほど急激に数を増した女児アニダンスミュージックEDですが、ここで更に1段ギアを上げていくことになります。2012年10月「アイカツ!」が放映開始します。
わか・ふうり・すなお from STAR☆ANIS - カレンダーガール (2012)(アイカツ!前期ED)

まず衝撃的なのはそのイントロです。叩きつけるようなキックと共に鳴らされるスラップベース、ピッチシフトされ聞き取れるギリギリ程度に切り刻まれたヴォーカルエディット、コードを鳴らす上モノのリリースはバッサリ切られ、カットアップの様な印象を与えます。

このイントロだけで「なんかこれまでとは違うものが来た」と思わせる驚異のED曲「カレンダーガール」の登場です。作編曲はもはや説明不要、MONACAの田中秀和です。

とは言ってみたものの、「カレンダーガール」がどう「これまでとは違う」のかについては、また別の機会に書きたいと思います。イントロなどでのボーカルエディットや、同時期のアイカツ楽曲「prism spiral」にみられるカットアップには明確な先駆者達が存在し、彼らを意識していると思われるのですが、その話は別の視座に立ってしなければならないので別途まとめさせて下さい。

むしろここで言えるのは、突然変異のように思える「カレンダーガール」も、女児アニダンスミュージックED史観ではファンク路線を踏襲していると言う意味で「You make me happy!」以降と言う大きなパラダイムの中にあると言うことです。特にアイカツ楽曲は全体的にアキシブ系と言えるような要素が強く、その点でも「You make me happy!」以降を感じさせます。「プリキュア」との比較で言えば、バンダイとしては「プリキュアを卒業した年齢層の女児をアイカツ!に取り込みたい」(意訳)と言う狙いがあったため、「プリキュア」ではキッズソング路線に揺り戻しをかけたのに対して、「アイカツ!」では「You make me happy!」路線を行ったと言う対比が成り立ちます。

「You make me happy!」以降にわかに増えたファンク路線に、田中秀和が広言するダンス☆マンやEarth, Wind & Fireからの影響がマッチし、先に触れたこれまでのアニソンには見られなかった実験的な手法も取り入れられ、それら全てが上手く噛み合ったのが「カレンダーガール」と言う楽曲だったのでしょう。

そして「プリキュア」「プリティーリズム」「アイカツ!」の10年代3大女児アニメが出揃い(「ジュエルペット」は?)、女児アニダンスミュージックED界は苛烈を極めていきます。

v. 黄金の10年代(2) - ダンスが当たり前の時代

中学校におけるダンス教育の男女共に必修化されたのが2012年。その影響があるのかどうかは定かではありませんが、女児アニダンスミュージックED史は「黄金の10年代」と言うべき繁栄の時代を迎えます。

2013年以降はもはや女児アニメのED(延いてはOPや挿入歌)にダンスミュージック要素が入るのは珍しいことではなくなってきます。その中でどれだけバラエティに富んだ事ができるかが志向され始め、数々の挑戦的な試みが見られるようになります。

ここからは年代順にガンガン曲紹介していきたいと思います。

吉田仁美 - この空の向こう (2013)(ドキドキ!プリキュア前期OP)

まずは2013年2月放映開始の「ドキドキ!プリキュア」前期OP。先述のように「プリキュア」EDはキッズソング路線へ揺り戻しをかけて来た訳ですが、「この空の向こう」ではPerfume的なテクノポップを取り入れながらも、キッズソングテイストを失わないバランス感に着地しています。

Prism☆Box - RainBow×RainBow (2013)(プリティーリズム・レインボーライブ第1クールED)

続いて2013年4月には「プリティーリズム・レインボーライブ」が開始します。本作はなんといってもOPがTRFの往年の名曲カヴァーである点が目を引きますが、EDも負けてはいません。「RainBow×RainBow」はEDMとトランスが合わさったサビとラップパートが目まぐるしく入れ替わる楽曲で、ここまで来るとavexサウンドとでも言うべき独特のダンスミュージック感になっています。

この楽曲に「プリキュア」や「アイカツ!」と言った他の女児アニEDとの差異を見出すとしたら、やはり圧倒的にアイドルソング色が強いことでしょう。本編EDではカットされていますが、フルバージョンのイントロでメンバーの名前を挙げていくパートなどはアイドルソングならではです。

わか・ふうり・すなお・れみ・もえ・えり・ゆな・りすこ from STAR☆ANIS - オリジナルスター☆彡 (2013)(アイカツ! 2ndシーズン前期OP)

「アイカツ! 2ndシーズン」のEDも「カレンダーガール」と同じく田中秀和が手掛けたファンク路線の楽曲。「カレンダーガール」と比べると、目まぐるしく変わる展開や合いの手の多用など、ダンス☆マンと言うか「あの頃のモー娘。」感をより強く打ち出しています。その意味ではこちらもアイドルソング色がより強調された1曲と言えますね。

