見出し画像

「黄色」

私以外にも誰しもが、こんな感情を持つのだろうか。

先週発売になったback numberの「黄色」。
最初から最後まで、これぞback numberといわんばかりの繊細な女性の心情を描いたこの曲を、初めて聴いたときにそう思った。

人は、自分の醜い感情を表に出さないように、常に自分自身と戦ってる。

それゆえに、そんな閉じ込められた感情をすくい上げて言葉にされると、忘れていたはずの気持ちがよみがえってきて、胸がぎゅっとなる。


最初は冷静に自分の気持ちをなだめたり、冗談めかしたり、ぎりぎりながらもあまり本音を言わずに隠している「私」。

でも段々曲が進むにつれて、「君」に対する醜く汚い感情が剥き出しになって、叶うはずのないたらればの話になっていく。

汚い手を使ってでも手に入れたい、独占したい、「君」が好きな人と一緒にいるという「君」の幸せを願うことができない。

本当に好きなら、何よりもその人の幸せを願うべき、というのが一般的な模範解答なのだろう。

でも、本心でそう思える人っているんだろうか。誰もが言葉にしないだけで、心の中で自分と一緒にいて欲しいと思ってるはずなんだ。

最後に、「君」の恋の終わりを願う最低最悪な気持ちまで曝け出したところで、硝子の蓋を閉めて曲が終わる。

最初は静かに書かれている「私」の感情が、最終的に激しく燃えあがってより本心に迫っていく過程が、本当にドラマチックで、胸が抉られる。

硝子の蓋をすることで、結局は表に出すことはできない、全部自分の心の中での葛藤にすぎないんだということも痛いほど共感できる。

でも、硝子の蓋。
もしかしたら表に出さなくても、透けて見えてしまっているかもしれない。

もし、硝子が割れてしまったら、閉じ込めた思いが溢れてしまったら、「私」はどうなってしまうんだろう。


タイトルの「黄色」と歌詞から、真っ先に思い浮かんだのが信号機の黄色だった。

信号機の黄色の灯火には以下の意味があるそうだ。

一 歩行者は、道路の横断を始めてはならず、また、道路を横断している歩行者は、すみやかに、その横断を終わるか、又は横断をやめて引き返さなければならないこと。

二 車両及び路面電車(以下この表において「車両等」という。)は、停止位置をこえて進行してはならないこと。ただし、黄色の灯火の信号が表示された時において当該停止位置に近接しているため安全に停止することができない場合を除く。

つまり、基本的には行ったらだめ、でも止まれなければ仕方ない。そういうこと。

黄色、思った以上に危うくて、どうしようもない色かもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?