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【読書日記】 男ともだち 千早茜 著

読後、痛切に感じたのが、

この本とは10代の終わりに出会いたかった

の思いでした。

私が18歳、19歳の頃に読んでいたら、私の人生が今とは少し変わっていただろう、とさえ思えた作品でした。

今、ハタチ前後の女性のみなさん、ぜひ手にとってください。

あらすじ

主人公の神名葵(かんなあおい)は、フリーのイラストレーター。
京都で恋人の彰人と同棲している。
几帳面な性格で、規則正しい毎日を送る彰人と、フリーランスで締め切りに追われている葵の間には埋めがたい溝ができていた。

徹夜明けのある朝、葵の携帯が鳴る。
葵が「愛人」と位置付けている医者の真司からだろうと、無視することにしたが、キッチンで自分のお弁当を作っている彰人から「電話に出ないのか?」と聞かれ、真司の存在が恋人に知られているのかと、葵はドキリとする。
しかし、携帯に残っていたのは見知らぬ番号だった。

京都で大学生活を送った葵は、長谷雄(ハセオ)という2歳年上の男性と同じサークルに所属していた。
このハセオは葵にとって恋人でも片想いの相手でもなく、単に友だちだった。
葵が大学を卒業したその日にふらりと学校に現れたハセオとひと言、ふたこと言葉を交わし、「じゃあ」と別れたきり7年間何の接点もなかった。
徹夜明けの朝、葵の携帯に掛かってきた電話の主はハセオだった。
同棲している恋人、医者で既婚者の真司、そしてイラストレーターという職業、葵の生活の中にハセオが入って来る。

現在は、富山で外資系製薬会社に勤務しているハセオは関西への出張が多く、サークル同窓会にも顔を出しており、そこで葵の連絡先を手に入れたと言う。
大柄でぶっきらぼうな性格は会社員になっても大学時代とほとんど変わっていなくて、それが葵には心地良かった。
葵の仕事が軌道に乗るにつれ彰人との仲が不安定になり、ついに彰人は家を出て行ってしまう。
医者の真司ともうまく行かなくなってきたとき、いつも葵の異変を察して声をかけてくるのはハセオだった。

イラストレーターとして徐々に名を上げていく葵の前に一人の絵本作家が現れ、あなたは本当に自分が描きたいものを描いているのか?と問う。
このひと言に奮起した葵は、彰人と暮らしていた部屋を出て新しい居を構え、真司にもその居場所を知らせなかった。

著者について

著者の千早茜さんは1979年生まれだそうなので、私が『10代の終わりに出会いたかった一冊だった』などと言っても絶対に叶わなかったことですね。

幼少期をアフリカのザンビアで過ごしたそうです。
私の周りには、小中学校時代を海外で過ごした帰国子女と呼ばれる人たちが何人かいますが、彼らに共通して、一本筋が通っていて考え方が自立しているし、協調性がありながらもひとりを恐れない、そんな雰囲気を漂わせています。

主人公の葵も、考え方、行動が自立していて、主人公をそんな風に描けるのは作者自身の経歴にあるのかな、と思いました。
冒頭からず〜っと葵の力強くクールな生き方にぐいぐい引き込まれました。
そして、p.150ぐらいからますます彼女に惹きつけられます。

私の推しの一冊です

誰にでも、一番のお気に入りの小説やエッセイがあると思います。
溜まりゆく書籍を時々処分していっても、ずっと手放すことなく手元に置いておきたい一冊、しょっちゅう読み返すわけでもないけれど本棚にあるだけで安心する一冊。
本書は私にとってそんな作品となりました。


読後、ハセオのような存在の『男ともだち』が欲しいな、と思う人、多いんじゃないでしょうか?
私はそう思いました。
だからこそ、冒頭で『10代の終わりに出会いたかった』一冊だと書きました。

もし私に娘がいたとしたら、

高校卒業、あるいは大学入学のお祝いに贈りたい

そう思いますし、私に有り余る財力があれば、

すべての女子大に寄付したい

とすら思える本書。

私の好みはこちら上記の装丁です。
大人の男ハセオと、社会人として世に出たばかりの強気で初々しい葵のように見える、美しい表紙です。

とは言え、文庫本サイズの方が場所を取りませんよね。

このnote記事をたまたま目にした若い女性でしたらぜひ読んでみてください、葵とハセオの関係をどんな風にみるでしょうか?


また、30代40代で独身の方、「あなたにとってのハセオ」がいるんじゃないでしょうか?
もし、いたらその人のことを生涯大切にしたいと、再認識する一冊だと思います。
既婚女性だったら、「私にとってあの人がハセオになったのかも」と遠い(?)学生時代に思いを馳せるきっかけになる一冊になるかもしれません。

50代の私には、「ハセオがいたかもしれないもう一人、別の人生を生きた私」を妄想させてくれる一冊でした。

寒いこの時期にオススメの小説です。

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