Prizmmy☆ - Jumpin'! Dancin' (2014)(プリパラ 第1クールED)

「プリティー」シリーズがリニューアルし、後に絶大な支持を集めることになる「プリパラ」が開始します。「プリパラ」からは同じくavex所属の声優アイドルユニットのi☆Risがキャラクターの声優及び歌唱を担当していきますが、Prizmmy☆もしばらくEDを提供します。
「Jumpin'! Dancin'」ではサビはファンク路線を踏襲したホーンセクションが鳴る爽やかなアレンジですが、サビ後はピアノバッキングにユートビートなリードシンセを乗せてEDMもラップも全部入れたれってな感じの特盛avexサウンドとなっています。

Prizmmy☆ - I Just Wanna Be With You〜仮想(ヴァーチャル)と真実(リアル)の狭間で〜 (2015)(プリパラ 第3クールED)

続いても「プリパラ」から。女児アニダンスミュージックED史に影を落とし続けてきたあの人物が姿を現します。作曲クレジットに小室哲哉の4文字!「ナースエンジェルりりかSOS」から20年目にして遂にご本人の登場です。編曲もPrizmmy☆楽曲の定番だったEDM要素は加えず、往年のTKサウンドを思わせるアレンジに徹した1曲となっています。

もな・るか・みき from AIKATSU☆STARS! - チュチュ・バレリーナ (2015)(アイカツ! あかりGeneration 2代目ED)

女児アニダンスミュージックED史的にはPrizmmy☆に続くEDM路線、アイカツ楽曲的にはワブルベースを取り入れた「永遠の灯」(2014)のゴシック路線を推し進めたと言える「チュチュ・バレリーナ」。この曲の最大の特徴は全編16ビートでハーフのリズムを取っているところでしょう。これ自体はDubstepのビート感を志向していると思われますが、近年のアニソンでも当たり前になったFuture BassやTrapのビートに通じるとも言えます。

しかし、サビで4つ打ちになることもなく、ビルドアップ展開も無しで、全編このビートで通すストイックなアレンジは、アニソンとしては相当珍しいと思います。このアレンジを手掛けたのはagehaspringsグループのonetrap所属、成瀬裕介です。筆者は以前の記事で、彼が作編曲を手掛けた「オトナモード」(2014)をJ-Popに残るエポックメイキングと評しましたが、「チュチュ・バレリーナ」も相当尖っていますね。

もな・るか・みき from AIKATSU☆STARS! - lucky train! (2015)(アイカツ! あかりGeneration 3代目ED)

MONACAの田中秀和が手掛けてきたファンク路線を、agehasprings所属のIntegral Cloverが引き継いだ初代「アイカツ!」最後のEDです。この曲についても以前解説した通り、ダンスクラシックLoleatta Hollowayの「Love Sensation」(1980)を思わせるSalsoul調の楽曲となっています。「アイカツ!」シリーズのファンク路線の中でも際立ってゴリゴリなスラップベースが印象的です。

Prizmmy☆ - LOVE TROOPER (2016)(プリパラ 2ndシーズン 第4クールED)

Prizmmy☆が八王子Pと組んだ1曲。ワブルベース鳴りまくりのバキバキのBrostep系EDMサウンド。ボーカルにオートチューンがかかっているのも八王子P節ですね。
「プリティーリズム・オーロラドリーム」から5年間に渡り、「プリティー」シリーズのEDを歌って来たPrizmmy☆ですが、これが最後の提供曲となりました。以降のEDはi☆Risがメインになっていきますが、Prizmmy☆とは一転してダンスミュージックからは距離を置いていくことになります。

るか・ななせ・かな・みほ from AIKATSU☆STARS! - episode Solo (2016)(アイカツスターズ! 前期ED)

世界観を一新した「アイカツ!」シリーズ2代目「アイカツスターズ!」の初代EDは、EDM路線を更に推し進めた1曲。やはり耳を奪われるのは0:15からのSkrillex「Scary Monsters And Nice Sprites」(2010)さながらのワブルベースとサイドチェインコンプを深くかけたアレンジの派手なBrostep展開でしょう。先程紹介したPrizmmy☆「LOVE TROOPER」と比較すると、パートごとのメリハリの付け方が違いますね。

作編曲はMONACAの石濱翔です。彼は「アイカツ!」2年目前期OP「KIRA☆Power」(2013)でもEDM路線のアレンジを見せていましたが、特に「episode Solo」以降は「アイマス」シリーズで関わることの多かったTAKU INOUEと並んでクラブミュージック路線を追求して行きます。(ご参考→「デレマス曲から辿るFuture BassとJersey Club 〜 Taku Inoue・石濱翔の楽曲から」)

Shiggy Jr. - key of life (2016)(リルリルフェアリル〜妖精のドア〜 前期ED)

2016年にスタートしたサンリオの「リルリルフェアリル」シリーズからShiggy Jr.による初代EDを紹介しましょう。この楽曲はPerfumeを通過しながらも、Pet Shop BoysやWham!の様な80年代シンセ・ポップの匂いを感じさせる1曲となっています。Shiggy Jr.はメジャー進出した80年代感を打ち出したバンドとしては、割と早い部類だったと思いますが、2019年に解散してしまいましたねぇ。

宮本佳那子 - シュビドゥビ☆スイーツタイム (2017)(キラキラ☆プリキュアアラモード 後期ED)

ダンスミュージックと言う意味ではしばらく鳴りを潜めていた(?)プリキュアからかなり面白い楽曲が飛び出します。イントロを聞いただけですぐ分かるほど思いっきりElectro Swingです。

Electro Swingとは30年代〜40年代のレトロなSwing Jazzをサンプリングしたビートミュージックのことです。ビートはHip HopからHouse、Trapを取り入れたEDMまで多岐にわたります。 代表的な楽曲としてはElectro Swingの第一人者であるParov Stelarの「Booty Swing」(2012)があります。「シュビドゥビ☆スイーツタイム」に近い雰囲気の曲を挙げるとしたら、前年のOdd Chap「The Little Man Who Wasn't There」(2016)とかでしょうか。このジャンルは大体がこんな感じなので(マジでどれもこんな感じです!)、どれが元ネタと言うのは無いです。

作編曲はR・O・Nです。彼は前年の深夜アニメ「ステラのまほう」ED「ヨナカジカル」(2016)でも、当時まだ珍しかったFuture Bassを取り入れて話題となりました。

りさ,みほ from AIKATSU☆STARS! - Bon Bon Voyage! (2017)(アイカツスターズ! 星のツバサ編 前期ED)

「アイカツスターズ! 」2年目からは公式にTropical Houseと言うワードも飛び出したこちらの楽曲。作編曲は「episode Solo」に続いて石濱翔です。

Tropical Houseとは10年代後半にポストEDM的に流行ったジャンルです。筆者は正直このジャンルには明るくはないのですが、調べるとKygo「Firestone ft. Conrad Sewell」(2015)がこのジャンルの代表曲の1つであり、模倣されてきたスタイルとされています。爽やかなPluck系のシンセを使った南国風のHouseですね。BPMも110前後とゆったりめです(「Bon Bon Voyage!」自体はBPM128ありますが)。

ちなみにTropical Houseが流行した背景には、多くのリスナーがもうバキバキのEDMには飽きていたと言うのもありますが、アメリカ各州で合法化された嗜好品大麻を吸って踊るにはTropical Houseの様なゆったりしたBPMの曲が方が良かったという理由があったりするそうです。

夏川椎菜 - フワリ、コロリ、カラン、コロン (2017)(プリプリちぃちゃん!! 第2クールED)

夕花ちゃんのダンス作画の可愛さが話題となった『ちゃお』原作アニメ「プリプリちぃちゃん!!」のED。特に第2クールEDは楽曲的にもPerfume系テクノポップに仕上がっています(この記事、テクノポップになると何でもPerfumeって言ってるのが安易ですね(自戒))。

カレン・ミライ from BEST FRIENDS! - Believe it (2018)(アイカツフレンズ! 前期ED)

「アイカツ!」シリーズ3作目となる「アイカツフレンズ!」から、音楽を手掛けたDigz, Inc.の真価が発揮された楽曲。MISIA「包み込むように」(1999)、加藤ミリヤ「夜空」(2004)、BONNIE PINK「A Perfect Sky」(2006)、Crystal Kay「こんなに近くで…」(2007)等など…、往年の邦R&Bヒット曲の数々を想い起こさせる1曲となっています。

ひびき from BEST FRIENDS!- Be star (2019)(アイカツフレンズ!〜かがやきのジュエル ED)

続いても「アイカツフレンズ!」から2年目のED。遂にと言うべきか、やっとと言うべきか、女児アニダンスミュージックEDにFuture Bassがやって来ました。国内におけるこの手のキメ系Future Bassの歌モノとしてはPerfume「If you wanna」(2017)がメジャーな訳ですが、この「Be star」はクラブシーンで支持の篤かったRIRIの「RUSH」(2017)の存在を感じさせます。

この曲の変わった点として、0:24以降や0:58以降に見られるキックをクラーベで置いてスネア(またはスナップ)を4拍目に置くリズムです。これはFuture Bassではほぼ見ないパターンです。
このリズムがよく使われるのはジャマイカのDancehall Reggae(ダンスホールレゲエ)です。ダンスホールレゲエとは、まぁ早い話がダンスパーティー用のレゲエです。レゲエと言う文化は結構複雑なので細かいことは端折りますが、ダンスホールレゲエでは複数のアーティストが同じトラック使いまわす文化があり、そのトラックのことをRiddim(リディム)と呼びます。「Be star」の件のリズムパターンは、ダンスホールレゲエの古典といえるAdmiral Bailey「Punnany」(1986)のPunnany Riddimが原型です。このリズムパターンは2000年頃にヒットしたBeenie Man「Who Am I」(1997)のPlayground Riddimや、Sean Paul「Like Glue」(2001)のBuy Out Riddimでも使われ、世界的に知られるようになりました。単純ながら強烈な裏ノリで踊れるリズムですね。

「Be star」が何故このようなリズムを取り入れているのかについては完全に憶測ですが、アニクラで人気の高いアイカツ楽曲「Kira・Pata・Shining」がReggaeton(レゲトン)のリズムを使っているのを意識してダンスホールレゲエのリズムを取り入れた、とかでしょうかね?
(レゲトンはプエルトリコ発のレゲエとHipHopを融合させた別ジャンルです。しかしながらレゲトンのリズムもやはりダンスホールレゲエのBam Bam RiddimやDembow Riddimに由来します)

吉武千颯 - 教えて...!トゥインクル☆ (2019)(スター☆トゥインクルプリキュア 後期ED)

「ネオ80's」がテーマの1つとなったスター☆トゥインクルプリキュアのレトロフューチャーなED。前期ED「パペピプ☆ロマンチック」も勿論大好きで、どっちにしようかと思ったんですが、映像で選んでこちらにしてしまいました。Vaporwave的とまでは行きませんが、ネオンデザイン満載の映像は「早過ぎたアイドル」Especiaを想い起こさせます。楽曲も昭和のアイドルソングを彷彿とさせる哀愁漂うメロディが魅力な名EDです。Berry's工房の「恋の呪縛」「スッペシャル・ジェネレ〜ション」の昭和歌謡路線を思い起こさせますね。

ブランニュー☆ガールズ - Brand New Girls (2019)(キラッとプリ☆チャン 2年目 第2クールED)

「プリティー」シリーズから久々の登場。2019年の「キラッとプリ☆チャン」2年目のEDはなんとNew Jack Swingです。覚えてらっしゃるでしょうか?この記事の最初の方で1996年の「こどちゃ」のNew Jack Swing路線の話を長々と書きましたが、その23年後、再び女児アニダンスミュージックED史にNew Jack Swingが現れました。これが平成レトロ感覚と言うやつですね。
まぁこういうのは何が元ネタと言う話ではないのですが、大黒摩季の「太陽をつかまえに行こう」(1995)がこのくらいのテイストですね。

時代が一周したところで10年代の「女児アニダンスミュージックED史」も一区切りでしょうか。

vi. まとめ

以上、1995年から2019年まで24年間の歴史を追いました。

最初に述べたように、この歴史は筆者の「女児アニメを1話見終えた後にダンスミュージックのEDが流れ出すのが超好きだから」と言う非常に偏った趣向に基づいて、「ダンスミュージック要素のある女児アニメED曲」と言う極めて限定的で少数派な点を線で繋いだものです。

筆者は概ねアニメのOPよりEDの方が好きです。OPがそのアニメの「顔」と言うべき存在であるのに対して、EDはストレートな「アニソンらしさ」から逸脱することも可能なフィールドだと思います。OPでは「攻めすぎ」になってしまう様なアレンジでも、EDなら「アリ」になったりします。それ故ED曲は、その時々のトレンドを取り入れていたり、趣向を凝らした挑戦的なアレンジが可能なクリエイティブの場になったり、時にはレーベルが売り出したいアーティストの(はっきり言ってしまえば)プロモーションの場になったりする訳ですが、それがその時代の音楽を反映することにも繋がるでしょう。

その意味で「女児アニダンスミュージックED史」は、この24年間のJ-Popやアイドルシーン、クラブミュージックの歴史を、その「周辺領域」としてのアニソン視点から追ったものだとも言えるでしょう。

同時に、アニメのED曲というのは作品の「シメ」を担う重要な演出要素の1つであります。ED曲がロックなバンドサウンドなのか、バラードなのか、電波ソングなのか、それともダンスミュージックなのかで、作品の余韻も変わってきます。筆者はそのダンスミュージックが残す余韻に目がない訳です。

具体的に言語化はしませんし出来ませんが、本記事を通して「女児アニダンスミュージックED」の良さを感じて頂けたら幸いと言ったところです。

以上。色々あるご時世ではありますが、2020年代の女児アニダンスミュージックEDも実り多きことを願って。

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